78、苦戦と焦り
いくつかの攻撃の応酬が行われていた。
スフィンクスは、圧倒的な物量の石化の魔法で、仮面の男に対して何もさせない。
そして、シシルとスイの戦いはというと、スイが使う魔法にシシルがなんとか対応している状態だった。
それは、暴走したスイの魔法がすごいからだ。
スイはシシルを狙うわけではなく、スフィンクスを狙いたい。
よって、シシルを翻弄するかのようにスイは魔法を使っている。
それは、自分の姿を水に反射させることで、どこにいるのかわからなくさせるというものだ。
「ちょっとー、かなり厄介なんだけど」
「すまないが、頑張ってくれ」
「えー、そっちがさあ、頑張って倒すんじゃなかったのさ」
「何もそんなことは言っていない。なんとかしないといけないって言っていただけだ」
「ちょっとー、じゃあ難しいってことじゃん」
シシルがそう文句を口にする。
だが、仕方ないことだった。
スフィンクス、人造物は本来はここまで厄介なのだからだ。
いつもであれば、人造物へと先に辿り着き、仮面の男がある能力を使って人造物を制御しながら戦わせているからだ。
前回の雷獣であっても、制御途中の雷獣を無理やり大魔法使いが解放したからこそ予想外にも他の魔物を従えるという行動をとったが、攻撃としては強いものでなく。
言ってしまえば、スフィンクスの石化の魔法みたいな本来は絶対に当たってはいけないようなものもある。
そして、さらに攻撃の頻度も普通ではない。
(どうにかするには、やはりこちらから仕掛けないとダメか)
そうなると仮面の男が考えることはそれだった。攻撃の合間を縫って何か行動を起こすしかないと……
そうなると必要になってくるのはキキルたちだったが、スフィンクスと仮面の男の戦いよりも、気になるのはスイとシシルとの戦いだった。
仕方ないことだ。
仲間であった一人が、魔力を暴走させているのだからだ。
気になってしまうというのも……
でも、そんなときだった。
スイには及ばないが強い魔力を感じた。
それはカイによるものだということは次の魔法ですぐにわかる。
「やるう」
シシルのその言葉の通り、カイが作り出した壁はスイを囲むようにして作り出される。
魔力を練ったおかげか、スイが作り出した魔法ですら、簡単には破壊できない。
「いったんこれで!」
すぐにシシルは標的を変える。
「こっちに攻撃」
そんな言葉とともに赤く光った大剣は、スフィンクスへと吸い込まれていく。
ザシュと音が聞こえ、さすがのスフィンクスもその体の一部が大剣の高温によって溶ける。
「ゴオ!」
さすがにダメージが入ったのか、激しい声を上げると、シシルに向かって石化魔法を放つ。
「ヤバ!」
気付いたときには逃げていたシシルに向かっていたそれは、仮面の男が作り出した水滴を間に割り込ませることによって防ぐ。
「さっすが!」
「油断をするな」
「はーい。でも、あいつやるねー」
「みたいだな」
スイという不安要素が一時的に消えた。
これによって、二人でスフィンクスと戦うことができるのだが……
「ねえ、まじで言ってる?」
「本気ということだろうな」
シシルたちがそう言葉にするのも仕方ないことだった。
これまでは、大きなスフィンクスが、その姿を変えて攻撃をしてきたが、まさかの三つになったからだ。
見た目は大きいときと同じであるが、だからこそ厄介だ。
石化の魔法に、砂を飛ばしてくる手、棘のように攻撃してくる大きな剣。
一つ一つが強力なのに、それを全て使ってくるなどというのは、さすがは本来の人造物だということだろう。
だが、シシルたちは苦戦をしてはいけなかった。
それは、スイの暴走が止まっていないからだ。
「時間はかけられない。いくぞ」
「わかってるって」
仮面の男たちは三体のスフィンクスを相手を始めるのだった。
そんな中で、スイを閉じ込めた三人も行動を行っていた。
どうにかしてスイを止めるために、いくつかの作戦を考えていたからだ。
「いいよ」
「こっちもだ」
「よし、頼む」
最初に作りだしたのは、完全にスイを囲む壁を作りだす魔法であったが、強度的にあのスフィンクスを倒すまでに時間稼ぎができるのかわからなかったからだ。
だからこそ、しっかりとフォーメーションを組んだ。
三人で取り囲むようにして、スイを抑えることにした。
シシルが戦っていたのを見ていたからこそ、三人でかかればなんとかなってはいた。
だけど……
いや、だからこそダメだった。
本当はスイを無力化するはずだった。
だけどできず、さらには時間だけがかかっている。
「ちくしょお!」
「強いな」
「どうして、うちにはできないのよ!」
三人の悲痛な声が聞こえ、さらにはスフィンクスのほうも焦りの声が聞こえる。
「もうキツイのー」
「わかっている……」
だからこそ、誰かは考えただろう。
このままスイとスフィンクスを戦わせればと……
だけど、そんなときにこの場所で揺らぎを感じたと思ったときだった。
「お姉……様……」
「迷惑をかけてごめんなさい、スイ」
いつの間にかそこにいたチカが、スイをゆっくりと抱きしめるようにして、暴走を止めていた。
金色に輝く魔力を体に纏い、チカはゆっくりとスフィンクスへと向かっていくのだった。
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