第5話「明るく輝く光」
「はぁ……」
屋上で玖美はため息をついた。
「ユカはどうしてこんなわたしを探すのだろう…」
「わたしはアイドルを引退したのに…」
一人で呟く。すると、屋上に上がる階段から聞いた事のある声が聞こえた。
「引退したのに?何言ってんのよ!」
「っ!」
その声は莉衣だった。いや、莉衣"達"は階段を登り始め、屋上に着く。
「え…?なんで皆が?」
「えっと莉衣ちゃんから屋上にいるという連絡を貰ったの。だから皆居るんだよ。」
「さあ、羽田玖美さん。私達四人が来ましたが…どうしますか?」
愛が強気な言葉を言う。すると、玖美は呆れたような顔で言った。
「辞めた理由を聞くつもり?何回も言うけど親のせいだよ。」
「それは違うよ…!玖美さん!」
「柚月さん…貴方もわたしの話を信じないつもり?」
「言っとくけど、わたしの話を信じないんだったら此処から出て行って。」
「だって皆、"アイドル"じゃないから。」
玖美は言葉が強くなっていく。遂に腹を立てたユカと莉衣が言った。
「良い加減にして!玖美!」 「良い加減にして!玖美ちゃん!」
「あんた、一体何なのよ!せっかく四谷さんという仲間がいるのに…何で彼女の質問にしっかりと答えないの!?」
「はっきりとしなさい!玖美!このままだったら四谷さんとの絆が無くなるわよ!」
「それだけじゃない…品川さんや柚月がアイドルを目指す事を辞めてしまったら誰のせいなのよ!!」
「そうだよ!世田谷さんの言う通りだよ!玖美ちゃん本当の事を言って!」
「だって…玖美ちゃんが嘘をつくのを見ると…こっちまで辛くなるから…」
「お願い!本当の事を此処で言って!それだけで良いから!」
二人は玖美に想いを伝える。その想いが伝わったのか玖美は本当の事を言い始める。
「分かった。ただし、他の人には言わないで。」
「…皆の想像の通り、わたしはある人の言葉で引退する羽目になった。」
「その人って言うのは…」
「そう、"四谷ユカさん"だよ。」
その言葉に空気が重くなる。その事を躊躇無しに玖美が言ったからだ。
「うん…そうだよね…」
「あ、ユカは大丈夫だよ。そんなに心配にならなくても。」
「だって本当は謝る気もあるんでしょ?」
「うん。…玖美ちゃんごめんね。」
ユカは玖美に謝った。そしてユカは"ある決意"を彼女に言う。
「…そしてお願いがあるの。」
「玖美ちゃん、アイドルをもう一度やらない!?あ、勿論、わたし以外でも良いから!」
だが、その決意は打ち砕かれた。
「いや、わたしは誰ともアイドル活動をする気は無い。」
「え…?」
玖美以外の人物は驚く。特に愛と莉衣はとても驚いていた。
「えっと…確かに分かります。羽田玖美さん。あの時のトラブルは辛かったと思います。」
「でも、誰かとアイドルをやればまた楽しさを取り戻せると…」
「うん。私も品川さんの言う通りだと思うよ。玖美さん。同じ事務所の人では無くとも、他の人とアイドル活動を再開すればまたかつての輝きが見えると思うけど…」
「柚月の言う通りよ。意外とこの学校にはアイドルを目指している人も多いわ。探してみれば意外とアイドルの才能がある人も…」
三人は意見を述べる。だが玖美は聞く気が無かった。
「だから何度も言うけどわたしはアイドルをやる気は無いよ。アイドル活動をしたければ四人で組めば?」
「…ユカは今は他の仕事をしていると思うから難しいけど。」
「…もう話は終わったね。じゃあわたしは帰るね。」
そう言ってサヨナラとも言わずに玖美は走って自分の教室に戻って行った。
「………あ、ごめん。わたし仕事があるんだった。下降りるね。」
ユカが降りた後、三人は悩んでいた。
「うーん…羽田玖美さんの話は聞けたけど…」
「やっぱり玖美はアイドルを再開する気は無さそうね…」
「私と品川さんだったらまだ何の事務所にも所属していない駆け出しアイドルとしてデビューは出来なくは無いけど…」
「それだと世田谷さんに申し訳ない気がするね…」
実はこれまで玖美ばかりの描写が多かったが莉衣も事務所に入っている。アイドル歴は二年半。
事務所の名前はHarsh*Lying。略してH*L。莉衣が所属しているアイドルユニットはエデュケーション♡⃛ファンズ。略してエデュ。
H*Lの中ではまだ小さいユニットではあるが実力は本物。ただしそれはエデュのプロデューサーやマネージャーのアイドル教育が厳しいからである。その厳しさに耐えられずに辞めてしまった人も居る。
「あたしは良いわよ。エデュだっていつかは辞める事になるだろうし。」
「…にしても品川さんと柚月がアイドルユニットを組む…ええ!良いと思うわ!」
「本当はあたしも入りたいけど…今はちょっと事務所の仕事があるからね。」
「もし、事務所を辞退したら貴方達と是非組みたいわね!」
莉衣は笑顔で言った後、急いだ様子で下に降りていった。
「し、品川さん…アイドル組む流れになっちゃったけど大丈夫?」
「私は大丈夫。それよりも何だかさん付けって堅苦しい気がするな…」
「あ、じゃあ呼び捨てにする?」
「良いと思う。じゃあよろしくね。柚月。」
こうして愛と柚月は知り合いから互いに呼び捨てをする友達になった。
「じゃあユニット名を決めよう。何が良いと思う?」
「えっと…柚月が決めていいよ。」
「じゃあ『flying fire』はどう?」
「良いね。その名前も。実は私も思い付いた名前があるんだ。聞いてくれるかな?」
二人は楽しくユニット名を決める。
候補は沢山出た。『Blast prelude』やさらに少しかっこよく文字を書いた『Shine journey』、さらに日本語名である『輝く太陽の光』。
それから数十分間ずっとユニット名を考え続けた。すると、愛が思い付いたようにユニット名を言った。
「あ、じゃあさこんな名前はどう?柚月。」
「『Bright Shining Light』!」
「Bright Shining Light…意味は明るく輝く光と言った所だね。」
「うん、良い名前だと思うよ。愛。」
愛が言った候補、Bright Shining Lightという名前に柚月を賛成した。
こうして二人としては初のアイドルユニットを組む事となったのだった──!
こんにちは。小山シホです。さて、いよいよ愛と柚月がアイドルユニットを組みましたね!ユニット名はBright Shining Light。意味は明るく輝く光です!アイドル未経験の二人が組むこのユニットはこれからどうなって行くでしょうか?続編をお楽しみに!
後、次回はこの世界(愛達の世界)について解説しようと思います!