84、再会と相談
ラスを見たキキルは特に嬉しそうだ。
そして、もう二人ここにいる女性がいる。
一人の女性が手招きをすると、チカだけに向かって口パクで言う
「(外に行きますよ)」
ラスともう一人の女性が、それを少し驚いた表情で見ているが、気付いたのはチカだけだ。
「すみません、少しお手洗いをお借りします」
チカはそう言葉にすると、外に出た。
ドアが出て二人きりになったとき、彼女は嬉しそうに口元だけが笑う。
「久しぶりー」
「はい、お久しぶりです」
「もう、固くなっちゃってチカちゃんはー」
「その、すみません」
「いいのいいの、そこもまたチカちゃんのいいところだから!」
「それならよかったです、アンノ」
「うんー」
久しぶりに会う彼女に、チカはなんとなくどういう人なのかを理解する。
他の人からは塔として認識されており、チカにしか中を見ることができなかったのもそれだろう。
「それでー、チカちゃんはどうしてここに来たのー?」
「迷宮がなくなり、異変がないかを確かめるために来ました」
「それだけー?」
「どういう意味ですか?」
「何かあるかなーって」
アンノは口元を笑わせてそう言葉にする。
全てわかっているということなのだろうか?
チカは、観念してもう一つのことも話す。
「それに、あたしに宿った力についても……」
「なるほどねー、だったら場所を移そっかー」
「え?はい」
チカがわからないでいると、一瞬眩しくなると、すぐに違う景色の場所へとやってきていた。
転移などの魔法だということはすぐに気づく。
そしてアンノも、自分の手を見る。
(ちゃんと、対象を指定する魔法なら、チカちゃんにも効くってことかー、なるほどね)
自分の存在を不特定多数に見えなくする魔法は、実際には魔力で誤魔化していた。
だからこそ、存在しないはずの魔力を持たないチカには効かないということだったが、今はそれよりもさらに気になることがあった。
「それじゃあ、チカちゃんの力をまずは見せてもらおうかなー」
「はい」
アンノに言われたチカは、集中する。
手に入れた力を発動するために、頭の中で考えると、体に力が出てくる。
輝く力を見た瞬間に、アンノはすぐに声を荒げた。
「ダメー!」
「アンノ?」
「チカちゃん、その力は何かわかってるの?」
必死にチカの手に自分の手を伸ばそうとしているが、アンノには、チカの力がなんなのかがわかる目をもっているからこそ、伸ばした手を躊躇してしまう。
他の人にはわからなかったはずの力も、アンノの前では無意味でしたか……
チカは、アンノの動きで自分の力がどういうものなのかをちゃんと認識した。
「はい、わかっています」
「それが、手に入れた力というものなの?」
「はい。あたしには必要なことなのです」
「久しぶりに会ったと思ったら、こういうことになってるなんて」
「すみません」
「いいよー。みんなには言えなかったことだよね」
「はい。アンノは気づいてしまいましたが」
「こう見えても、いろんな人を見てきているからねー。人の変化には気づかないといけないのー」
そうは言ったものの、アンノが視えているのは表情ではない。
相手の魔力の揺らぎというものだ。
チカでいえば、魔力が人の形をして避けていることから、そこにいることがわかる。
そして、今回はさらにその範囲が広がっている。
まるで、何かがさらに魔力を避けているように……
よって考えられるものというのは、新しい強い力を手に入れたと考えるのは自然だが、それと同時にあるものが視えてしまった。
止まらないというのであれば、アンノには止めることはできない。
それは最初からわかっていることだ。
だからこそ、チカの疑問に答えることにした。
「迷宮のことだよねー」
「はい」
「迷宮をなくすと、変化はあるよ。チカちゃんはそれを見てきたんじゃないの?」
「少しだけ……魔物がいないということはわかりましたが……」
「うん、あってるよー。そして、その先に考えてることもねー」
「そうですか……」
アンノがあっているというのであれば間違いはないだろう。
ということは、迷宮がなくなったところでは魔力というものが少なくなる、またはなくなる。
そう考えるのが自然だろう。
魔物がいなくなる、普通であればいいことのはずだが、チカは妙な胸騒ぎを感じる。
でも、それがなんなのかはうまく説明ができない。
アンノは、そんなチカを見ながらも、これから起こるであろうことを考える。
何があったところで、最後の出来事というものは何も変わらないことを知っているのだから……
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