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8、互いの長所

 キキルとチカは何も言わなくても、先ほどの攻撃からお互いにやるべきことをわかっていた。

 チカがスライムを引きつけて、その間に近づいたキキルが剣技によって赤いスライムを斬るしかない。

 これまでのように個々で倒すなんてことをやれる感じではないことはわかっていた。


 これまでの戦いから、やるべきことというのはお互いにわかっていた。

 会話をするまでもなく、すぐに赤いスライムは攻撃を再開してくる。 

 チカが最初に遠距離攻撃である伸ばしてきた触手を捌く。

 キキルには強い剣技を使ってもらうためにも、しっかりと魔力を高めておいてもらう必要がある。

 それだけのことをしないことには倒せるかどうか、わからないことをわかっていた。


 やるべきことは決まっているため、二人はスライムへと向かっていく。

 チカとキキルが二人で重なることで向けられる攻撃は一直線に二人へと向かっていく。


「はああああああ!」


 チカは拳を握る力をさらに強くすると、攻撃に対してその拳を当てることによって、なんとか防ぐ。

 だけど相手は魔物であり、攻撃は魔力を帯びていることからチカでは、完全に防ぐことはできていないため、その手からは血が流れる。

 だけど、止まることはできない。

 それを見た後ろにいたキキルが悲痛な声をあげる。


「チ、チカ!」

「大丈夫です!」


 心配そうな言葉もチカは一蹴する。

 絶対に大丈夫だと声を張り上げる。

 実際にチカは大丈夫だった。

 これまでは、キキルのおかげで体に怪我をしていなかっただけで、チカ自身は怪我くらいは覚悟して冒険者をやっていたからだ。


 体を鍛える前には確かに思うところはあったが、チカ自身このままではいけないという思いが強かった。

 魔法を使えないことで、家でもあまり相手にされることがないことが幸いして、これまでの修行で体に痣ができていても服で隠すことでバレることさえもなかった。

 とはいえ、体に痛みがあれば動きでバレる可能性もあったが、それも我慢することによって同じ動きができる体になっていった。


 チカは体に傷ができて痛くなっても、体の動きは変わることは絶対にない。

 そうやって鍛えてきたのだから……


「はああああああ!」


 触手はさらに向かってくるが、チカはそれをさらに拳で弾く。

 赤いスライムの近くに来ることで、触手の勢いというのは増していく。

 だからこそ、後ろにいたキキルは赤いスライムからチカを守ろうと動こうとしたが、チカは再度口にする。


「大丈夫!大丈夫ですから!」


 チカのその言葉は、キキルのほうを向いて言った言葉ではなかったが、チカならなんとかしてくれるということを感じた。

(うちがチカを選んだんだから、任せてって言ったんだから、任せないと)

 キキルはチカのことを信じて魔力を高める。


 チカは任せられたことを背中に感じる。

 一人で戦っていたときとは違う、力がどこか自然と体から湧き出てきているように感じるほどだった。

 そのままの勢いで、チカは全ての攻撃を捌き終える。

 あと一歩で攻撃は届くというタイミングで赤いスライムは全身から棘を出す。

 このタイミングを待っていた。


「キキル!」

「任せなさい!剣技”絶斬(ぜつざん)”」


 その手に握られているのは武器の一つである、刀と呼ばれる武器だった。

 キキルの中でも最強の攻撃力をもつ魔力を纏った剣技を放つ。

 その剣技は棘ごと赤いスライムを斬ったのだった。


 さすがはキキルですね。

 自分にできないことを簡単にやってのける。

 そう思いながらもさらに返す刀でキキルはコアを破壊したのだった。


「さすがですね」

「ううん、チカのおかげだよって、チカ!」

 

 キキルはチカの手を見る。

 その手は赤いスライムからの攻撃によって血だらけだった。


「はい?」

「手!手すごいよ!」

「あ、えっとそうだね」


 達成できたことによって、アドレナリンが出ているからか、痛みに関してはあまり感じていなかった。

 確かに両手は血に濡れているけれど、鍛えているからこそ、大丈夫だという確信もあった。


「早く戻らないと」

「確かにそうですね。でしたら、用事をすぐに済ませましょうか」

「そ、そうなんだけど」


 キキルはチカを心配するが、当の本人であるチカはその怪我をあまり気にしていない。

 周りから見れば、冒険者あるあるな光景なのかもしれない。

 キキルが騒ぐのを聞きながらも、チカは倒された赤いスライムに近寄る。

 そこに落ちていたのは、いつもは落ちていない宝石のような玉だった。


「なんでしょうか?」

「えーっと、なんだろうね?これ以外はないよね」

「そうみたいですね」

「だったら、戻ろう。すぐに治療しよう」

「わかりましたよ、キキル」


 心配するキキルにそう言われて、チカは苦笑いを返しながらも嬉しく思う。

 これまでのこととは違い、少しはキキルの力になれたということを感じたからだった。

 そうして二人は、部屋を後にしようとしたときだった。

 急に景色が変わったのは……

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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