ミッション2 縁孤家の秘密
この掟は決して破ってはならない―――
縁孤家の家政婦達が守りつないできたこと…
其の一、縁孤家に仕える家政婦は強く、逞しく、如何なる時も縁孤家を守り通さなければならない
其の二、家政婦は常に武器を携え、万事警戒を怠らず、戦いに備えなければならない
其の三、最後にして最大の掟―――このことは、決して縁孤一族にバレてはならない。すべての任務は極秘に行い、普段は家政婦としてふるまわなければならない。陰で戦い、陰で支える。それが、家政婦としての掟。
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「…なあ、本当のことを教えてくれよ!お前らなんだろ?あれ」
………しくじりました!!わたくし古槌姫里、殺し屋稼業をはじめて10年、この家に勤めて1年、人生で一番の失態ですわ!まさか殺し屋として戦ってるところを真護お坊ちゃまに見られるだなんて………海龍寺様に知られたらどうなることか………
「いえ、違うっすお坊ちゃま!」
「いやいや絶対お前らだろ!なああああ教えてくれよ!教えてくれたら寅さん屋の羊羹あげるからさああ」
「はいそうです私たちにございます」
「え!まじやっぱり⁉」
「ちょ!フルツッチ⁉」
「もう観念しましょう波瀬宮。どうせもう隠せません」
「マジか~やっぱりお前らって…」
「はい、殺し…」
「ネクロバスターファイブだったのか!」
「ねくろばすたー?」
「フルツッチ知らないの?ネクロバスターファイブ、NBF…真護お坊ちゃまが大好きな特撮ヒーローアニメよ」
「あ~~」
「すっげーなあー、てことはいつも俺を付け狙ってるのはデスフォビアってこと?」
「ですふぉびあ?」
「悪役のことよ…それよりお坊ちゃま、そのデスフォビアについて詳しく教えてほしいっす」
「え?あ~、一か月ぐらい前からかな。あの仮面被った奴らが俺のことつけてくるんだよ」
「「!?」」
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「はあああああああああ!?真護お坊ちゃまに殺し屋であることがバレただああ?」
「八剱先輩声デカいっす!てかバレたんじゃなくて…かくかくしかじか…」
「はあ?お前らのどこがネクロバスターなんだよ」
いや…ネクロバスターってそんな共通認識なんですの?私知らなかったんですけど
「いや私にもわかんねえっすよ。とにかく先輩達には私達の仲間って設定で演技してほしくて…」
「いやあたしはいいけどよお…他二人はどうなんだよ…もっといい奴いるだろ…」
「「はにゃ?」」
「たしかに文藏君と獣谷さんは人選ミスですわね…でもまだ登場キャラがこれぐらいしかいないんですのよ」
「フルツッチメタいよ」
「あのー、いいでしょうか」
「ん?」
「つまり僕たちがするべきことは、ネクロバスターのふりをする、そして真護お坊ちゃまを狙う謎の存在の正体を暴く…ってことですよね?」
「はんにゃー、そうなの~?」
「だからさっきからそういってんだろ!腰抜け二人組は黙っとれ!」
「波瀬宮落ち着いて。そうです。そのためにまず、一週間、真護お坊ちゃまの尾行を行います。協力していただけますか?」
「別にいいけどさ~~~、もし海龍寺様にバレちったらどうすんのよ古槌ちゃ~~ん」
「そうですよ古槌さん。僕たち全員くびはおろか命が危ないですよ」
「確かに。相手は伝説の殺し屋。今まで縁孤家の敵を容赦なく葬り去ってきたんです。私たちを消すぐらいわけないでしょ」
「そうだぜ~古槌。どうすんだよ」
「………」
私は…私は…どうすればいいのでしょうか。私のわがままで皆さんを巻き込むわけにはいけません。でも、現に真護お坊ちゃまの身が危ない…
「……じゃあ……あんたらは放っておいていいのかよ……」
「……波瀬宮?」
「私は…縁孤家に来る前は孤児だった。親の愛も知らず、たった一人生きてきたんだよ。だから、人を殺して生きてくしかなかった…それをご主人様は救ってくれた。身寄りのない私を、家政婦として雇ってくれた………そんなご主人様を、私は守るって誓ったんだ!そのためなら命なんていらない!」
波瀬宮………
「あたしだって………あの人は私に希望をくれたんだ!だから………あたしゃやるよ!」
八剱先輩……
「僕も!」「私も~~~」
みなさん……
「ありがとうございます。では!やりましょう!」
「うす!」「おう!」「はい!」「うぃ~」
そうして、私たちの壮大すぎるヒーローごっこが始まったのでした!
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「で、どうなった。縁孤真護は殺せたか?」
「あ……そ……それが…………」
「はあ……私の周りはなぜこうも役立たずばかりなのだ……」
「あ……が……」
縁孤家運命のときまで、あと87日