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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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97/122

97、目をそらしたもの

 これまでは魔力を持ったアンノのほうを向いていた人造人だったが、どういうわけか魔力がないチカだけを見ている。

 まるで人であったときのことを覚えているかのようにだ。

 これにはアンノたちも驚いている。


「どうして……」

「あたしに何かあるということですね」

「そんなはずは」


 あり得ないことだとアンノは思う。

 これまでも見たことがない光景になっているからだが、横にいるのはチカだ。

 予想外のことしか起きないということが普通なのかもしれない。


「チカちゃん!」


 心配するアンノの声よりも先にチカは動く。


「まずは前に出ます!」


 チカは魔力を吸い取っていることに気付いて、二人よりも遠い位置で戦うために前にいく。

 無理やり取り込まれた魔力によって尋常ではない力になっている人造人であるレイは、魔力がないチカを吹き飛ばす力で殴ってくる。


「ああああああ!」

「く!」


 速度は尋常ではなく、常人であればそのありえないスピードによって一撃で倒されてしまう可能性もあるが、そこはチカだ。

 これまでの修行で身に着けた、体の動きを見ることで攻撃を先読みをして、避けている。


「肉弾戦ではあたしに当たりませんよ」

「ああああああ!」


 聞こえてはいないと思いながらも、チカは言うが、まるでこれまでの恨みを込めるようにしてレイは攻撃を繰り返す。

 それをチカはなんなく避ける。

 どれだけ速くても、攻撃としては単調だ。

 魔法しか練習してこなかった素人であり、さらにはチカに怒りを向けすぎた結果、狙う位置というのが全て顔だということも余計にそうさせていた。


「だから、当たらないと言っています」

「ああああああ」


 何度も攻撃を受けて、普通はそれに合わせてのカウンターを狙うべきであったチカはしない。

 チカには、人造人になったとしてもレイのことを受け止めると顔を見た瞬間に決めていたからだ。

 これまで向き合ってこなかったことをわかっているから……


「ああああああ!」


 だからだろうか、レイの目から水の雫が垂れた……


 ※


 いつからだろう。

 姉のことを憎みだしたのは……

 母親に言われたから?それとも、何もできないくせに足掻いているから?

 見ていた結果、そうではなかった。

 イラついたのは、全てが自分がもっていないことをしていたからだ。


「わたくしは、わたくしの意見はありません」

「それでいいのよ」


 母がそう嬉しそうにするのを何度見たかわからない。

 意見はない。

 だって、意見があった場合にどんな言葉が返ってくるのかわからなかった。

 彼女自身、何かをやりたかったと強く思うことは確かになかったが、それでも何かに一生懸命な姉と、それに憧れている妹を見れば、否が応でも心が揺れ動いた。


「わたくしは……」

「何かあるの?」

「いいえ……」

「そんなことよりも、あれがまた無駄なことをやっているみたいよ。面倒ね、利用価値もないんだからさっさと追い出せばいいものの……」


 全ては姉に向けられたものだ。

 どうしてそこまで姉を憎むのか、小さい頃はわからず、聞いたものだ。

 だけど、それが良くなかった。

 姉のことを話題に出すだけで、母が怒ったからだ。

 母に怒られないようにするために、レイはただ母と気づけば同じようになっていた。


 姉を憎み、怒りを向けていた。

 それも全て流された結果ではあるが、姉は何も言わず受け流していたことに気付いたのは、レイに向けられる視線が心配から、興味の薄れたものになっていたときだった。

 気づけば妹も同じように、自分のことなどいないかのように扱った。

 そして、父も……


 その結果は止まらない。

 だって、そこでやめてしまえば、これまでの行い全てが間違っていたことだと気づいてしまうから……

 いや、気づいていた。

 だから絶対にやめられなかった。


 結局、使用人の一人にいいように扱われていることも全てわかってしまった。

 だって、視線が同じだったから……

(抵抗ってどうするんでしょう?)

 人造人として、体を作り替えられるときでさえも、意識はどこか戻っていた。


 普通の人であれば抵抗するほどの痛みと、恐怖であったが、レイは全てを受け入れてしまった。

 何もない、できないからこそ、もうどうでもよくなってしまった。

 残っているのは後悔ばかり……

 だからこそ、一つだけ願いがあるのであれば、姉に最後にちゃんと叱ってほしかった。

 褒めてほしかった。


 ダメだって、よくできたねって……

 努力ばかりする姉に、見てほしかった。

 だから、姉ともし戦うようなことになれば、絶対殴って叱ってもらおう。

 そして、強くなったと褒めてもらおう。

 そんなことを思いながら、レイは化け物になった。


 ※


「レイ!」

「ああああああ!」


 何度繰り返すかわからない攻撃。

 全てを避けながらも、チカは変化に気づいていた。

 まるで体が圧倒的な魔力による肉体強化に耐えられないかのように、少しずつ血が流れていることに……

 まずい、そう考えたときには、チカの攻撃を避けるとレイを抱きしめていた。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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