80、目指す先
迷宮が崩れて、寝息を立てている二人を含めた五人は馬車をめがけて歩いていた。
「はあ……意外と盾も役に立つのね」
「おま、そういう言い方はよくないだろ」
盾も役に立つ。
そんなことを言われているのには理由がある。
マモルの盾に二人を寝かせているからだ。
そんな五人がいる場所というのは砂だけの地形だった。
辺り一帯を砂が支配しているそこは、人も魔物もあまり気配がない。
今がどの辺りなのかわからないくらいには見えている景色がなかなか変わらないというのも、ここが異質な理由だろう。
「こんな場所があったなんてね」
「ああ、驚きだな」
実際に迷宮に向かうとき、通常であればこの砂地帯が入り口になっているはずだった。
だが、キキルのおかげというべきか、それとも大魔法使いの気まぐれというべきかはわからないが、違う入り口というものが設置されており、それを使うことで奥までいくことができた。
「道に迷うことはねえのか?」
「大丈夫でしょ」
キキルは、先頭を歩くカイを見ながらそう言葉にする。
カイは迷宮が消えた後、魔法によって馬車の場所を突き止めるとそれに向かって歩きだした。
カイの魔法については、二人ともが思っているよりも優秀なのはわかっている。
だからこそ、信頼はしているのだが、問題はそこではない。
迷宮から脱出した後、カイは必要最低限の内容の会話をするだけで、それ以上の何かを口にすることはなかったからだ。
(くそ……)
カイの頭の中に巡る考えは、ずっと同じだった。
不甲斐ない自分自身へのイラつきだ。
何もできなかった。
もう少し、カイは何かができると思っていたのにだ……
チカたちとここまで一緒にいたからこそ、余計にそう考える。
カイ自身できることは多い。
でも、足りない。
もっと何かができるはずなんだと、カイはさらに思考を巡らせた。
魔物が出ないからこそペースがあがった三人は普通の人よりもかなり速いスピードで進み、休みもなく歩き続けると夜深くには馬車まで辿り着いた。
その頃には何も話すことはなく、三人も眠りについた。
「寝ていますね」
朝、日が昇る前に、チカは目を覚ます。
すぐに体を鍛えるためにみんなから離れると体を鍛えていく。
あの力がなんなのか、それはわかっているつもりだ。
自分の意志を通すための力。
そして、チカの意志を通すために必要だったのが今回のものだ。
だが、魔力がないチカ自身がこれほどの力を引き出したとき、わかっていた。
副作用のようなものがあるということを……
「ですが、あたしのやりたいことはできています」
チカはそう言葉にして拳を突き出すのだった。
※
「やっぱり、もう行ってる」
この場にいないチカに、キキルは思わずそう口にする。
キキルも同じように剣を持つとチカとは別の場所へと離れる。
その後を追いかけるものもいた。
「おい、俺もいいか?」
「何よ、マモル。寝ててもいいのよ」
「何を言ってんだ?俺たちは今のままなら、これからは本当にただの足手まといだからな」
「そうね」
マモルが言っていることはわかっているつもりだ。
キキルだって馬車まで歩いていたときに、カイのように考えないわけではなかった。
だけど、考えたところでどうしようもないことくらいわかっていた。
圧倒的に力が足りていないからだ。
今のままではだ。
確かに少し、自分自身の剣というものはわかってきていた。
だが、それでも通用はしない。
シシルを見て余計にそう感じていたのだ。足りないことはわかっているからこそ、その弱さから、もう逃げることはしたくなかった。
「じゃあ、やるわよ」
「おう」
二人は互いの武器をぶつけ合う。
※
カイは起きると自分とスイ以外が近くにいないことを魔法で確認する。
本当の魔法。
そんな言葉をクロが言ってはいたが、実際に使えなければ意味はないことくらいわかっていた。
本当に何もできなかった。
元々、カイは自分では気にしてはないが、才能はあった。
生き残るためとはいえ、多くの魔法を一度でできるようになったのが、いい例だろう。
何もできない、無力だと感じたことなど、一度や二度ではないが、だからこそ新しい力を身につけてきたはずだ。
でもわかった。
このままいけば、その力というものは全て無駄になってしまう。
「僕だって力がほしいのに、これまでやってきたことは無駄だったのか?」
カイはそう言葉にする。
実際には、チカが急激に力をつけているだけではあるが、そのチカの隣に立つためには、確かにもっと力が必要だ。
「僕はどうしたら強くなれる?役に立てる?」
言葉にして考えても、その何かはわからない。
でも、置いていかれるわけにはいかない。
誰もが違う場所ではあったが目指すべきは同じだった。
チカという存在が、全員の目指すべき場所を決めたのはいうまでもなかった。
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