第7話「朗報と暗雲」
愛と柚月がユニットを組んで一週間、ある情報が入る。
〜朝のHR〜
〜IーA 教室にて〜
「さて、皆さんには大事なお知らせがあります。」
「えー?何だろ。気になるな。」
「あ、もしかして先輩が言ってた…!」
「いや、加山の言う事だし大した事無いでしょ。」
「だよな。まあ、一応話くらいは聞くか。」
教室には様々な意見が飛び交う。そんな騒音を静かにさせてから志染はお知らせを言った。
「五月後半から六月前半まで渋谷川学園音楽祭を始めます!」
「おおー!!」
さっきとは一転、生徒達は喜びに満ち溢れた。そんな生徒達を見て志染は安心して説明を開始する。
「この渋谷川学園音楽祭では生徒達が音楽関連の事をやります。参加は自由で、グループでもソロでもどちらでも構いません。」
「(…!もしかしてこれなら羽田玖美さんの考えも変えられるかもしれない!)」
一方、愛は誰よりもワクワクドキドキしていた。これ以上ないやる気が愛の中で湧き上がる。
「(放課後か休み時間に柚月にこの事言ってみよう!)」
そして昼休み──
〜屋上にて〜
「うん。知っているよ。渋谷川学園音楽祭。朝に国塚先生が言っていたから。」
「良かった。知っておいてくれていて」
「それじゃあ柚月。一緒に渋谷川学園音楽祭に参加したいんだけど良いかな?」
愛が聞く。柚月は迷う事も無く、首を縦に降った。
「うん。勿論。それじゃあ参加しよう。」
「ありがとう柚月!じゃあ此処に書いてある『渋谷川学園音楽祭に参加』を押そう!」
「此処かな?よし、参加!」
──(渋谷川学園音楽祭への参加を承知しました。)
「やった!参加出来た!」
「参加も出来た事だし音楽を作らないと。」
「そうだね。見てくれる人が凄いと思うようなライブをしよう!」
参加を完了させた二人は早速、曲作りを始めようとする。
「…あ、思い付いた!一週間前に練習した『ブライトライト』を音楽祭で披露するのはどう?」
「良いね!早速、練習しよう。」
だがオリジナル曲のコンセプトが何も決まっていなかった且つ、一曲だと少ないと二人はブライトライト等のカバー曲を練習する方が効果的だと感じ、まずは少し練習したブライトライトをさらに練習する事に決まった。
「私が練習したいのは此処なんだけど…」
「あー。難しいよね。何にせよ此処はサビ。ミスしてしまったらお客さんは『ん?』ってなるし。」
「難しいけど頑張ろう!愛!」
「うん。勿論だよ。」
そして数分後…
「はっ…はっ…はっ…はっ…此処でターン!」
「はあ……はあ…どうかな?私の踊り。」
そして今回の練習十回目で愛は過去最高の踊りを見せた。柚月は驚きながらも賞賛を送る。
「す、凄いよ!愛!まさかこんなに踊れるなんて!」
「しかもたった十回で!普通の人だったらこのダンスは二十回しないと絶対、ここまで踊れないのに!」
「あ、私、愛の踊りが凄すぎて興奮していたよ。見苦しかったかな。それだったらごめん。」
「いや、大丈夫だよ。柚月。全然見苦しく無かったから。寧ろ、こんなに褒められるとは思ってなかった。」
二人はお互いに感想を言う。すると、
「ふう。此処だとあの二人に会えるかしら。」
…と明らかに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「いやーこれだったら絶対音楽祭成功するね!柚月のお陰で!」
「いや、私は並ぐらいしか踊れないよ。それでも成功すると感じられるのは愛のお陰だよ。」
「品川さん!柚月!」
お互いの実力を褒めていると誰かが屋上にやって来る。やって来たのは莉衣だった。
「ど、どうしたの?世田谷さん。」
「突然で申し訳無いわ。ある事を聞いて欲しいの。」
「……貴方達のユニットに入らせて貰えないかしら?」
突然の逆スカウトのお願い。だが、二人は迷う事なんか無かった。
「勿論。宜しくね。世田谷さん。」 「勿論。宜しくね。莉衣ちゃん。」
「ありがとう!二人とも!」
こうしてメンバーが三人になったBright Shining Light。莉衣という心強い仲間を迎え、曲作り等を始める事となった!
「あのさ、莉衣ちゃん、実は渋谷川学園音楽祭に私達参加しようと思っているんだけど…莉衣ちゃんはどうする?」
「渋谷川学園音楽祭…勿論、あたしも参加するわ!品川さんはそれで良いかしら?」
その言葉に愛は嬉しくなった。玖美の友達である莉衣が協力すると音楽の迫力も増し、玖美も友達の演奏している所を見るとまた音楽をやってくれると感じたからだ。
「勿論!ありがとう。世田谷さん。」
「あ、別にあたしの事は呼び捨てでも良いわよ!」
「うん。分かった。」
「それじゃあ…多分、二人ともカバー曲は踊れたと思うから…オリジナル曲を作りましょうか!」
「うん。助かるよ!ありがとう、莉衣!」
愛はわずかに興奮的になる。莉衣はそうなるのも分からなくも無いと感じた。
さて、まずオリジナル曲を作るならジャンルを決めなくてはならなかった。当然、三人も最初はジャンルから決める事にしたようだ。
「私的には莉衣ちゃんが来る前に愛が言っていた通り、明るい曲が良いと思うんだけど…どうかな?」
「へぇ!良いじゃない!貴方達のユニット、Bright Shining Lightに合っていそうね!」
「じゃあまずイントロを……こうしてみるのはどうかしら!」
その音は明るく強いまさに定番といえるような音だった。だが、音の深みは普通とは言えなかった。その音に愛と柚月の二人は衝撃を受けた。
「…!?」
「(音自体は明るくて強い、聞いた事ある音。だけど…)」
「(音の深みが平均的じゃない。私と柚月だったら作るのは難しいレベル。)」
「(…Aメロも凄い。イントロより落ち着いているのに深みはイントロと変わらない…)」
そして曲が聞き終わった後…
「どうかしら?悪くは無いんじゃない?」
「いや、とても良くて言葉が出なかったよ。なんて言うか…凄い深い音だった。」
「莉衣ってこんな音作る事が出来るんだね。凄いな。」
「そうかしら?あたしは普通に作っているだけでプロには叶わないわ。」
──「だから!どう言う事ですか!」
すると、下から怒鳴り声が聞こえて来た。莉衣は驚き、二人に伝えた。
「ご、ごめんなさい!このままだと皆の迷惑になるから止めに行くわ!」
「…うん。またね。」
莉衣は教室に降りて行く。それを見た二人も階段を下って行った。
「(莉衣ちゃんは凄いな。まさかあんな音を作れるなんて。)」
「(私も莉衣ちゃんや愛を見習わないと。)」
「(にしても大丈夫かな…)」
「…あ!五分しか無い!」
「え!?教室に行かないと!」
そして二人も下に降りて行った。降りた後、すぐに二人は教室に入って行った。
〜IーA 教室前〜
其処にはある生徒が教師と話していた。話している相手は志染と玖美だ。どうやら教師が生徒を指導しているようだ。
「では、貴方はどうして先生達に暴言を吐いたのですか?」
「…………」
「それすらも答えられないのですか?あれだけ国塚先生や佐賀先生、さらには加山にまで言ったのに反省も出来ないと?」
「すみません…」
玖美は志染に言い訳を試みようとするが、言葉が思いつかない。
「…謝る気も無いんですね。もう良いです。」
「指導を終了します。これ以上やっても意味がありませんので。」
そう言った後、玖美は志染から逃げるように去っていった。
「確か…此処だったかしら…」
莉衣が来る。だが、その時はもう遅かった。
「玖美?…あれ?居ないわね…」
「…!加山先生、玖美を知りませんか!」
「世田谷さん。ごめんなさい。羽田さんは何処かに行ってしまって…」
志染はそう伝えた。莉衣は玖美が迷惑を掛けた事を謝った後、彼女は時間があまり無い事に気付いて、自分の教室に向かった。
「はぁ…羽田さんは人の心が分からないのでしょうか。」
「(信じられません。アイドルの時が嘘みたいです。)」
「おっと、後五分で授業が始まりますね。皆さんは準備をしているでしょうから私もしなくては。」
「(…私も彼女の事を殆ど知らなかったのですね。)」
志染は複雑な想いをしながらも授業を始める事にした。だが…
「ねえ、何だか今日、加山のキツい言葉が来ないんだけど。」
「いや、それな。キツい言葉はぶっちゃけ嫌だったけど流石にこれは不穏だな。」
「加山先生さ、やる気あるのかな?」
生徒達は志染の様子に違和感を覚えていた。
「(志染先生…何かあったような気がする。だっていつもはもっとはっきりと声を出すのに今日は声が小さい気がする。)」
それは当然、愛にも分かっていた。
だが、それは放課後の時に聞く事は出来なかった。
〜夕方 放課後〜
「………放課後か。何にも聞けなかった。志染先生の事。」
「あ、今日はダンス部があったんだった。莉衣と柚月に連絡しないと。」
ーー(ピロン)
「よし。ダンス部、急ごう。」
「(やっぱり、志染先生もしかして羽田玖美さんと何か揉めて…?昼休みに呼ばれていたし…)」
「(昼休みの放送の声は志染先生な筈。明らかに女性にしては少しだけ低めの声だったし。)」
「取り敢えず、ダンス部に行かないと。」
愛は志染と玖美の事を心配しながらもダンス部の部室に向かおうとしたが、あるメッセージに気付く。
「ん?何だろう?このメッセージ。」
『あ、皆ごめん(>_<)実は今日はダンス部無いって先生に言われていたんだったホントにごめんね(*_ _)』
「……こんなメッセージにすら気付けないなんて私、集中力無いな。まあ、ダンス部が無いんだったら屋上に行こう。莉衣と柚月も待ってる筈だから。」
こうして愛は少し焦りながらも屋上への階段を登って行った。
「莉衣…羽田玖美さん…大丈夫なのかな…」
こんにちは!小山シホです!さて投稿が遅くなりすみません!リアルが忙しくて…
今回から話が長くなって行きます。また、いつか解説を挟むのでご安心を。
次回予告
特に何も無く練習をした翌日、莉衣が練習に来れないと言う。しかし、さらに衝撃な事実が二人を襲って──!?