第1話「戻って来たのは」
〜翌日〜
〜渋谷川学園 IーA 教室にて〜
「………どうしてだろう…?」
学校に来た愛はそればかり言っている。そのくらい昨日の出来事は忘れられない事だった。その為、この時の愛はいつもよりもボッーとしていた。
「皆、知ってる?アイドルだった羽田玖美が昨日、引退したらしいよ。」
「ああ。それ聞いたよ。原因は…メンバーと揉めたからだって。」
「あー。それ、アイドル界隈ではよくあるよね。」
いつもは様々な事を話しているクラスメイト達も今日は羽田玖美の話ばかりだった。
そんな時、廊下から声が聞こえて来た。
「なぁ。お前さ、羽田玖美が引退した事どう思うか?」
「まあ、妥当なんじゃねぇの?彼奴、やる気が無い上に裏では偉そうだったらしいしな。」
「だよな!同じ意見で良かった!」
「…っ!」
愛はその廊下の男子に飛び掛ろうとしたが、飛び掛ったら喧嘩になってHRの時間に間に合わないと考えた為、結局何もしなかった。
「おはようございます。」
すると、HRの時間になったからか志染が教室に入って来た。が、やはり、殆どの生徒達は羽田玖美の引退の話に夢中で席に座ろうとしない。いつもだったら愛はその様子に呆れる所だったが、彼女もボッーとしていた為に特に何も思わなかった。
「皆さん、席に座って下さい。大事な話があります。」その言葉だけでは生徒達は座る気にはならなかった。だが、その後は違った。
「今日は新しい生徒が来ます。」
志染がそう言っただけで皆は席に座った。そして志染は皆が座った事を確認して教室の扉を開けた。開けた事を確認した新しい生徒は教室の中に入って行く。教室の中はまるで声が出なくなったかのように静かになっていた。
「…え?」
しかし、そんな沈黙もすぐに消え去った。
「こんにちは。羽田玖美です。」
そう。新しい生徒と言うのは羽田玖美の事だった。その事を知った生徒達の沈黙は解け、隣のクラスにも聞こえそうな程、騒がしくなった。
それを見た志染はクラスメイト達をまた沈黙にさせた。
「静かにしなさい。」その言葉の後、玖美が再度、自己紹介をする。
「皆さんは知っていると思いますがわたしはアイドルをやっていました。」
「しかし、とある事をキッカケにアイドルを引退し、学校に戻る事を決意しました。」
玖美は淡々と言い続ける。IーAの生徒達は玖美が引退した理由は殆どが知っていた。が、その事を言うとまた志染が言うと考えた生徒達は沈黙を保ち続けた。
「皆さんと仲良くしたいと思います。宜しくお願いします。」
玖美はそう言って志染に指定された席に戻った。
その時、今まで抑えられていた静寂が消し去った。生徒達は大きな声で話し始める。
「…は、羽田玖美がこの学校?」
「しかも加山先生が居る高一A組…?」
「羽田玖美さんはどうしてあの教師のクラスになったんだろう…絶対、利益が無いのに…」
大半は玖美がこのクラスだった事に衝撃を受ける事と志染の愚痴だった。それを見兼ねた志染は自分の愚痴を言われたのが腹たったのか生徒に注意した。それもキツい言葉で。
「…静かにしなさい!何回も何回も言わせないで!」
この言葉は玖美がこのクラスだった事に衝撃を受けた生徒達や愛は何も気にしてなかった。だが、志染の愚痴を言っていた生徒は流石に言い過ぎと思いながらも黙る事にした。
「まさか…羽田玖美が此処の学校だったなんて。」
愛は呟き、次の授業の用意をした。
〜昼休み IーA 教室にて〜
午前中は成績順(愛は成績は真ん中で中間コース)で分かれる授業だった為、特に異常が起きずに昼休みになった。
「授業終わった。友達と弁当食べようかな。」
実は渋谷川学園には食堂もある。だが、愛は食堂より弁当派である。
「おーい!愛ー!」
愛が弁当の用意をしていると愛の友達Aが来た。愛はその声がした方向に向かう。
「うん。今行くよ。」
そして友達Aの隣に着き、持って来た椅子に座った。
「愛!昨日のニュース見た?」
「うん。あれは衝撃だった気がする…」
友達Aは愛に羽田玖美のニュースの感想を聞く。愛と友達Aは仲が良く親友的な関係。他の人には言えない事も友達Aだったら言える。
「だよね!私も昨日見た時は衝撃だったんだ〜だって羽田玖美さんって性格良かったし…」
「だから引退すると書かれていた時何でって思ったの!」
「あはは。それは私も同じ。でも理由が書かれてたからそれも見たらある程度納得したかな。」
玖美がアイドルを辞めた理由。それはメンバーと揉めたからである。つまりニュースに載っていた通りだったのだ。
「確か、メンバーと揉めたと書いてあったよね?まあ、良くありそうだよね!」
「でも、あの人、学校に戻って来たんだよね?だったら良い思い出も出来る筈だよ!」
「そうだね。」
愛と友達Aは楽しい話を続けた。
〜渋谷川学園 屋上〜
一方、屋上では玖美がただ一人で過ごしていた。
「ふう…此処は落ち着く。誰も来る事は無いし、何より風が気持ちいい。」
だが、当の本人は一人である事も寂しくは思ってなかった。それどころか、一人である事を嬉しく思っていた。
「………懐かしい。確か此処はわたしがアイドルになる前、ダンスとかの練習をしていたな。」
「…もう今はアイドルじゃ無いけど、少し踊ろうかな。」
玖美はアイドルになる前の皆からの人気度は実は殆どゼロだった。理由は明るくもなくてノリも良く無く、クールで近寄りずらい性格をしていたからだ。その為、ノリの良い生徒ですらも近寄ろうとは思わなかった。
「踊る曲はこの曲にしようかな。初めて踊った曲。」
「……………」
「まだ、モヤモヤしている…?いや、大丈夫な筈。」
玖美は自分の気持ちがおかしい事に気付きかけるがその事は大した事無いと感じてダンスを始めた。
「ふう…私達も此処に来ようかな。えっと…」
すると、愛と友達Aが来た。しかし、玖美はそれに気付く気配も無い。
「あ!私は大丈夫だよ!だって、補習あるから!」
「うん。分かった。頑張って来てね。」
「うん!」
愛は友達Aに応援の言葉を掛けた。すると、今まで愛に気付いてなかった玖美が突然、愛の方向を見た。
「貴方…誰なの?」
「あ、私は品川愛で……ってえ!?」
こんにちは。小山シホです!さて、いよいよ第1話が始まりましたがどうでしょうか?私的にはまあまあな出来だと思います!因みになろうにアカウント登録する前はメモ帳で小説を書いていましたが、わざわざ書く必要が無くなったのでメモ帳からは投稿した小説を消すことにしました!そうすれば容量節約も出来るので。
次回予告
憧れの人と出会った愛。その後、屋上の端でダンスの練習をしていると二人の生徒が来て──?