81、次へ
一人ずつ帰ってくると、互いに顔を見合わせる。
考えることは皆同じということだ。
少しして、チカがご飯を作り、起きていないスイを除く全員が食べ始める。
「次は、どうするの?」
「迷宮に行くべきとは、いえなくなってきました」
「本当にね」
「でも、迷宮以外に行く場所はあんのか?」
「そう言われたら、わかんないけど」
「何もしないというわけにはいかない、僕たちは……」
「そんなことは、全員がわかってんだ」
カイの言葉に、思わずマモルがそう反論する。
何か行動をしなくてはいけない。
それはわかっているが、不安もあったからだ。
これまでは普通に戦えていたはずの人造物相手に、何故か戦えなくなっていた。
確かに人造物自体は強い。
そんなことは全員わかっていたが、それだけではない。
自分たちが成長していないということがわかってしまったからだ。
それも含めて、何かをしなくてはいけないと全員の考えは一緒ではあるが、その何かというのがわからない。
「ギルド……」
「チカ?」
「ギルドに一度行きませんか?」
「どうして?」
「はい、あたしたちはこれまで迷宮をクリアしてきました。これによって迷宮のいくつかは消えていますが、そのことについて、ギルドに話を聞くことはありませんでした」
「た、確かに……」
モリリンがいた、帰らずの森であれば誰も気づくことはなかったとはいえ、迷宮の近くに街ができるということもあり、迷宮がなくなれば街もパニックになっていることだろう。
とはいえ、あの街には戻りたくはないと誰もが考えている。
「中央都市はどうですか?」
「そこが一番いっか」
「俺たちも特に異論はないな」
「では、行先が決定したし行くぞ」
馬車の運転はいつものようにカイが行う。
チカとスイだけが荷台の後ろに残ると三人は前に行く。
スイが起きたときに気を使ってくれているということなのだろう。
チカは眠っているスイの頭をゆっくりと撫でるとスイはどこかくすぐったそうにしていた。
※
「お姉様!」
石化した姉を見て、スイは大きな声を上げる。
だが、姉の石化は解けない。
そして気づけば自分の中にあった魔力が暴走する。
(ダメです、ダメー)
大きな声で念じるが止まることはない。
仕方がなかった。
溢れ出した魔力が体を支配して、目的のためにだけ魔法を使う。
感情によって魔法を使う。
ダメとわかってはいるが、抑えることはできなかった。
それほどまでにスイの中でチカという存在が大きかったからだ。
だからこそ、スイの暴走というのは止まらなかった。
こんなことをした相手に、同じように苦しみを与えるために……
「はあ……スイは、ダメです」
ゆっくりと目を覚ましたスイは思わずそう口にするが、それはチカに聞かれていた。
「ダメなのは、あたしだと思う」
「お姉様は、そんなことはありませんです」
「あると思うよ、絶対」
「お姉様に悪いところがあると言うやつがいたら、スイがボコボコにしてやるです」
「だったら、それはあたしだって同じだよ」
チカはスイに笑いかける。
スイはそれを見て泣きそうになる、自分の不甲斐なさに……
でも、泣くわけにはいかなかった。
「お姉様、今度こそは、このスイが守ってみせるです」
「お互いにだよ」
「は、はいです」
スイは優しく笑うチカに誓いを立てる。
それくらいには、チカに対してスイは強い思いを感じていた。
そんなスイをチカはゆっくりと抱きしめる。
(ふおおおおお!お姉様、いい匂いです)
思わずスイの頭の中にはそんな言葉が響き渡るが、何かを言うことはない。
ゆっくりと抱き返す。
そして、自分の中の魔力をドクンと感じたのだった。
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