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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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96/122

96、人造人は……

 槍が矢で弾かれ、火が消し飛んだ。

 一つは見ていた彼女が矢を放ち、そしてもう一つは人造人が力というものに完全に飲まれたからだ。


「あー、あああああああ!」


 赤子のような、されど苦しそうな声を上げる。

 それもそのはずだ、人造人に放たれた魔法というのは、かなり強力な魔法だった。

 普通の人であれば最低でも逃げ出すようなレベルの魔法だ。

 そんな魔法をその身に受けたとなれば苦しまないほうがおかしい。


「おい!」


 そして、苦しんだ人造人がとった行動というのは、フードの女性二人を取り込むというものだ。

 思わず仲間じゃないのかと見ていたアンノだったが、化け物に対してあり得ないと言葉にする。


「くそ、化け物が!敵と味方の区別もつかないのか!」


 槍を投げた人物が吐き捨てるようにして言い、だけど自分もああなることを恐れたのか、ちっと舌打ちをすると離れていく。

 アンノはそれを見ながらも追いかけることはしない。

 いや、できないというべきか……


「ああ、あああああああ!」


 人造人が完全に暴走しているように叫び、魔力を吸う力というものも強くなっている。

 これを放っておくということができないからだ。

(すぐに決着をつけなかった結果がこれねえ)

 厄介を通りこして、確実に倒せないであろう存在になってしまった。

 意味がないことはわかっていてもアンノは少し後悔する。


「これも一つの予想ということ」


 こうなることは最初から決まっていた一つの出来事だ。

 だけど、どういうわけか人造人に向かってさらに矢が放たれる。

 それは魔法でできたものだというのに、どういう理屈なのか人造人に吸収されることなく刺さると、一瞬ではあったものの動きが鈍る。

 予想していなかったこと、わからないものに対して、アンノは興味が出てくる。


「死ねないという思いはこういうところから生まれるのですねえ」


 思わずそんな言葉が口をついて出る。

 そんな中で、アンノは転移の魔法が発動するのを感じた。

(来てしまいましたねえ)

 予想はしていたことながらも、防ぐことができればと考えていたことだったからこそ、自分の不甲斐なさにアンノはため息をつく。

 そんなタイミングでチカとアイはアンノの元へと辿り着いたのだった。


 ※


「ねえ、よかったわけ?」

「どういう意味だ」

「決まってるでしょ、あたいたちも戦う必要があったんじゃないかってこと」

「必要ない」

「へえ、それはどうしてか聞いていい?」


 シシルに言われても男は何も言わない。

 少し前のことで不機嫌になってから、シシルの質問に答えなくなってしまった。

(確かに、あたいが余計なことを言ったせいなのはわかってるけどさあ……何も教えてくれないのは、ずるいって)

 詳しいことを知っている男が何も答えてくれなくなってしまったとなると、シシルも不都合だからだ。

 あきらかに落ち込んだシシルを見て、男はため息をつく。

 シシルがこういう性格だということをわかって付き合っていたのだ、男も怒っているというわけではない。

 答えにくい理由があったせいだが、それでも答えないというわけにもいかない。


「試練だからだ」

「試練?」

「あいつのな」

「ふーん」


 男に言われたシシルは試練と言われて、それがどんなものなのか気にはなったが今はそれよりもやることはある。

 シシルと男は迷宮主に会うために次へと向かうのだった。


 ※


 出てきた化け物の影響によって近くに転移することができなかった。

 少し遠い位置にて転移させられたチカたちはすぐにアンノがいる場所へと向かう。


「すみません、アイさん」

「いえ、お姉ちゃんもチカさんのように速く走ればいいのですが」

「これくらいは、あたしに任せてください」


 さすがに距離を移動するというのであれば、チカがアイを抱っこするほうが移動が速い。

 最速で動いたチカ達はアンノの隣に立つことになる。


「アンノ」

「チカちゃん、来てしまいましたかねえ」

「だって、アンノがしん……え?」


 心配だった、そう言葉にしようとしたが、人造人を見て動きが止まる。


「なんで……ですか……レイ」

「あ、ああ……」


 その人の名前を呼ぶが、反応はない。

 チカはアンノを見る。

 その表情から、アンノはこのことをわかっていたということなのだろう。

 だから遠ざけようとしていたのをチカはわかってしまった。

 そして同時に思ってしまう。


「あたしが……あたしのせいで……」


 その言葉は小さすぎて誰にも聞こえることはなかったが、化け物になってしまったレイを何とかするべく、チカは拳を握りしめた。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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