76、暴走と仮面の男女
もし、チカがいるのが地面の上であれば、攻撃に気付くことはなかった。
でも、地面にいれば他の選択肢があっただろう。
空中にいたおかげで気づくことはできたが、攻撃を防ぐには体を投げだすしかなかった。
「あ……ご……」
チカは何かを言いかけるが、それは石化によって何かを話せなくなってしまう。
そのまま動くことはなくなってしまう。
チカが石化なってしまってすぐに水は収まっていく。
そして四人は目にする。
「え」「なんだ」「おい……」「いやああああああ」
三人は驚きながらもまだ冷静ではいた。
石化をしたとしても、魔法であるのであれば、それは魔法で治すことも可能だと考えていたからだ。
だが、チカを心の底から慕っていたスイだけは違っていた。
絶叫とともに、体から魔力が溢れ出す。
それはまるで、閉じ込められていたものが溢れるかのようだ。
「おい!」
カイが慌てて止めようとするが、スイは止まることはない。
「あああああああ!お姉様、お姉様!」
スイの魔力によって、強制的に水があふれ出す。
本当の魔法と呼んでいたものに近いかもしれないが、それよりも圧倒的な勢いだ。
魔力の暴力によって生み出されたスイが一つのことだけを成し遂げるために作り出したものだ。
圧倒的な水は、近くにいたカイたちをも巻き込もうとする勢いだ。
「俺の後ろにこい」
「しょうがないわね」
「僕はいかない……」
「おい、絶対に無茶だ」
「わからないだろ!それに、僕がチカを回復させられることができるかもしれない」
この水の魔法ではさすがに一度盾でやり過ごすしかないと考えたが、カイは反対すると思いついたようにそう言った。
そして、それはキキルとマモルの二人にも、確かにと思わせる内容だ。
実際に石化が解けるかはわからないが、何もしないわけにもいかないからだ。
さすがにこのスイの暴走をチカなしでは止められないということは三人もわかっていた。
だが、ここには人造物であるスフィンクスもいる。
よって、当たり前だがそのスフィンクスから繰り出される攻撃もあるだろう。
二つの攻撃を確実に避けるか防ぎながら、石化したチカの元へ行かないといけないが、それよりもスイの勢いがある。
「あああああ!」
「ゴオ……」
大きな水の球が出来上がる。
スフィンクスに向けて発射されようとしている。
だが、スフィンクスもそれを黙って受けるわけではない。
いつの間にか、姿は変化しており砂で作りあげた大剣を杖のように持っており、それがスイが作り出した水の球とぶつかる。
どれだけ分厚い大剣なのだろうか、ぶつかったところでそれはびくともしない。
そして、攻撃を防いだスフィンクスは大剣から今度は攻撃とばかりに砂を棘のように伸ばす。
(あれは、スライムが使っていた)
キキルがそう感じるのも無理はなく、何かを棘のようにして攻撃するというのを、見たことがあったからだ。
「あああああ!」
でも、スイもそんな攻撃はきかないとばかりに、砂の棘を同じく水の壁とその壁から作りだした同じような水の棘によって応戦する。
普通であれば人造物であるスフィンクスという存在と魔法の攻撃をやりあうなんてことは、無理だ。
無理なはずなのに、暴走したスイは互角に戦っている。
まるで怪物同士の戦いだった。
「どうすんのよ!」
「わかんねえよ」
「くそ、なんとかできないのか?」
三人も、このレベルの戦いになるとさすがに入っていくことも難しい。
それでも、なんとかしないといけないことは三人もわかっているが、入れない。
じれったいタイミングで、二つの人影がスフィンクスとスイの間に割り込んだ。
「やああああ!」
「はあ!」
大振りの赤く光った大剣を握りしめた少し赤が入った茶色の髪の女性と、薄い水色の髪と同じく水色の木の棒を握っている男性の二人だ。
(あれは、シシル?どうしてここに?)
キキルは見た目だけで見知った相手ではないのかということがわかってしまうが、その二人は赤と青の仮面のようなもので顔を隠しているのは、正体を隠しているつもりなのだろう。
とはいえ、二人の実力というものは圧倒的だ。
割り込んだ二人は、そのままスフィンクスとスイの攻撃を完全に破壊する。
「あああああ!」
スイは再度魔法を作りだす。
割り込んできたシシルに攻撃をするものだと誰もが考えていたがそうではなかった。
止められても攻撃する相手というのは間違えないと言わんばかりにスイの攻撃はスフィンクスを狙う。
「まじー、すごい執念ってやつー」
それでも、シシルは慌てることはなく、その攻撃を赤い刀身の大剣でまるで水を蒸発させるように斬っていく。
そして、スフィンクスのほうはというと、割り込んできた相手である男に向けてこちらは攻撃をする。
元々目の前の脅威に向けて攻撃をするというのが、封印を解かれてしまった人造物だ。
よって、今まさに攻撃を防ぎ切った男に興味は映っているということなのだろう。
スフィンクスはすぐに姿を変える。
動物のように四足歩行に代わると、最初と同じように石化の魔法を放つ。
「あぶねえ!」
思わずマモルがそう言葉にするが、男はというと立ち止まって木の棒を地面にトンとつけるだけだ。
何が起こったのか、普通には見えなかったが、石化の魔法が消えてしまったのを見るとそれがなんなのかを少し理解する。
木の棒を地面につけて行ったのは、地面に微量に含まれている水を、さらに小さくして空中に漂わせるというものだった。
本当に小さな水滴となった水は、石化の魔法で固まってはしまうものの、防げてはいる。
「すげえ……」
思わずマモルがそう言葉にしてしまうほどだった。
だが、スフィンクスの攻撃ということは一人に狙いを絞ったからなのか止まることはない。
さすがに防ぐだけでいっぱいいっぱいなのか?
誰もがそう考えていたが、次の瞬間にはスフィンクスの体が真っ二つに切れていた。
スイが得意としている高圧の水を剣のようにする魔法を地面から放つことで真っ二つにしたということに気付いたのは、スフィンクスの切れた体の上に虹がかかっていたからだった。
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