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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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73/122

73、過去とわからない力

 人の姿をした魔物がいた。

 そして、子供もいた。

 二つといっていいのか、二人といっていいのか、もしくは二匹と言っていいのかはわからないが、同じ場所にいた。

 何をするのかは、拘束されていたときには知っていた。

 お互いの魔力を合わせるためだ。

 そんなことが可能なのか?


 普通の人であれば、そう考えるだろう。

 でも、やはり一部のものたちというのは強欲だ。

 できないといわれることであっても、探究心によって可能へと近づけてしまうのだ。


 全身に痛みが走る。

 悲鳴が響く。

 それは果たして自分から出したものなのか、それとも誰かが出したものなのか……


 わからないが、二つの存在はリンクした。

 そして波長を合わせた二つの存在は混合する。

 それはまさしく融合だった。

 魔物として魔力を蓄えるものと、魔力を扱うのに長けている人。

 そんな二つが交わったとき、新しい存在が生まれた。


「成功だ!」


 作り出した本人がそう叫ぶが、次には体と頭が離れていた。

 すぐに作り出した存在によって殺されてしまったからだ。

 だが、暴走というのはそれで止まらない。

 混ざり合うことで増えてしまった魔力というものが、興奮が収まる規模になるまで辺り一帯を魔法で吹き飛ばしたからだ。


 そして、それが終わると、存在は二つに分かれる。

 まるで力を失ったかのようだ。

 魔力が枯渇した片方は、ゼエゼエと息を荒らげ、もう片方も無理やりに体を動かしたように節々が痛く、病気なのではと思うほどだ。


 そして気づく。

 人ならざるものと魔物ならざるもの……

 お互いにどっちつかずな存在になってしまっていることに……


「だから、言ってただろう?自分たちには名前がない。それはそうだ、作られた存在なんだからな」

「そうですか……」

「どうだ?わかったなら関わるな、去れ」


 言いたいことは言った。

 わかったなら去れと彼女は言っているのだろう。

 そう言われて、チカは去るわけがなかった。


「なんで動こうとしない?」

「あたしは変わっていると思いませんか?」

「何を言ってる?」


 彼女はそう言って、チカのことをしっかりと見る。


「なんだその髪の色は……」

「今気づきましたか?」

「違和感がなさすぎた。白髪なんてものを初めて知ったからな」

「そうですか……これは、呪われた髪だと言われています」

「呪われた?」

「はい。あたしを見て、何か違いがありませんか?」


 再度彼女はじっとチカのことを見る。

 先ほど言ってたことである、彼女が魔物と人とが混同しているのであれば、チカに魔力がないことはわかるだろうからだ。


「魔力がないのか?」

「わかりますか?」

「どういうことだ?この世界に生きるものであれば、どんなものであっても魔力を持っている。そのはずでは?」

「だから、あたしは呪われた存在だと言うのです」

「ほお……だから一緒にいれるはずだと?」

「そうは言っていません。あたしは魔力がありません。なので、こんな場所でこんな時間に一人で放りだすなんて無責任だと思いませんか?」

「あー、そういうことを言ってくる感じなのかよ……」

「仕方ありません。そもそもここへは迷ってきたのですから」

「ちっ……確かにそんなことを言ってたな」


 彼女のその言葉で、チカと少し前に話していたときのことを知っているということなのだろう。

 それを聞いて彼女はしょうがないといわんばかりだ。


「そこまで自分は鬼じゃない。今日だけはいていい」

「それならよかったです」


 こうして二人で一緒にいたのだが、彼女は違和感に包まれる。

(魔力が落ち着いている?それに、融合から解放されない?)

 それは驚きだった。

 普通であれば、魔力を使い切れば一人ではなく二人になるはずだ。

 ならないということは、体の中で何かが起こっているということだ。

 でも、それがなんなのかが彼女にはわからない。


「なあ……」

「なんですか?」

「この体に何かしたか?」

「体に何か?あたしは別に何もしていませんが……」


 彼女が言うことに対して、チカはよくわからなかった。

 やったことといえば、頭を撫でたくらいだろう。

 とはいえ、そんなことで何かが変わるというのだろうか?

 いや、変わらないだろう。

 そう考えて、チカも悩む。


「あたしは何かをしましたか?」

「だからそれを聞いてるんだって!」

「そうですよね。でも、あたしにはわからないのは本当ですから」

「だよね」


 こうして二人と一人の会話は終わる。

 そして、時間がたち朝を迎えるのだが、そのとき彼女の姿はないのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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