第3話「友達として」
その日の放課後、莉衣は衝撃を受けていた。
「…………嘘でしょ?」
「私だって信じられないよ…」
莉衣と柚月は疲れたように言う。すると、其処に愛がやって来た。
「すみません。二人とも。ちょっと話したい事がありまして。」
「貴方は確か…品川さん?話したい事って?」
柚月と莉衣は言う。すると、愛は真剣な表情で説明し始めた。
「…羽田玖美さんの事です。…実は羽田玖美さん、先生によるとかなり成績が落ちたらしくて…」
「…それ、本当?」
莉衣は真剣な表情で愛に聞く。すると、愛は頷きながら再度説明をする。
「はい。だって志染先生と実弥先生が言ってましたから。」
「加山先生と国塚先生が言っているのだったら…本当かも。莉衣ちゃん。品川さんについて行こう。」
国塚実弥は高一B組の担任。また高一の理科担当でもある。男性。因みに志染は家庭科担当である。
「ええ。品川さんだったら信頼出来るわ。」
そう言って三人は誰も使っていない教室の中に行った。
教室に入り、話をしようと思った途端、莉衣が申し訳なさそうな顔をした。
「品川さん、柚月。今日の昼休みはごめんなさい。あたし、どうしても玖美の事が…」
「あ、その事ですか。大丈夫ですよ。それに私は他の課題とかやっていて忙しかったですし。」
「うん。私達は大丈夫。」
二人は莉衣の謝罪を許した。莉衣は二人にお礼を言った。
「さて、話をしましょう。」
合図みたいに愛が言う。すると、莉衣は敬語で話している愛に言った。
「あ、品川さん。タメ口で良いわよ。」
「分かった。世田谷さん。」
「さて、これから玖美さんの事について話すね。」
「それじゃあ、玖美さんの情報とか他の人から聞いた人は教えて欲しいな。」
愛はまるで司会のように二人をまとめる。すると、莉衣が手を挙げた。
「はい。」
「世田谷さん。じゃあ情報を教えて。」
愛がそう言った後、莉衣は笑顔では無く真剣な顔になった。
「…実はあたしのクラスメイトから玖美の事を聞いたの。」
「でね、そのクラスメイトは授業の間の休みの時に玖美を見たらしいんだけど…」
「明らかに態度が悪かったらしいわ…」
「あたしのクラスメイトは『自分だったからかな。』と感じていたけど…他の先生達にも態度を悪くしていた。」
「(!?)」
愛は心の中で驚く。それもその筈、玖美はアイドルの時、暴言で炎上した事が全く無かったからだ。
「(でも…ストレスも溜まっていたのかも。)」
しかし、冷静な愛はストレスが原因で態度が悪くなったとも考えた。
「最初、その話を聞いた時はまあ、先生達も悪かったんじゃないかとも感じた。」
「けれど、態度を悪くしていた対象の先生は加山先生と国塚先生と佐賀先生だったの。」
佐賀先生は高二一組の担任である男性教師。また高一の数学の担当でもある。本名、佐賀三治。
「あの三治先生に…!?あの先生、とても良い先生なのに…」
「嘘…あの加山先生と国塚先生にも…?」
二人は相当な驚きを見せる。だが、その後に莉衣が言った事はもっと衝撃だった。
「驚くわよね?でも玖美がやって来た事はもっと恐ろしかった。」
「何と玖美はその三人の先生達を脅していた。」
「っ!?」
二人は声が出なくなるような恐怖に襲われた。
「しかもそれも優しめでは無かった…」
「例えば、加山先生には『真面目にしろ』、国塚先生に関しては『貴方は夢がない。何がしたい?』と言っていた…」
「何なら佐賀先生には『貴方みたいな奴がいるから学校が狂うんだよ。出て行け。』とまで言っていたわ。」
「え…?」
もはや二人は本当に玖美に対して恐れを抱くようになっていた。それは憧れていた愛ですらもだった。
「と、あたしからは以上よ。」
「他に意見がある人は言って欲しいわ。」
莉衣が合図する。すると、柚月の手が上がった。
「はい。私で宜しくお願いします。」
「分かった。じゃあ柚月、教えて。」
「…あの、実は私はかつての玖美さんと関わった事があるの。」
その事に衝撃の声が上がる。答えは簡単。彼女はクール過ぎて人との馴れ合いを嫌い、教師とも殆ど関わっていなかったからである。
「びっくりすると思うよ。でもこれは事実なんだ。」
「そして莉衣ちゃんの話を聞いて確信した。」
「…何が確信したの?」
「玖美さんの本来の性格はアイドルを辞めた後でも変わっていなかったと言う事…だよ。」
「確かに思い出せば彼女はそうだわ。」
莉衣が頷く。だがそれでも愛は信じられなかった。かつてその時、愛と玖美はそもそもお互いを知らなかったからだ。
「────すみません!」
「ん?この声は?」
話をしていると突然、ある生徒の声がしてきた。
「失礼します!わたし、四谷ユカと言います!玖美ちゃん居る!?」
「え、え!?四谷さん!?」
彼女は四谷ユカ。かつて玖美と同じアイドルグループに所属していた。玖美程では無いが人気だった。何なら愛に関しては玖美と同じぐらい彼女の事が好きである。実は莉衣と会って話した事がある。
「四谷さん…ごめんなさい。此処には玖美は居ないわ。」
「だけどもしかしたらあの子、屋上に居るかもしれないわ。だって玖美は一人が好きだから。」
「…こちらと連絡出来るようにしておきましょうか。」
用意周到な莉衣に愛は心の中でびっくりしていた。そして、ユカと三人は連絡先を交換した。
「ありがとうございます!それじゃあ行って来ます!」
そう言ってユカは屋上に向かって行った。
「さて、私達も探すわよ。」
莉衣達はそう言って他の場所に行く事にした──。
こんにちは。毎度おなじみ小山シホです!
さて、今回はいよいよサブキャラの中でも重要な役割を持つ四谷ユカ(よつやゆか)が登場しました!玖美の元仲間であるユカ…果たして彼女は玖美と何があったのか────────。
因みに、今回の小説の主要人物(第0話参照)は東京の地名から来ています。と、言っても区だったり駅だったり色々ですが…
次回予告
ユカの為に玖美を探す事となった三人。一方、玖美は図書室で自分の過去を思い出してて────?