第15話「明るく輝く宣言」
~「三日演奏会」前日~
~放課後~
〜渋谷川学園〜
~二階ダンス教室~
「愛!此処はもう少し早く!」
「う、うん。分かった!」
「後、それと柚月!此処の部分は大きめに動いて!」
「了解!」
Bright Shining Lightのライブ前日、三人は厳しい練習をしていた。特に莉衣に関しては最早スパルタの域に達していた。それでも愛と柚月は弱音を挙げずに踊り続ける。
「(あたしもこんな動きじゃ玖美を助ける事は出来ない。)」
「(皆に厳しく言っているんだから、あたしもそれ以上に頑張らないと!)」
三人は大変そうな顔をしながらも何処か楽しそうだった。
一方その頃──。
〜一階の教室〜
「………」
「…羽田さん?」
玖美がただ一人で居ると其処には志染が居た。志染は玖美を指導した時とはまるで別人のような言い方をした。
「加山先生?」
「こんな所で何をしていますか?貴方、音楽祭はあと少しでもう終わるんですけど…」
「確か、羽田さん、音楽祭に出るって話だったでしょう。なのに此処で練習もしないで大丈夫…ですか?」
「──わたし、音楽祭出るの辞めます。」
「…!?」
志染は頭を鈍器で叩かれたかのような衝撃を受けた。
「今更出るのをキャンセルするんですか!?もう開催から何日も経っているのに!?」
「はい。」
「……わ、分かりました。進行役の人にも言っておきます。」
そう言って志染は去って行った。
「(大丈夫。これで良い。これが正しい。わたしなんかが出ても音楽祭を汚すだけだから…)」
「(何よりアイドルが嫌いな人が歌を歌い、ダンスをしても、パフォーマンスは上がらない。)」
「(…うん。これで良いんだ。後はわたしの知り合いが心配しなかったらもう完璧なんだけど…)」
「──玖美ちゃん!」
しかし、玖美の思い通りにはならない。
「(そんな上手く行く訳ないか。)」
「玖美ちゃん!ニュースだよ!」
「ど、どうしたの?ユカ。」
「Bright Shining Lightの皆さんが三日連続でライブ出るんだって!」
ユカは興奮しながら言うが玖美はボッーとしていたのであまり頭に入っていなかった。
「へ、へえそうなんだ。」
「で、もし良かったら…玖美ちゃんも三日連続ライブ見に行かない?」
「え?」
「ほ、ほら玖美ちゃんも勉強とかで疲れているでしょ?だからその息抜きになるかなって思って。」
ユカはそう言うが本当は玖美がアイドルの事が嫌いになりかけているのを知っていた。
「(良かった。ユカにはアイドルを嫌いになった事がバレていない。)」
だが、それを知らない玖美はホッとした。
そして──。
「ありがとう。ユカ。わたしも行きたいな。」
いつの間にか返事していた。
「(あ。わたし…今、行きたいって言った?)」
「(口、滑ったな。まあ、わたしなんかとは違って楽しいから良いか。)」
玖美は間違えたと思いながら、今を楽しんでいるBright Shining Lightの事を羨ましいと感じた。
「うん!行きたいって言ってくれてありがとう!玖美ちゃん!」
お礼を言ったユカは玖美が居た教室から走って二階に上がって行った。
「うん。またね。ユカ。」
「じゃあルードアのメンバーも誘うからねー!」
「ん?」
「(今なんて言った?ルードアのメンバーも誘う?え?そんな事ある?)」
「(…わたしなんで行きたいって言ったんだろう。)」
しかし、最後にユカが発した言葉を聞き、行きたいと言った事を後悔した。
「(あんな色々言ってくる真琴とかマイペースな星奈とかを誘うの?…絶対、辞めた方が良い気がする。)」
だが、玖美は心の中では愚痴を言いながらも何だかんだ二人の事を信用していたし、相手も玖美を信用していた。だからこそ、今の自分を見られたくないのだ。
──アイドルが嫌いになってしまった自分を。
「…取り敢えず、気分転換に外に行こうかな。」
〜数分後〜
〜一階 廊下にて〜
「…………後、一日か。」
其処に食べ物や飲み物を持って休憩している愛がいた。愛は固い覚悟を決める。
「"私達"のライブが開演するのは。」
「(これまで私達では出来なかったパフォーマンスを見せる!そして──)」
「(羽田さんの気持ちを変える!)」
愛はスポーツドリンクを飲みながら心の中で呟く。すると、何処からか人影が見える。
「……あれは……」
その人影は玖美だった。だが、かつての様子では断じて無かった。
「行かないと!」
気付いた時、愛は暗い人影の方向まで走っていた。
「あ、あの!」
「羽田…玖美さんですよね?」
返事が無い。愛は声が小さいのかなと思い、声の音量を変えた。
「実は!私、伝えたい事があって…」
誰も愛以外は喋らない。愛は人違いと思いかけたが、それでも諦めずに声を出す。
「羽田さんっ!!!」
「…!」
最早、叫びと言えるような声は暗い人影に届いた。
「な、何?品川さん。」
「実は私達、明日ライブをするんです!多分四谷さんとかから聞いたかもですけど…」
「うん。聞いたよ。…返事は間違えたけどね。」
「…という事は!」
「行きたいって言っちゃったよ。ホント、何でわたし、そんな間違いを犯したのかな…」
「やっったー!!」
愛は抑えていた感情を爆発させる。それ程、愛にとって自分達のライブを見てくれるのは嬉しい事なのだろう。
「ありがとうございます!羽田さん!」
「そ、それはどうも?」
「……コ、コホン。私達、Bright ShiningLightは明日の昼、ライブを行います。」
「それだけではありません。明後日も、明明後日も私達はライブをやります。」
「特に最終日は皆さんを楽しい気持ちにさせる為に拘った三日連続のライブの中でも特に拘りました。」
愛は急に通販番組の説明みたいな口調になった。それでも、玖美はじっくりと聞いていた。
「だから──」
「楽しみにしてください。」
「"私の憧れの人"!」
「…!!」
玖美は愛の言葉に少し驚きを見せた。
だが、同時に憧れと言われて嬉しい気持ちも湧いてきた。
「…ありがとう。品川さん。楽しみにしておくね。」
そう言って玖美は去って行った。話す前の暗い影は玖美にはもう見えなかった。
「(…言えて良かった…!)」
「憧れの人に見せる為に私も皆のように自主練しないと。」
愛の目には強い光が輝いていた。
一方、柚月と莉衣の二人は────。
〜二階 廊下〜
「柚月!ちょっとジュース買って来るわ!」
「ありがとう!莉衣ちゃん!私も丁度喉乾いたって思ったから!」
「じゃあダンス室で待っておくね。」
莉衣と柚月は二人で休憩をしていた。流石に休憩無しでダンスや歌を何度もやったので疲れが見えて来た為、莉衣が飲み物を飲んで休憩しようと言ったのだった。
「分かったわ!…さて。」
「(何買おうかしら。柚月はオレンジジュースが好きだった筈だから…あ、でも此処の自販機、オレンジジュース売り切れが多かったけ。)」
「(あたしはスポーツドリンクとかで良いわね。…そう言えば愛って何処に居るのかしら。…まあ、彼女だったら自主練とかしているでしょう。真面目だから。)」
莉衣は様々な事を考える。すると前から人が──!
──(ドンッ!)
「痛っ!」
「…すみません。あたし、ちゃんと前見ていませ…」
「って、貴方は!」
「久しぶり莉衣ちゃん。あたしだよ!覚えてる?」
「も、勿論です!…成城日名子先輩ですよね?」
成城日名子とは莉衣にとっての先輩。明るくて少し抜けている所もあるが、アイドルがエデュの中では誰よりも好きな女の子。
「うん!覚えてくれてありがとうね!」
「…莉衣ちゃん、新しいアイドルユニットに所属?したんだって?」
「あー、所属と言いますか、学校の友達が誘ってくれたのでまたアイドルをやる事になりました。」
「そう。良かったね。」
日名子は莉衣がアイドルを再開した事に喜んでいた。
「はい。愛…品川さんと音羽さんという人のお陰です。」
「…莉衣ちゃん。」
「明日のライブ頑張ってね!」
「はい!頑張ります!」
日名子は最後のエールを送り、この場を去って行くのだった──。
こんにちは。小山シホです。さて、今回は前日の様子を描きました。まあ、メインは愛と莉衣だったかもしれません。次回からは遂に三日演奏会ですね。予定で行くと初日全部、二日目くらいを書こうと思っています。
次回予告
遂に始まった三日演奏会の初日。Bright Shining Lightは今までやって来たことを事を信じてライブを開催する。其処では今までのとは比べ物にならないくらいの力を見せる──!




