100 動き出した日々・・・
ついに100話目です。まさかこんなに長引くとは・・・
第100話 動き出した日々・・・
ピロンの案内で親方の家を案内して貰ってる俺達だったが、親方の技術は凄かった・・・
基本的な作りは確かに大魚亭のコテージと変わらないが・・・きっちりと作られた床はきしみもしないし・・・壁や扉周りからすきま風が入ることもない・・・
(最初の頃はひどかったよな・・・)
俺は大魚亭のコテージを最初に建てた時のことを思い出した。
夏場のキャンプ用&急場しのぎの宿舎として建てた丸太小屋・・・作りこそ結構似ているが・・・あっちこっちに隙間が出来たりとうてい通年で使える物じゃなかったよな・・・今となっては良い思い出?だけど・・・多少職人にも手伝って貰ったが所詮素人作り、手伝ってくれた職人さんにも指摘はされていたが・・・あの時は仕方がなかったのも事実だし・・・
それに比べ、職人さん達が今住んでるこの家・・・基本設計は同じだけど、家族構成に合わせて結構バリエーションがあるそうだ・・・
まあ、バリエーションと言っても基本形に増築部分が付いたり・・・2階部分を作ったりした程度なんだが・・・親方の家の場合、脱衣所付きの風呂場がちゃんとあるんだよね~
兄さんの話や領主町の話だと、ウチの村と違って公衆浴場的な施設が有って・・・個人の家にはあまり風呂場を付けないらしいんだけど・・・豊富な温泉が利用可能なウチの村の場合・・・個人の家に風呂があることを知って、親方達も作ることにしたらしいんだよね・・・大魚亭の小屋にも付けようかな?多少改築して配管を通せば・・・何とかなる気も・・・
階段を上りながら2階というかロフトの部分に来たが、階段もきしまず・・・やっぱり作りが良いな~
ロフトって言うよりやっぱり2階って言う方がしっくりと来るな・・・親方の家は風呂場があったり、階段の取り付け位置が違っていたり・・・1階部分は大魚亭の小屋より手狭な感じはあるけどロフト部分というか廊下になってる通路の片側に壁があり、2階部分はキチンとした部屋に分かれてるし・・・屋根裏部屋っぽい感じで俺的にはかなり好印象だ・・・
親方の仕事部屋らしい1階の部屋は、俺達が住んでる小屋と違い2部屋ではなく1部屋になっていて2階の部分が2部屋で寝室らしい・・・結構便利そうかも・・・温泉を引き込めばいつでも風呂に入れるし・・・結局、あの小屋に住むことになったからな~
村の人も忘れかけてるけど・・・大魚亭は最初、狩猟団の新しい拠点として作ったはずだったのに、建築資金を引き出すため建前上話した村民の保養所って部分をうちの親父が村人以外にも話しまくり・・・行商人や旅行者が利用するようになったり、領主まで来ちゃってもうほとんどリゾートホテルとか旅館だからな・・・
今は春からの開拓に向けて移住者の受け入れとか従業員の教育に使ってるし・・・春の開拓では海の拠点と合わせて200人ぐらい受け入れるから4月から予約は受けてないけど・・・人気有るんだよね~財政的にも厳しいから出来るだけ早く住居を造って夏ぐらいからお客を受け入れたいけど・・・畑とか水田の開墾がな・・・栽培時期のこともあるし、やっぱ食料優先かな~同時進行より・・・
「帰ったぞ~」
「お!帰ってきたみたいだぞ!」
「おかえり~父さん、アレンとケントが来てるよ!」
「お邪魔してま~す!」
「ん?珍しいな・・・何か相談事か?」
流石は建設の親方・・・話が早い!そう思って俺が説明をしようとしたら・・・
「まあ、待て・・・もう昼だし・・・お前らも喰え!大した物はないが腹が減っては良い仕事は出来ん・・・まずは腹ごしらえだ!」
「あ!じゃあ、僕達は出直して・・・」
「遠慮しないでくれ!本当に大した物はないが・・・ウチの飯が喰えないって言う・・・」
「「御馳走になります!」」
アステルさんの目がヤバイ感じになったので俺もケントもすぐさま御馳走になることに決めた!
(ケント・・・空気が読める子は好きだよ!出来れば自分の安全以外の時も空気を読んで欲しいけど・・・)
まあ、出されたのは・・・肉入りスープにパンとサラダで簡単な物だったし、領主町で舌が肥えちゃったから不味くはないってレベルに感じたが・・・普段なら結構美味しい部類だったと思う。
「まずは建設予定地がこんな感じで・・・」
昼食を御馳走になった後、アステル親方の仕事場に移動して・・・俺が自分の空間から領主町の建設予定地を簡単に自分で測量したメモを取り出して話し始めると・・・
「ふむ・・・水道と下水が結構離れてるな・・・」
「えぇ・・・それと、予想よりもかなり広い場所なので・・・」
「成る程、規模も変えるのか?」
「ん~テラス席を増やそうかとも考えてるんですが・・・それよりも従業員用の宿舎をどうするか悩んでまして・・・」
「テラス席って言うのはアレだろ?大魚亭の庭でやってる簡易テーブルと椅子のセットに・・・パラソルだっけか?アノ簡易屋根を付けたヤツ・・・」
「まあ、テラス席はそれだけでもないんですが・・・基本というか数が多くなるのはそのタイプですね~」
「で・・・従業員用の宿舎か・・・それで何を悩んでるんだ?」
「それがですね・・・想像以上に土地が広いので、当初予定してた寮のようなタイプではなく・・・ココのような戸建てを建てた方が良いかな~って・・・」
「ふむ・・・だが、従業員全員に1件家を用意する訳にもいくまい・・・」
「あ!そうか・・・じゃあやっぱり寮かな~」
「それが現実的だとも思うが・・・既婚者や家族連れは雇わないのか?」
「ん~その線もあるか~」
「まあ、わしは建築屋だし・・・建てろと言われれば建てるだけだが・・・確か領主町での建築は領主が人を準備するんだったな?」
「うん、人だけじゃなく資金も全部出して・・・ウチがするのは企画提出とアイデアの実行で最初に教育を担当してるだけだよ」
「ならば・・・最初の段階で家も何軒か建てさせて基本は寮で、従業員が婚姻しても働く時に家に移れるようにしておくのも手だな・・・」
「ん~それは良いかもだけど・・・費用負担が結構大きくなって・・・ウチの村の企画が評価を下げられる可能性が・・・」
「ふむ・・・そう言えばそうなるか・・・」
そんな感じで俺とアステルさんが悩んでいると意外な声が・・・
「そんなに悩まず、独身なら寮既婚なら家って感じで決めて・・・領主側に建築の数は丸投げで良いんじゃねえか?」
突然のケントの声に驚いたが・・・
悪くない・・・確かに従業員は領主側が用意するんだし・・・どんな家族構成かなんて知らないからな・・・
「それ以外と良いかも・・・」
「ふむ・・・」
「アレン、意外ととかは余計だって!コレでも結構考えてるんだぞ!!」
「悪い、悪い!突然だったからさ~」
「まあ良いんだけど・・・」
他に良い考えも浮かばなかったので・・・ケントの意見を全面的に採用し、建設する割合は領主側の丸投げすることに決めた!
「後は・・・風呂をどうするかだな・・・」
「風呂?」
「何か問題があるのか?」
「えぇ~っと・・・ケントは知ってると思うけど・・・サウスウッドの領主町はウチの村と違って温泉がほとんど無いんですよ・・・」
「あ!そう言えば宿に泊まった時、あの辺にはあそこ以外無いとか言ってたな・・・」
「しかし風呂なら・・・あの町にも公衆浴場が有ったはずだが・・・」
へぇ~それは初耳だ!領主町にも銭湯があったんだ・・・
「えっと・・・失礼ですが・・・アステルさんは、ウチの町に来る以前どれぐらいの頻度で入浴されてましたか?」
「どれぐらいって・・・おめえ・・・俺は仕事柄汚れる時もあるし、夏はほぼ毎日・・・冬でも3日とあけず公衆浴場に通ってたぞ!」
「まあ、お仕事柄もあって良く入ってると思いますが・・・この国の一般の人はどれぐらいの間隔かご存じですか?」
「そうだな~王都にいた頃は・・・公衆浴場より自分の家で沸かしたお湯をバケツに入れて、身体を拭くだけとか・・・頭を洗うだけって言うのが結構居たし・・・全然風呂に入らないヤツも居たな・・・」
「まあ、ウチの村は温泉ですが・・・領主町とか王都だと、薪を使ってお湯を沸かすか・・・公衆浴場でお金を払ってですからね・・・」
「まあ、食い物屋をやるなら清潔は大切だからな・・・従業員用の寮なんかに風呂を付けるつもりなのか?」
「いえ・・・もう一歩進めて、お店の方に風呂を設置して仕事始めと終わりに入浴することを義務化しようかと・・・」
「ふむ・・・徹底してるな・・・しかし、結構費用がかかるぞ・・・それに家の方にはつけないのか?」
「ん~寮の方に付けて・・・自宅の方は寮のを借りるって感じじゃダメですかね?」
「ん~わしも実際この村に来て・・・温泉が豊富だったし風呂が嫌いじゃないから家に付けてみたが・・・いつでも入れる風呂は良いからな・・・戸建ての方に入った連中が納得するかが問題だろうな~」
「戸建ての家に風呂を付けるとどれぐらい費用がかかりますか?」
「ふむ・・・費用か・・・費用はあまりかからないが・・・時間がな・・・ココと違って温泉がないんじゃ沸かせるようにするのに組む必要があるし、費用という点でなら維持費というか普段沸かす時の薪代などが結構痛いはずだぞ・・・」
成る程・・・維持費か・・・確かに風呂を作るのは職人さんが想念法で作るだけだし・・・多少木材や石を使う程度で大した金額はかからないが・・・
普段使う時には薪代が掛かるんだよな・・・コレは地味に掛かるかも・・・それに、店で入らせるにしても・・・沸かすための人手を考えなければ・・・
「ん~悩ましいですね~」
その後、夜遅くまでアステルさんと相談したが結論が出ず・・・
(コレも領主に丸投げしようかな・・・)
後日の課題となった。
まだ続くので今後もお楽しみ下さい。




