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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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87、武技とは

 キキルたちは、剣を打ち合うわけではなく地面に足を組んで目を閉じていた。

 何をさせられているのだろう。

 もう一時間はしているそれに、キキルは思わずそう考えたところで頭を叩かれた。


「イッタ!」

「集中するのじゃ」

「なんで叩くのよ」

「集中してないからじゃ」

「だって集中できないでしょ。そもそも、マモルはラスと戦ってるのに、どうしてうちは相手をしてもらえないのよ」

「仕方ないじゃろ、おぬしはあの質問に答えておらんのじゃから」

「いや、あれだってマモルが答えるのが速かっただけじゃん」

「おま、俺のことを急にけなすなよ」

「だって本当のことじゃん」


 キキルはこれまでにあったことを思い出しながら、そう答える。

 これまでにあったことというのは、武技についてだ。

 あれはなんだと聞かれたから、マモルが素早く魔力を伴う技だと言った。

 正確だとラスは答えて、次に言ったのだ、「それ以外で例えるとなんじゃ」と……

 案の定というべきかわからないキキルはフリーズする。

 実際、マモルもそう聞かれたらなんて答えればいいかわからない。


「だから、わかんないんだって」

「じゃから修行をしておると言っとるのじゃ」

「だから、これが何の修行になるのよ」

「それがわからんからやっておるのじゃ、いい加減自分で答えを見つけるのじゃ。じゃが、マモル戻るのじゃ」

「あ、ああ」


 ラスはそう言うと、少し不機嫌(ふきげん)そうにマモルと戻っていく。

 キキルは言いたいが言い返せず、考えにふける。

 実際に武技とはなんなのだろうかと……


 普通とは違い、たくさんの武技を扱えるキキルは、真似をすれば使えるもの程度にしか考えていなかった。

 だけど、よく考えてみればそんな簡単なことではない。

 普通の人であれば一つの武器を極めて、その中でも武技というものは身につけて一つか二つ程度。

 そもそも武技というものは、武器を振るう動きと、それを纏うように魔力を使った結果完成したものだ。

 だから武器ごとに動きが変わる武技というのは、一つの武器でしか扱えないと……


(それができちゃったからうちは飛び出したんだっけ……)

 かなり昔のことを思い出す。

 神童などと言われたキキルは、武技を見れば真似をできた。

 それは武器の動きと魔力が同じになったから……

 だが、実際の剣を扱うとなれば、今はわかるがラス、さらにいえば妹であるシシルよりも下手だろう。

 そのことから考えられるのは、一つだった。


「もしかして、うちって魔力の扱いが上手い……とかってこと?」


 ボソッと口にした言葉だったが、それはラスに聞こえていた。


「まじか」


 マモルに武器の扱いかたを教えていたはずのラスが、一緒でキキルの側にいくことに教えられていたマモルは驚きの声をあげる。

 そして、勢いよく近づいたラスはキキルの頭をポンと優しく叩いた。


「気付いたのじゃな」

「ええ、武技は魔力でできる!」

「ほう、それで?」

「魔力の扱いが上手ければ、武技を扱える!」

「ほう、それで?」

「え?終わりだけど……」

「な、なんでなのじゃ!そこからあることがわかるじゃろ!」

「え?わかんないけど……」

「なんで、なんでなのじゃ」


 ラスは思わずといった感じで声を荒げるが、キキルには本当にわからない。

 ラスは何を言いたいのだろうか?

 回りくどいことをせずに教えてくれたらいいのにと考えるものの、何かはわからない。


「ねえ、結局なんなのよ!」

「だからじゃ、ちゃんと考えるのじゃ」

「考えててもわかんないの!」

「あー、どうしておぬしはこう……だから成長できんのじゃ」

「ちょ、そういうことを言っちゃう?うちだって、好きでこうなってるわけじゃないんだけど」

「あー、だったらおぬし!マモルはどう思ったのじゃ」

「お、俺かよ」


 急に話を振られたマモルはさすがに戸惑う。

(どうして俺に聞くんだよ、そもそも急に言われてもわからないからな。魔力の扱いがうまかったら、武技が使いやすいってことなら……適当に言うしかない)

 どうにでもなれと、マモルは答える。


「武技は魔法と同じってことじゃないのか?ってそんなこと……」

「それじゃ!」

「え?」

「えええええ!」

「何を二人とも驚いておるのじゃ、武技も魔法じゃ。それをさっさと気づくと思っておったのに、おぬしは、なんでわからんのじゃ」

「いや、だって……わかんないじゃん」


 さすがのキキルも驚いた。

 これまで魔法が扱えないからこそ、武器に魔力を(まと)うことで扱えるようになる武技というものを身に着けていた。

 魔法と武技は全く違うものだと考えていたのに、同じだと言う。

(わけがわかんないんだけど)

 こんがらがる頭の中で、キキルは必死に考えたところで、一つのことを思い出した。

 シシルが使っていた剣が赤くなっていたことだ。

 あれはただ魔力が強力に纏っているからそうなっているものだと考えていたが、実際には違うということに気付く。

(あれは剣に火を纏わせていたってこと?)

 ようやくというべきか、武技についてのことを理解する。

 だが、そこでキキルは思う。


「でも、そんなことがわかっても今のうちじゃ何もできないじゃない」


 そうなのだ。

 知ったところで何ができるというのだろうか?

 ラスが言うように武技が魔法だとすれば、何かできるようになるのか。

 キキルにはわからない。


「わからないのじゃったら、見ておるのじゃ」


 すると、ラスはそう言葉にすると剣を持たずに構える。

 武器を持たないで何ができるのだろうか?

 キキルはたちはそう考えたが、ラスの手にはいつの間にか魔力が集まっている。

 それだけでわかる。

 魔力で作った剣が、今ラスの手には握られているのだろうと……


「”斬”」


 ラスのその言葉とともに、腕が振り下ろされる。

 魔力でできた剣は、ビュンと音を鳴らし、振り下ろした手は地面の手前で止まるが、地面は当たってもいないのに割れる。


「すご……」

「まじかよ……」


 それを見た二人は驚きの声をあげながらも、これが本当の武技。

 いや、武技魔法だということを知るのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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