010 狩りの配当
第10話 狩りの配当
ぐっすりと寝て狩りの疲れを癒した俺と親父は、少し遅めの朝食を食べると簡単に装備を調えて村の外を流れる河原にある解体場を目指して歩いていった・・・
途中でゴバックさんや数名の大人と合流し解体場に着くと、ほとんどの参加者が集まっていて少し待っていたら全員そろった。
『んじゃあ~そろそろ始めるか~』
そう親父がみんなに言うと、それぞれが自在空間から狩りの獲物を取り出して中央に集めていき解体の準備を始める。
『じゃあ、そうだな~子供は4人だし大人が5人の組になって1人の子供を指導する6人の組で作業を始めるか~』
『まあ、みんな馴れてると思うが・・・今回は子供達の教育も兼ねているから、基本に忠実にきちんと教えながら作業を進めてくれ』
「「はい!」」「「判ってるよ村長」」「きっちりしこんでやるぞ!」
「まあ、そんなに複雑じゃないし判らなけりゃ誰かに聞けば良いんだし緊張しなくて良いぞ~」
それぞれが返事をして作業を進めていく中、俺も親父達に教わって作業を進める・・・
全ての作業が終わり利用できる素材と食べられる肉、残りのゴミに分け終えたら狩りの分配が始まった。
『肉は結構量があるし、村に配るか収穫祭の料理に使っちまうのが早いかな~』
「村長、配るのも面倒だし収穫祭で良くないか?」
「あ!それならウィンドウルフの肉は村長がいつもの燻製にしてくれよ!どうせそのままじゃ臭くて誰も喰わんから・・・」
「お!いいね~アレは酒のつまみに良いからな~」
「「良いね~」」
『あぁ~判った!判った!んじゃあ、これは俺が責任を持って燻製に仕上げるから・・・残りの肉は収穫祭用に村の保管倉庫で保管を宜しく!』
『んで・・・討伐証明部位はいつものように王都に送って、換金されたら村の予算に編入するとして・・・、今回の大物グランドベアの毛皮は王都のオークションに出そうと思う!売り上げが届いたらこれも村の予算に入れるが、後・・・今回は子供の教育もあったし結構数がそろったウィンドウルフの毛皮は子供の防寒着にでも仕立てたら良いんじゃないかと思うんだが・・・』
『まあ、今回うちのアレンもいるから反対者が居るならアレンの分は要らないがどうだろうか?』
「まあ、良いんじゃないか?」「俺たちも初めての狩りで素材を貰ってるからな~」「慣例だし別に反対するヤツなんて居ないだろ?」
「ココはみんな家族みたいなもんだし誰も反対なんてしないって!」「子供にも記念になるし賛成するぞ」「「「決定!」」」
『んじゃあ、これは服屋に預けて仕立てを頼んでおくから・・・子供を参加させた親は仕立屋と相談して作ってもらうこと!』
『残りの素材は一応行商人との交易用に村の倉庫に入れておくが、必要な者は後で申し出てくれ・・・いつものように村民には交易の半値で販売するから』『んじゃあ、今日は終わりで良いかな?』
『あ!今回のゴミはアレンとわしで片づけるから・・・んじゃあ解散!』
「「おつかれ~」」「「「又次の狩りで!」」」「「了解!」」
みんなが帰っていくなか、俺は親父に言われゴミを自分の空間に取り込むと親父と共に村のゴミ処理場に向かった・・・
まあ・・・ゴミ処理場などと言っているが・・・実際には大きな穴で直径が3mぐらい深さも3mぐらいで鉄格子?のフタがしてあり・・・中に「プルン」としたスライムが数匹飼われている。(そう、物語やRPGなどのゲームでおなじみの雑魚キャラスライムである。)
俺も「アレン」としての記憶で飼われて居るのは知っていたが・・・
「父さん・・・前から思っていたんだけど・・・」
『ん?なんだアレン、言ってみなさい』
「うん、村のなぜゴミ処理にスライムを使っているの?ココは村の外用だけど・・・うちや他の家でも何軒か村の中でも同じようにして飼っているよね?」
『なんだ、そんなことも知らなかったのか・・・』
『良いかアレン!スライムという生物はな、動植物系の物ならそのほとんどを溶かして食べてしまう性質を持ち、その皮は防水性や耐衝撃性が高く身というか内部の粘性液体も有用で、何より小さな物だが核に念石をもつと言う、きわめて有用な生物なんだ!』
『まあ、喰わせる餌とか種族によって多少違いが出てくるようだが・・・まだよく判ってないらしいけどな・・・』
「そうだったのか!じゃあ、ひょっとして・・・」
「僕とか村の子供が捕まえたスライムって、ものすごく役に立ってたの?」
『当たり前だ!ココのような、陸棲スライムの身はそのままでも時間は多少かかるがきわめて丈夫な接着剤になるし、1000倍ぐらいに水で薄めると俺たちが普段畑で使っているスライムよけになる。』(害獣も厄介だが柵などを壊す「溶かす」スライムを農民は一番嫌う・・・「壊された柵の穴などから害獣が進入するため!」)
『後な、村でも下水道があるがアレも水棲スライムを利用して浄化するようになるまで、「臭い」「汚い」「害獣の住処」って感じでひどかったらしいぞ・・・』
『今じゃ下水の貯めますとかに水棲スライムを放しているから汚れは取り込んでくれるし、浄化作用で臭いも出ないし・・・なにより厄介な、ラージラットやビックラットの様な害獣も処分してくれる』
「へぇ~メチャメチャ役に立ってるんだね~」(異世界技術のクオリティー半端ねえな!)
『ああ、それに水棲スライムの身は陸棲と同じように薄めると畑の肥料になるからな~』
『昔は「村の救世主」とか「神の御使い」なんて呼ばれて重宝してたらしいぞ』
「へぇ~じゃあ、今度村の子供達でスライム狩りして捕まえてきたら役に立つかな~」
『ん~それは春になってからで良いぞ・・・これから冬になるし餌も少なくなるから今狩るより、春に狩ってくれた方が村としてもありがたいからな~』
「うん、判った!春になってからにするよ!」
『おう!頼もしくなってきたな、じゃあとりあえずゴミも捨てたし・・・昼飯を食ったら燻製作りだ!』
『切り分け・下処理・つけ込み・・・やることはいっぱいあるからな!まあ、全部は無理でも大体の流れとかいくつかの行程ぐらいは覚えるんだぞ!』
「はい!」
こうして俺と父さんはこの世界の常識や技術などの話をしつつ、教会に寄っていつものようにミーアをお迎えして昼飯を喰うため家に帰った。
その日は昼食後に親父から燻製作りの準備作業と肉の処理を教わりながらこなし、夕食を食べ終えお茶を飲んでくつろいでいると親父から明日の予定を聞かされた・・・
『アレン、明日は昼過ぎまで通常の訓練は無しだ!みんなで村はずれの川に釣りに来ぞ!』
「え!本当父さん?やったー」
『母さんもミーアも一緒に行こう!みんなでお弁当を持って家族で釣りだ!』
「はいはい、判ってますよ!お弁当の仕込みは終わってるから安心して下さいね!」
「ちゅり?」「みんあいっちょ?」「わーい」
母さんは予想済みって感じで落ち着いていたが、ミーアは凄く喜んでニコニコ笑いながら興奮して家族の間を行ったり来たり走り回っている。(ん~妹って癒されるな~本当に可愛い!)
俺はこの時ちょっとしたアイデアが浮かんだので父さんに放してみることにした。
「父さん、ちょっと思いついたんだけど・・・」
『なんだアレン?話してみなさい・・・』
「実はね・・・ ・・・で・・・ ・・・から・・・ ・・・だと思うんだけど・・・どうだろう?」
『ほ~う・・・それが出来れば役に立つかもしれないな~構造も簡単だし素材もある。』
『ちょっと作ってみるか・・・』
「父さん、僕も手伝って良い?」
『当たり前だ!お前のアイデアなんだからな、うまくいったらウイリアムのヤツにも教えてやろう!』
「うん!」
俺と親父は夕食後の休憩が終わると一緒に作業室に入って、多少試行錯誤をしながら数時間で目的の物を完成させた!
『まあ、これでたぶん大丈夫だろう!後は明日出かけたときに実験だな!』
「そうだね~父さん、うまくいってくれると良いな~」
『なんだかんだ言っても試してみなけりゃ判らん部分が多いし、今日はもう風呂に入って寝るぞ!』
「うん!」
こうして明日の実験で使えるか試される事になったアイデアの試作が完成した後親父と一緒に風呂に入ったが・・・
(温泉・・・源泉掛け流しで24時間入り放題の風呂か~狩りの時の露天風呂も良かったけど、やっぱ温泉だよな~ほのかに漂う硫黄臭、お湯が新鮮なためかほとんど無色に近いし・・・なんと言ってもこの泡付き・・・最高だな!)
2人で温泉を充分堪能し、父さんが晩酌を始めたのを横目に俺は自分お部屋でベットに潜り込み、明日の釣りとアイデアの実験を考えているといつの間にか眠っていた




