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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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99/122

99、一緒に歩くものたち

 聞きなれた声。

 スイが使ったのは、姉であるチカを水で作りだしたものだ。

 そこから放つは、水の弾丸。

 レイは暴走して、かなり強力な魔法を使っているとはいえ、一発が大きいのに対してスイは数で対抗する。

 少しずつでも威力を削り、さらにいえばチカと同じ見た目をさせることで、化け物程度では、簡単に見分けなどつかない。


 これまでにない魔法を、詠唱することなく使っているところを見てチカはすぐに理解する。

 修行を終えたということなのだろう。

 そして、スイがこの場にいるということは、さらに修行を終えているものもいる。


「チカ!」


 キキルの聞き慣れた声とともに、一瞬で隣にチカが現れ、魔力を帯びた剣で魔法を斬る。


「俺のパーフェクトアーマーには何も効かん」


 さらにはそんなセリフとともにマモルが魔力の鎧でスイと、いつの間にか隣にいたカイを守る。

 みんなを見てチカは思う。

 一人じゃなければ、もう一度届くと……


「皆さん、力を貸してください」


 チカはその言葉の後、レイに向かっていく。

 周りのことは全てみんなに任せた。

 チカがやることは、一直線に向かっていき、抱きしめるだけだ。


「ああああああ!」

「はあああああ!」


 近づいたことによって、手がチカを攻撃しようとしてくるが、かすり傷を負いながらも抱き着く。

 今度こそは離さない。


「ああああああ!」


 離れろといわんばかりにレイは暴れるが、チカの力によって魔力が乱れているからか致命傷というほどの威力はない。

 絶対にあたしが、なんとかしないといけません!

 レイを見たときには、決めていたこと……

 チカはそれをただ実行する。


「レイ!」


 チカの言葉で、レイの体がビクッと揺れる。

 これならいける、そう確信したときだった。


「あ、あ、あああ゙あ゙あ゙!」


 叫び声とともに、鮮血が飛び散るのが見える。

 すぐにレイはチカを襲っていた自分の手を、自分で引きちぎっているのが見えた。


「や、やめて!」


 チカは慌てて止めようと、抱きついていたのを離れたタイミングだった。

 レイは自身のもう片方の腕を心臓に突き立てる。


「レイ!」


 すぐに状況を理解したものの、魔力を帯びた腕は体を貫いたと同時にレイはその場に倒れた。

 チカは駆け寄るが、レイは笑顔で応える。


「落ち姉、うるさい」

「でも、どうして」

「わたくしは、これまでの行いを正しただけ」

「こんなことで……」

「正すことはできない……わたくしだってわかっています。だからこそ、わたくしは自分で最後は……」

「何を言って……」

「落ち姉……いや、お姉……わたくしの知っている秘密で、お姉が知らないことを一つだけ」


 レイはそう言うと、チカに身を寄せる。


「そんなことはいいから、喋らないで」


 なんとか安静にさせようとチカは体を掴むが、レイは力強く抵抗すると、しっかりとチカの目を見て言う。


「お姉は、わたくしたちと姉妹じゃない」

「え?」


 予想外の言葉に、思わず驚いているとレイは最後の力を振り絞って立ち上がる。


「スイ!お姉!二人をお願い致します!」


 ここにいる全員に向けられたその言葉とともに、レイは口から大量の血を吐き出すと崩れ落ちるのだった。


 ※


 次の日。

 レイの亡骸は、秘密に処理された。

 人造人がレイだったからなのか、それともアンノのおかげか、中央都市にそれほどの被害はなく、あんなことがあったというのに、世界はあっという間に元通りだ。


「チカ」

「はい、次へ向かいます」


 チカ、キキル、カイ、スイ、マモルの五人はすぐに中央都市を去る予定ですでに話しを終えていた。

 すでに五人は中央都市の外へとやってきたものの、そこで弓を持った女性と出会う。


「おい!」

「あなたは!」

「着いていく、自分もな」

「何を言って……」

「ほらよ」


 女性はそう言って、何かをチカに投げる。

 それは小さな石のペンダントだ。

 子供の頃、まだレイがそこまでチカのことを嫌っていなかった頃にあげたものだ。


「どうして……」

「潰しにいく、手伝ってくれるだろ?」


 女性のその言葉で、レイがどのようにしてこうなったのかを知っていると思ったチカは、これからの目的地を変更して女性の提案に頷くのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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