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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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88/122

88、魔法で作り出すのは

 再度今度はスイとマジョの魔法についてだが、それなりにうまくいっていた。

 それは、チカが石化したときにスイが暴走したのが大きい。

 あのときの出来事によって暴走したスイがかなりの魔法を無意識のうちに使っていた。

 それの一つというものが、自分の分身を水で作り出すというものだったこともあり、魔法については言っていたことが再現できた。


「数が少ねえぞ」

「わかっているです」

「二体以降が、ちゃんと姿になってねえんだよ」

「わかってるです」


 スイはマジョにそう言われる通り、作ることはできても形はうまくいっていない。

 人の形になっていないため、これを魔法で使ったところで集中して作っているスイを狙われることに変わりはない。

 そうなれば、苦労して魔法を使う意味はない。


「もっと意識しやがれ!」


 マジョに言われるが、スイには何度やってもうまくいかない。

 急にやれと言われたということもあるが、自分を意識して作ることは、意外にも難しいことを痛感した。

 だけど、作れないということは狙われてしまうということだ。

 強力な魔法を思いついたことはいいが、ちゃんと使えないことには意味がないことをスイもわかっているからだ。


「おい!」

「は、はいです」


 集中が途切れそうになるたびに、魔力が暴走しそうになるが、マジョが怒りとともにさらに大きな魔力を展開させることで、魔力はぶつかりあって落ち着く。

 これは同じ威力の魔法をぶつけることで相殺しあうことに似ており、それを魔力だけで行っている。

 それだけでマジョがスイのどれくらい上の存在なのかわかるだろう。


「もっと集中だろ!」

「わかっているです」


 スイにだってわかっていた。

 言われていること自体は……

(でもスイは、スイは自分の顔などあまり見ていないです)

 そうなのだ。

 自分の見た目ということをあまり意識したことがなかった。

 確かに尊敬する姉であるチカの隣に立つために迷惑にならないような見た目になるようにということだけは考えていた。

 逆にいえばそれだけで、ちゃんと自分の見た目を確認したことはない。


 だけど、逆に考えればチカの見た目は完全に覚えている。

(ええい、試しです)

 スイはそう考えると、今度は見慣れたチカの姿を魔法で作り出そうとする。

 見た目に関してはいつもいつもいつもいつも……念入りに見ていたため、脳裏に焼き付いている。

 頭の中で姿を思い浮かべるのは昨日食べたご飯を思い出すことよりも容易いことだ。

 そして、チカに似すぎた水の分身を三体作り出す。


「できたです」

「っておめえは何を作ってやがんだ!」

「一番尊敬してる人です」

「そういうことを言ってんじゃねえよ。どうして自分を作らないのかって言ってんだ!」

「自分のことがわからないからに決まっているからです。そんなこともわからないです?」

「おめえ、あたしゃに喧嘩うってんのか?」

「負けるとわかっていても、お姉様の見た目を出した以上引くきはねえです」


 マジョに怒られながらも一切引くことはないスイ。

 確かに、スイの言う通り少し見ただけではあったが、あのとき部屋にいた女性と姿はかなり酷似していることはマジョもわかっていた。

(これだけ真似できるってことなら、普通は自分のこともできるはずなんだが……いや、むしろ使えるか?)

 できたのは仲間のチカの姿だけだ。

 一人で戦うのであれば、こんなものを作りだしてしまうことは完全に不利になる行為だが、スイたちが戦うのは一人でではない。

(ま、一つのことができるようになれば、後は派生でなんとでもなる)


「おい、次はそこから魔法だ。できるのか?」

「お姉様の姿を作ってスイが無様な姿を見せるわけにはいかないです」


 スイはそう宣言すると、四人のチカから水の球を発射させる。

 二人が想像していた通りのことができて、マジョは驚き、スイは惚れ惚れしたようにその姿を見つめる。


「さすがはお姉様です」

「いや、作り出したのはおめえだろ」

「はいです。完璧です」


 満足気に頷くスイの魔法はこうしてマジョが考えたものとは違っていたが完成へと近づいていくのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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