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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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71/122

71、出会いたかった相手

 少し前。

 チカは歩いていた。

 体が徐々に回復していくのを感じていたチカは、少しでも動きたくなっていた。

 というのも、これまで全力で体を動かしていた時間が長かったからだ。

 そういうこともあって、体が動くようになるとジッとしていられなかったのだ。

 でも、ここでチカのよくないことが起こる。


「えっと、ここはどこですか?」


 おかしい、迷いましたか?

 チカはおやっと周りを見渡してみるが、どこかわからない。

 そもそも街へ向かって歩いていたはずが、街外れにいる。

 当たり前だ。

 どこか知らない場所なのだからだ。

 これまでは、キキルたちと一緒にいることが多かったこともあって、考えないようにしていたが、チカは結構方向音痴(ほうこうおんち)なのかもしれなかった。

 実際に迷っているのだから、そうなのだろう。


「人の気配がありますね」


 そんなときに、周りにあるいくつかの小屋の一つに人がいるのを感じた。

 ほんの少しであったが物音がしていたからだ。

 人がいるのであれば、道を聞ける。

 そう考えたチカは早速話しかけようと近づくのだが、そんなときに人からの気配がいつもと違うことに気づく。


 なんですか、これは……

 気になったチカは気配を隠しながら近づくことにした。

 するとそこで見たのは言ってしまえば衝撃的(しょうげきてき)な光景だった。


 苦しむ子供にもう一人の子供が何かをしていたからだ。

 それが何なのかはチカにはわからなかったが何か力の流れというものが変わったことだけはわかった。

 それがどういう意味かわからないが、二人には同じように力が流れていて、片方の子供だけはバチバチと弾けているようだったものが落ち着いたということくらいだ。

 それが何を意味するのか、チカにはわからない。


 とはいえ声をかけないわけには迷子が解消されない。

 迷った結果チカの口から出た言葉というのは、先ほどの言葉になってしまった。

 でも、そんなチカに対して、子供は何か返事を返してはくれない。

 慌ててチカはさらに言う。


「えっと、ごめんなさい。少し道に迷ってしまいまして……」

「そう……だったら、この道を戻って右に曲がって、後は左に曲がって、もう一度右に曲がるといい」

「ありがとうございます」


 それだけを言ってチカはこの場所を去ろうとする。

 だけど、変わった存在を狙うものというのは、どこでも存在する。

 今回もそれがいた。


「魔物……」


 子供たちに引き寄せられたとでもいいのだろうか。

 魔物たちがやってきたのだ。

 とはいえ、やってきたのは弱いものが多い。

 体は重いがやれないことはない。


「ふう……やるしかないですね」


 チカは拳を握りしめる。

 だけど、そんなときだった

 後ろで力が溢れるのがわかる。


「これは……」


 そして後ろからすぐに魔力の弓矢が飛んでくると、魔物たちを貫いた。

 見たことがある光景に驚いていると、後ろに立っているのは、先ほどの子供ではなかった。

 どういうわけかわからないが、顔は確かに先ほどの子供に似ているが、女性特有の体の出っ張りがあり、さらには身長もチカよりも大きい。

 だというのに、感じるのは先ほどの子供と同じものだ。

 そこから考えられることは一つだったが、悩んでいる時間はなかった。

 というのも、彼女が荒い息をついていたからだ。


「はあ、はあ……ぜえ、ぐ、くう……」


 そして胸を抑えたと思うと、ゆっくりと前に倒れる。

 チカは慌てて近づくと、その体を抱きかかえた。


「熱い……」


 抱きかかえるとすぐに体の熱さが伝わってくる。


「魔力が暴走しているのですか、これは……」


 すぐに何が起こっているのかを理解する。

 チカ自身も同じことになったことがあるからこそ、症状がどんなものかはわかる。

 だけど、チカにはそれをどうにかできる何かというものはない。


「仕方ありませんか……」


 チカは彼女をゆっくりと小屋まで運んだ。

 予想通り、子供は一人もいない。

 子供が寝ていた簡素なベッドに寝かせると、チカは小屋の中をちゃんと見た。


「これは……」


 あるのは、草だけだ。

 それも見たことがあるものだった。


「どうしてこんなものを?」


 そう考えながら、チカは彼女のことを見ながらも、ゆっくりと近づき痛いのが少しでもなくなればと頭を撫でるのだった。


 ※


「ねえ、いないんだけど」

「お姉様どこです?お姉様!」

「まじかよ」

「落ち着きがねえよな」


 四人はチカが待っているであろう、馬車に帰ってきたのだが、いるであろう人がいない。

 荒らされているというわけでもないので、誰かがチカを連れていったというわけではないだろう。

 それに、ちょっとやそっとの相手ではチカであれば、なんなく返り討ちにしてしまうだろうからだ。


「ほんとに……どうしていつもこうなのよ!」


 キキルは思わず、そう言ってしまう。

 だが、今から探し始めても、チカが見つかるかはわからない。

 そして、時間も気づけば夕方になっているということもあり、ここから人を探すというのは難しいだろう。


「とりあえず、飯を作るか」

「どうしてです。お姉様を探しに行くです!」

「無理だ。それに、チカならご飯を作っていれば、匂いで場所がわかるかもしれないだろ?」

「言われてみれば、あり得るかもです」

「だろう」


 失礼になるかもしれないが、チカであればあり得るのではと考えていることだった。

 こうしてカイがご飯を作り始めたのだが、その作戦というのはうまくいかないのはいうまでもなかった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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