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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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82/122

82、異変の始まり

 中央都市までは、二日ほどかかる。

 面倒だが、前の街に近い場所を少し避けながら行くべきと思った結果だった。


「何かやっぱり違う気がする」

「そうだよな」

「警戒はしたほうがいい」


 気を効かせて前にいた三人は、その異変に気付いていた。

 魔物が少ないのだ。

 一応馬車で通れる道ではあるが、街に向かうための道である街道ではないので、普通であれば魔物がいるはずだ。

 だが、魔物にこれまで一度も出会っていない。

 それだけで違和感というものを誰もが感じてしまう。

 魔物というものは、溢れ出た魔力によって生まれるものだということを誰もが知っているからだ。

 確かに迷宮という、魔力を垂れ流しているような存在がなくなれば、魔物の数が少なくなるというのも理解はできたが、それでも道にも一体もいないというのはおかしい。


「一応確認にはなるが、雷獣と一緒のときにいた魔物がここにいる全部ってわけじゃないよな?」

「そんなわけないんじゃない?」

「わからないだろ、カイの魔法であれを使ってみてくれるか?」

「探索魔法か?」

「それだ」


 確かにマモルが言うように探索魔法は使うことができる。

 でも、それには条件がある。

 前までのような詠唱する魔法ではないので、魔力の扱いというものが難しいということだ。

 カイの魔法は確かに強くなったが、それ相応のタイミングというものが存在する。

 今回のように何気なく扱えない……

(できないって、本当にいいのか?)

 自分にできないと言い聞かせそうになったところで、カイは思い直す。

 それでいいのかと……

 確かに集中しないと使えないような魔法ではあるが、これまでと同じようにしていれば、自分自身の成長を止めてしまうのではないのか?


(体の感覚と考えていることを完全に分ける。それさえできれば自然に魔法は使えるはず)

 カイはそう考える。

 見本とするのは、クロだ。

 大魔法使いと自称するだけあって、魔法を使うときは無意識といっていいほどの腕前だ。

 あれを真似することができるはずだ。


 感覚を別々に完全に切り分けて考える。

 魔力と体の動きは完全に別だ。

 ……

(うまくいかな?)

 考えられる方法で魔法を使おうとしたが、何も起きない。


 うまくいかないということは魔法が発動する条件としてうまくいっていないということだ。

 だったら、次は違うやり方だ。

 魔法というのは発動するのに条件があることはわかっている。

 そもそも詠唱をしていたとき、発動する場所は決めているが、その他の魔法がどんなものかというものかというのは詠唱によって決めている。

(魔法を発動する場所を決めなければどうだ?)

 カイはすぐにそう考える。

 今回使う魔法は、サーチ。

 辺りに何があるのかを探る魔法なので、別にどこからどこまでというのを決めなくても使える可能性は高い。

 だったら、考えるのはどんな魔法にするのかだけだ。

 一定の魔力が届く範囲を探るというのを、この魔法を使うときにできればいい。


「よし……」


(いけ!)

 魔力は魔法に変わる。

 今度はしっかりと発動した。

 魔力の波動(はどう)といえばいいのか、それは広がっていく。


「これって」

「いいじゃねえか」


 隣にいたキキルとマモルも魔法を感じとると驚く。

 それほどまでに、魔法を使うための魔力量が多かったからだ。

 そう、完全に魔法を発動するための魔力量を間違えたのだが、カイには、そんなことよりもできたということに確かな手ごたえを感じた。


「わかったぞ、周りの状況」

「すごいじゃん」

「だよな」


 素直に褒める二人に対して、カイは頭を振る。

 確かに成功はしたが、これは成功したのであって使えるとは言い難いからだ。

 そして、魔法によって辺りを確認したカイはそれを伝える。


「先に言っておく。何もいない」

「え?」

「本当なのか?」

「さすがに僕はそんなことで嘘は言わない」

「そうよね」


 そう、カイが周りを確認した結果は何もないだった。

 通常魔物という存在はどこにでもいる。

 だって、世界は魔力で満ちているからだ。

 魔力で満ちているからこそ、魔力によって魔物が生まれる。

 ここにいる誰もがそれをわかっていたからこそ、今のところ周りに全く魔物がいないということは魔力がなくなっているのではという仮説を立てることができてしまうからだ。


「嫌な予感がするんだけど」

「同じく」

「急ぐぞ」


 カイはさらに馬車を素早く動かす。

 迷宮がなくなって何かが起き始めている。

 馬車の荷台で話を聞いていたチカとスイもそれを感じていた。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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