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【連載版】幸子48歳、異世界転生したら出産中でした!?~後妻だったので産んだ子も連れ子もまとめて可愛がります  作者: よつ葉あき


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37.幸子、この世界で生きていく


──数ヶ月におよぶ工事を経て、ようやく長屋が完成した。


私はひとり、その中をゆっくりと歩いていた。


子どもたちの背丈に合わせて、低めに取りつけた階段の手すり。

つまずかないよう段差を極力なくし、備え付けの家具の角はすべて丸くしてもらった。


ここは共有のキッチンエリア。

みんなで料理がしやすいよう、カウンターキッチンには充実した設備を整えた。料理をしながら子どもたちの姿が見えるようにと、目の前には広々としたダイニングエリア。その奥には中庭へとつながる大きな窓がある。


そのとき、長屋の外から子どもの声が聞こえた。


玄関を出ると、こちらへ駆けてくるサチコちゃんの姿が見えた。


「お母さん! 早くー!」


「サチコ、走っちゃだめよ」


マドカさんがそっと手を引き、その隣には荷物を抱えたヤヨイさんの姿もあった。


「あっ、ミレイお姉ちゃん!」


「こんにちは、サチコちゃん」


サチコちゃんと挨拶を交わしたあと、私はマドカさんに微笑みかける。


「おかえりなさい、マドカさん」


「……はいっ! やっと、来れました……」


産後の疲れがまだ顔に残ってはいるものの、その表情には柔らかな安堵がにじんでいた。


長屋に一歩足を踏み入れたサチコちゃんが、「……わぁ!」と声を上げる。

一方でマドカさんは、しばらく言葉もなく、ゆっくりと周囲を見回していた。


そこに広がるのは、温もりに満ちた空間。

中庭には手作りのすべり台とブランコ。雨除けのテラスには絵本や積み木、奥には子ども用のキッチンスペースまである。


「……ここ、本当に、住んでいいんですか?」


マドカさんが、部屋の前でぽつりとつぶやいた。

そのあまりにも震えた声に、私は思わず頷く。


マドカさんの瞳に、涙の光がにじんだ。


サチコちゃんはブランコへと駆け寄り、「ママ、これ乗っていい?」と満面の笑みを見せる。


マドカさんが私に視線を向けた。


「うん、もちろん!」


「サチコ、気をつけてね」


そう言って、マドカさんはサチコちゃんをブランコに抱き上げ、優しく背中を押してやる。


私はふたりの姿を見守りながら、ヤヨイさんに声をかけた。


「双子ちゃんたちも、もうすぐ退院できるんだよね?」


「はい、あと一週間ほどで。

……マドカさん、とても不安そうだったんです。双子たちとサチコちゃんを一人で育てられるのかって……でも、あの笑顔を見て、私も安心しました」


ヤヨイさんの視線の先には、笑い声を上げるサチコちゃんと、それに応じて笑うマドカさんの姿がある。もう、かつてのような陰りは見えなかった。


「……うん。ここは一人で子どもを育てる場所じゃないから。

困ったときには、助け合える仲間がいる。もちろん、私たちも一緒に」


サチコちゃんの笑い声が風に乗って中庭に響く。ブランコの鎖が、きい、きいと優しく揺れ、マドカさんの手のひらがその動きをそっと支えていた。


私はヤヨイさんと目を合わせ、小さく頷く。


──これでいい。いや、これがいいんだ。


「荷物、運ぶわね」


「ありがとうございます……! 本当に助かります」


マドカさんが深々と頭を下げ、私たちは一緒に玄関へと向かった。段ボールの中には、小さな赤ちゃん服やぬいぐるみ、そしてサチコちゃんが描いたクレヨンの絵。どれも大切に包まれていた。


「……サチコちゃん、お姉ちゃんになったんだね」


そう声をかけると、サチコちゃんは得意げに笑い、マドカさんは穏やかに微笑んで、小さく頷いた。


「ええ。この子なりにがんばってくれていて……

夜、私のお腹に耳を当てて『赤ちゃん、まだー?』って……ずっと楽しみにしてたんです」


思い出すように、もう小さくなったお腹にそっと手を当てたその声には、涙がほんの少し混じっていた。私の胸にも、じんわりと温かなものが広がる。


荷物を運び終えると、マドカさんは深呼吸をして、静かにその場に立ちすくんだ。


「……なんだか、夢みたいです」


「夢じゃないですよ。これからが、始まりです」


そう告げると、マドカさんの瞳がまた、そっと潤んだ。


「……この場所で、ちゃんと生きていきたい。ここなら……私、がんばれそう。ちゃんと働いて、子どもたちを育てていける気がします」


その声には、迷いのない決意が宿っていた。


「ここは、“やり直し”の場所じゃない。

“これから”のための場所。だから、一緒に前に進もう」


「……はい」


そのとき、サチコちゃんの声が響いた。


「ママ! この赤ちゃんたちのベッドかわいいね! 早く連れてきたい!」


私たちは顔を見合わせ、思わず笑った。


そばに置かれた空っぽのベビーベッドが、もうすぐこの場所に新たな命が加わることを静かに告げていた。


そして私は、心の中で強く誓った。


──どんなに小さな命でも、誰かの助けを必要としているなら、私は手を差し伸べ続けたい。この長屋で、そのための居場所を守っていこう、と。


真新しい木の匂いがする長屋に、サチコちゃんの

笑い声が、ふわりと響いた。


それは、まるで新しい生活の幕開けを告げる合図のようだった。


私は静かに空を見上げた。


マナミとシンイチロウくん、ユリカちゃん。

それと、ここの仲間たちと一緒に私は


──この世界で生きていく。


あの日、ドアを閉めて一歩を踏み出したときと同じように、心に確かな手応えを感じていた。



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