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【連載版】幸子48歳、異世界転生したら出産中でした!?~後妻だったので産んだ子も連れ子もまとめて可愛がります  作者: よつ葉あき


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33.幸子、そっと見守る


お昼寝スペースの前まで来ると、控えめな声が聞こえてきた。


「お母さんは……?」


そっとのぞくと、サチコちゃんが半分眠たそうな顔で、お布団の上にちょこんと座っていた。

スタッフがやさしく声をかけているところだったが、マドカさんの姿を見つけたサチコちゃんは、ぱっと顔を輝かせた。


「お母さんっ!」


その一言に、マドカさんの肩がかすかに揺れる。

そして、ゆっくりとサチコちゃんのもとへ歩み寄った。


「……おはよう、サチコ」


「うん。お母さん、どこ行ってたの?」


まっすぐに見上げてくるサチコちゃんの瞳に、マドカさんは一瞬、言葉を詰まらせた。


けれど、すぐにやわらかな笑みを浮かべて──


「ちょっとだけ、お話をしてたの」


そう言って手を差し出すと、サチコちゃんは笑顔でマドカさんの胸に飛びこんだ。


マドカさんは目を見開き、それから視線を落とす。

小さな身体を、腕の中で確かめるように、そっと抱きしめた。


「お母さん、さっきサチコにひどいこと言っちゃった……怖かったよね?」


サチコちゃんはマドカさんの胸に顔をうずめたまま、こくんとうなずいた。


「……ちょっとだけ、怖かった。お母さん、ごめんなさい……」


小さな手が、マドカさんの服の端をきゅっと握る。


その言葉に、マドカさんの瞳が潤んだ。

何かをこらえるように、サチコちゃんをぎゅっと抱きしめる。


やがて、マドカさんはサチコちゃんをそっと胸から離し、その顔をのぞき込んで言った。


「サチコ……違うよ。さっきのは、お母さんが悪かったの。

お母さんのほうこそ、本当にごめんなさい」


そう言って、深く頭を下げた。

サチコちゃんは驚いたように瞬きをしたあと、目の前のマドカさんの頭をやさしく撫でた。


「うん、だいじょうぶだよ。

お母さん……だいすきっ!」


その言葉に、マドカさんは目を細める。

潤んだ瞳をこらえるように唇を結び、小さく微笑んだ。


その笑顔は、どこかほっとしたようで、どこか泣きたいようでもあった。


「ありがとう、サチコ。

お母さんも、サチコのこと……大好きだよ」


サチコちゃんは、マドカさんの腕の中で満足そうに目を細めた。

……なんだか、まぶたが重くなってきたようだった。


「……サチコ、まだ眠い?」


マドカさんもそれを感じ取ったようで、静かにたずねる。

サチコちゃんは少しだけ考えるように眉をひそめてから、ぽつりと答えた。


「んー……ちょっとだけ。お母さんがそばにいたら、眠れそう」


「そっか。じゃあ、眠れるまで一緒にいるね」


サチコちゃんはこくりと横になった。

マドカさんもその隣にそっと腰を下ろし、小さな手をやさしく包み込む。


部屋の中は、ほかの子どもたちの寝息と、午後の日差しが揺れる静かな空気に包まれていた。


「……さっきね、ミレイお姉ちゃんと読んだ絵本、とってもおもしろかったんだよ」


小さな声でこぼされた言葉。

マドカさんの顔に、一瞬だけ後悔の色が浮かんだ。


「そっか……じゃあ、また読もう。今度は、お母さんが読んであげるね」


その声には、もう迷いがなかった。

今度こそ、まっすぐにサチコちゃんへ届くように。


「うんっ! お母さんに読んでほしい」


サチコちゃんは、とても嬉しそうに笑った。


少し離れた場所からその様子を見ていた私は、


(頑張って絵本読んであげたけど……やっぱりお母さんには敵わないわね)


ちょっぴり寂しいような、でもそれ以上にあたたかい気持ちになって、隣にいたヤヨイさんと目を合わせて笑った。


サチコちゃんは、安心しきったようにまぶたを閉じた。

やがてその呼吸は、静かに、ゆったりとしたリズムを刻み始める。


マドカさんはそっとその額に手を添え、自分の目を閉じた。

小さな寝息に耳を澄ませながら、穏やかに、穏やかに、時間が流れていった。



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