第14話「ルードアの思い出」
~翌日~
~渋谷川学園 空き教室にて~
──!!
「よし!一旦、練習を辞めましょうか。」
「つ、疲れた。やっぱり一限目から練習しているとキツいよ...」
「うん。確かに。あ、休憩するついでにライブに見に行かない?」
「それ良いかも。じゃあ、行こうか。」
愛達は高一の教室がある廊下まで歩いて来た。すると──
~高一の教室 廊下にて~
「え!?────が音楽祭出るのって本当!?」
「うん。私も信じられなかったよ。でも、それは──ちゃん自身が言っていたから。」
四谷ユカと足達明莉が話していた。だが、距離が遠かったのか全く何を話しているのかは聞こえない。
「あれ?彼処に四谷さんと明莉がいる。」
「...明莉?もしかして愛の友達かしら?」
「うん。そうなんだよ。中学校からの友達。明るくて優しいんだ。」
「へえ。良い友達だね。愛。私も足達さんと関わってみたいな。」
「え?でも羽田さんはもうアイドルを辞めたって言ってなかった?」
「うん。確か辞めたって言ってたよ。...まあ、それはわたしのせいだろうけど。」
「...?でももう一度、羽田さんのパフォーマンス見れるんだ!それは絶対に行きたいな!」
「あ~....それが今日では無くて...」
「え?何で?」
愛は驚愕した。愛が話した時は「わたしはアイドルをやる資格がない」とまで言っていた玖美がいつかは不明だが、まさか一年ちょっとでアイドルを再開するとは失礼だが愛には予想できなかった。
「?どうしたの?愛。」
「──羽田さんが音楽祭に出るみたい。日にちは不明だけど。」
「──────」
それを聞いた柚月と莉衣は話す事も出来なかった。何故なら二人とも玖美に「アイドルをやる気はない」と直接言われたからだ。そして、愛同様に一年ちょっとでトラウマ級の出来事を乗り越えるのは難しいと感じていた。
「な、何でなの…?玖美?貴方は一年前にトラウマを抱えた…って言ってた気が…」
「四谷さん絡みの出来事だよね。そんな一年ちょっといくら学校の音楽祭とは言え、ステージに立つのは…」
「…大きなプレッシャーがかかるよね。」
「…ま、まあそれは一旦置いといて、ほら、休憩代わりに他の人のライブ見に行くって言ってたでしょ?」
「だったらまずはそれを一旦見に行きましょう。玖美の事ばかり考えていたらせっかくの作戦が失敗する可能性も無くはないから。」
しかし、莉衣が音楽祭のライブを見に行こうと言った事で玖美の話は一旦切られた。
三人は体育館に向かった──。
一方その頃…
〜二階 ダンス練習教室にて〜
「ステージのセリフは…」
当の本人である玖美は二階にあるダンス練習教室で音楽祭に向けて練習をしていた。
今はセリフの練習だ。
『皆さんこんにちは。羽田玖美と申します。』
『わたしはアイドルを辞退して一年経ちました。』
『ですが、皆さんが大きな批判や誹謗中傷をしなかったお陰でわたしは精神的に不安定になる事も………………あり……………ま………せ……………』
順調だったセリフの練習。しかし、突如として言葉が出なくなる。ダンス練習教室のステージに乗っていない時は言えたのにも関わらず、ステージだと言葉が出なくなってしまうのだ。
「(…ダメ!セリフが出てこない!どうして!?このセリフはステージに立ってない時には言えるのに!)」
「(音楽祭が始まってから結構な頻度で練習しているのになんでなの!?…それに──)」
「(ステージに立っていたらどうしてダンスや歌すら情けないものになるの!?立たずにやったらそれなりのクオリティはあるのに!)」
「あーあ。前の時と似ているな。この感覚。」
「前の時」。それは、玖美の言葉によってユカが自暴自棄になり、それに罪悪感を持った玖美が次のライブでは『歌の歌詞は出ず』、『ダンスも情けなく』、『セリフを全く言えない』という時だった。
「わたし、音楽祭でもう一度と思ったけど無理か。」
「だってわたしにとってアイドルは明るくて楽しいものから暗くて苦しみと束縛があるものに変化してしまったから。」
「わたし…もう、ステージに立つの諦めようかな。」
「…うん。諦めよう。」
そして、玖美はダンスの動画と歌の音源を削除してしまった。
「(大丈夫。『今だったら』アイドルを辞める事が出来る。未練は無い。今だったらかつてのような事にはならない。だからセリフも──。)」
──(グシャ!)
「よし。捨てれた。後は…かつてアイドルだった時の写真を全て削除すれば…!」
玖美は自分が写っている写真とオフの時に撮った写真を全て削除した。
「もう、この写真もいらない。練習している時に撮られたものも、メンバーと一緒にどうでも良い事で撮った写真も……!消してやる………!」
順調に写真を完全削除する玖美。そして残った写真が二つ。アイドルになった記念に加々実と写った写真と新しい仲間、ユカが入って来た記念に撮った写真だ。
「…ふう。後…っ!この二つだけ…!」
「こんなの…アイドル同士でこそ残すものっ…!わたしはアイドルじゃない……!もう、辞めた……!!」
「……もう、未練は無い…………っ!」
しかし、玖美の手は無慈悲にも動いてはくれなかった。
「……何で!?わたしの手が動かないの!?もう…っ!いらないものなのに!!!」
「──それは貴方の大切な思い出だからよ!玖美!」
「だ、誰!?」
玖美が恐る恐る教室の窓を開けると何と其処にはルードアの元仲間、成田玲香と大森星奈、そしてルードアのリーダー的存在、池上麻琴が居た。
「玖美〜心配したんだよ?星奈達が歩いていたら玖美の声が聞こえたから〜」
星奈は一見のんびりしているが人想いな性格。 でムードメーカー的存在。ルードアのレッスンも明るさで乗り越えていた。
「本当にね!玖美!貴方はもう少し自分を信じるべきよ!」
麻琴は明るくはっきりとものを言う心の持ち主である。その為、玖美がアイドルを辞めると言った時も誰よりも驚いた。しかし、彼女はものを言うだけじゃない。人の意見を尊重する心も持っているのだ。
「う、うん。ま、まことちゃんの言う通りだと思うよ。玖美ちゃん。」
玲香はオドオドしているように見えるが実はある意味一番メンタルが強いと言っても過言では無い人物。寧ろ、彼女はオドオドしている時にこそ強くなる。そんな人物だ。普段は優しいが怒ると大分怖い。
「な、何で貴方達が此処に!?」
「…もう貴方達とは話す事もない!わたしは此処を出るから!使うなら使って!」
玖美は久しぶりの仲間に出会っても挨拶すらしなかった。彼女は凄い速度で階段を降りていった。
「玖美!?何処に行くの!?」
「……く、玖美ちゃん。す、凄い速度で…」
「ホントにね〜いや〜これから玖美どうするんだろ?」
「………大丈夫かしら。玖美は。」
三人は色々と話す。だが、玖美は三人が自分の事を心配している事なんか知らずに廊下を駆け出して行った。
一方、愛、柚月、莉衣はこの出来事を知らなかった。
しかし──
〜夕方〜
「え!?羽田さんが音楽祭に出るのキャンセルするって!?」
ユカや明莉、さらにはルードアのメンバーからも玖美の事を伝えられた。
「…有り得ないわ。玖美。どうしてルードアの皆さんが来たのに挨拶もせず…」
「皆、大丈夫。」
柚月は二人とは対照的にあまり気にしていない様子だった。
「え?」
「だって私にはあの作戦があるよね?だったら玖美さんも変わってくれる筈だよ。」
「だから聞いた話が気になるのも分かるけど…まずはライブの事に集中しないと!聞いた話ばかりに意識を向けているとライブの事も考えられないし!」
柚月の言葉により、二人は失望の感情が薄れた。
「そうね…ありがとう。柚月。あたし達はライブを成功させないとだもの。」
「…そうだよね。成功させて羽田さんを変える為に私が考えたものなのに、私がやる気無くしてたらだめだよね。」
「…よし。ライブの練習、明日からも頑張ろう!」
皆さんこんにちは。小山シホです。さて、今回はルードアのメンバーが登場しましたね。個性豊かなメンバー…サブキャラとしても十分だったのではないでしょうか。ところで物語も最終盤ですね。終わるのは少し寂しいかもしれませんが是非最後まで見届けてください!
次回予告
愛、柚月、莉衣のライブまで後1日に差し掛かったある日、玖美に偶然会う。そして愛は言った。
「私達の本気を見てください」と。
翌日、体育館での三人のスペシャルなライブが開演する────!




