94、慣れないこと
一人対三体。
それも三体全てが人の形をした化け物のような存在となれば、どれだけ凄まじい力を持っているとしても厳しいものがある。
さらには最初に受けた傷というものが、体をじわじわと蝕んでいる。
「はあはあ……キツイですねえ」
回復をしたいが、魔力をそちらに回すと他の魔法がうまくいかなくなる。
人造人という存在が魔力を乱しているからこそ、厄介だ。
(やはり、あの存在が厄介なのですねえ。見えているのと、実際に戦うのは違うってことですかー)
でも、それ以外の攻撃を受けていないというのも事実だ。
相手の人数が多いせいで無闇な転移も難しいことはアンノも理解している。
「ふう、攻撃をやめればどうなることか……」
やっていることは、相手に攻撃されないように魔法を撃ち続けるというものだ。
こんなことをしても全て防がれることはわかってはいるものの攻撃をやめることはできない。
魔法の物流で相手の動きをなんとか制限しているからだ。
「わかっていたことですよねえ」
普通の魔法が通用しないということは、アンノもわかっていた。
そして、普通じゃない魔法もアンノは当たり前だが扱える。
だがそれは、魔力の集中が必要だったりと制限がある。
(不安定な状況でも使えるんだけどねえ)
魔法は発動可能ではあるが、そのためには今の魔法攻撃というものを一度止めないといけない。
そうなってしまえば、牽制しているおかげで前に出てきていないフードを被った二人がこちらに向かってくるだろう。
「こういうときに仲間が必要ということですか……」
どれくらいの時間、修行がかかるかまだわからない。
未来がどうなるのか、人の行動によって常に変化は起きているものの大きな変化はない。
どっちにしろ、自分自身が死ぬという未来までは見えている。
「それが早くなったってことですかねえ」
こんなことをしなければ訪れなかったはずの未来だとはいえ、仕方ない。
チカと出会うことによってアンノは気づかないうちに変わっていったということなのだろう。
お互いに打つ手はない。
そう考えていたが、人造人という存在はさすが人ではないということだろう。
「がひゃひゃひゃひゃ」
笑い声のようなものが辺りに響く。
(攻撃は慣れ始めていますねえ)
魔法で攻撃はしているものの、人造人はこれまでのように魔法で攻撃を防いでから吸収するという工程をとらなくなってきている。
アンノの魔法に魔力を吸収する速度というものが適応しているということなのだろう。
そのタイミングでフードを被った女二人が勢いよく向かってくる。
すぐに魔法で吹き飛ばすが、フードの女たちは立ち上がる。
「化け物ですねえ」
魔法が当たり、衣服がそれなりにちぎれたというのに、彼女たちは気にせずまた向かってくる。
人造人がアンノの魔法を吸収できるようになった以上、有利と考えたのだろう。
「滑られてるってことねえ」
アンノだって、まだまだできることは多い。
これまではどうしても強い魔法を使っていなかったが、見える範囲には巻き込むような人はいない。
(言いつけは守っているようですねえ)
強大な魔物が現れたとき、ここから全員避難するようにと、中央都市のギルドマスターにはすでに言っていた。
それを実行してくれているのだろう。
であれば、強い魔法を放つことは可能だ。
ここ一帯を巻き込む勢いで魔法を放てば目の前にいる全員を倒すことができるはずだ。
「行きますよお!」
アンノは魔法を放つために一瞬で魔法の出力を上げる。
これによって魔法の勢いを強くする。
少しではあるが、攻撃をしていた三人が後ろに下がったようだ。
魔法を一瞬だけ止めて、強い魔法を放つための魔力を全身から溢れさせる。
だけど、その瞬間を待っているものもいた。
「命、いただき」
「くぅ」
もう一人隠れていた少女が、槍のような武器をアンノに向けて投げたからだ。
相手の攻撃タイミングは完璧だ。
このままいけば魔法を解除しないことには槍があたり、逆に槍を避ければ魔法は発動しない。
どちらかを選択しないといけないというのであれば、これまでであればなんとかして逃げるという選択をしていただろう。
(変わったということですねえ)
今回やろうとしているのは、体に傷を負ったとしても魔法を放つために魔力を練る。
槍が迫る瞬間、アンノは何かが見える。
大きな魔力を練ったからか、もしくはこれもアンノの力なのかはわからないが、見えたものに対して思わず笑みが浮かぶ。
飛んできた槍は、どこからか飛んできた、こちらは矢によって弾かれる。
「なに!」
「驚くのは、この魔法でもいいのですよ」
そして、同じタイミングでアンノの魔法は発動する。
火というよりも炎、それよりもさらに強い火が人造人たちに迫る。
この炎であれば、どれだけ吸収しようとしても、吸収が終わる前に熱さで倒すことができるはずだ。
だからこそ、この魔法をアンノは使用したのだが、それはなぜか消えてしまうのだった。
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