69、休息と情報収集
野営をして一晩たった。
寝ると少しは体が動くようになったチカを置いて、男二人、女性二人で街へとやってきた。
「別れる必要があったです?」
「仕方ないでしょ、うちらは少し有名になっちゃったんだから、四人でいたら、変に絡まれるかもしれないじゃん」
「言われたらそうです。でも、それならお姉様も一緒がよかったです」
「あのねえ。チカが来たら、目立って仕方ないのはスイだってわかってるでしょ?」
「ゔ……そう言われてしまうと何も言えないです。確かにお姉様は綺麗すぎるのです。目立ってしまうのも仕方ないということです」
「わかってくれた?だったら、うちらはやるべきことをやるわよ」
会話が終わって二人は目的である街の様子と買い物を開始することになっている。
街は昨日の騒ぎによってまだ少しざわめきがあるが、それでもちゃんとお店などは開いている。
むしろお店には一度来た時よりも活気がある。
無礼講というものなのかもしれないということを二人は感じた。
「盛り上がってるね」
「です。いいことではないです?」
「そうなんだけど、なんかねえ」
「もしや、これがスイたちがいたからこそ起きたんだから、何かほしいなーって」
「はあ……図々しいです。お姉様はそんなことは言わないです」
「ちょっとチカと一緒にしないでよ」
「です?まあ、お姉様と比べるとお姉様に失礼です」
「あんたねえ、そういうことを言うのは失礼じゃない?」
「そんなことないです。仕方ないことです」
スイが言っていることは確かにキキルのことを表しているのかもしれないが、キキルからすれば失礼だとしか思えなかった。
だが、実際にチカはスイの言う通り貴族の娘だ。
だから振る舞いからしてキキルとは違うのは確かなのだが、今は気にしていても仕方ない。
「何を買っていくわけ?」
「お姉様に頼まれた食材はこれです」
「ふーん……」
「ふーんって、お姉様かカイしか料理がちゃんと作れないです。よって、ちゃんと買って帰らないと怒られるです」
「わかってるけど」
スイが言った通り、五人のパーティーの中で料理をしているのはチカとカイだけだ。
いや、それ以外の人たちでも食事を作ることは可能ではあったが、美味しいというよりも食べられるものを作るだけで、美味しいというものではない。
保存が効くとされる食糧と合わせて料理を作ることができるのだから、できないものからすればさすがだろうと考えるのは仕方ないことだ。
「うちらは、この食材を使って何を作ってくれるのかを考えないといけないってことかなあ」
「です。でも、お姉様の料理は最高なのです。だから心配する必要はないです」
「そうね」
チカたちはこうして、買い物をするためにお金が入った財布を取り出したのだが、それを横からとろうとする手が伸びてくる。
キキルはさすがの反射神経でとろうとした手よりも速く袋を掴み取るとすぐに見た目を確認する。
顔を隠したような服を着ていることで、性別がわからない。
「誰?」
「ちっ……」
「キキル、大丈夫です?」
「うちは大丈夫。そんなことよりも、何を悪いことをしているのかな?」
キキルはそう聞くが、とろうとしたスイくらいの年齢の子供は、キキルたちを睨むだけでその場から逃げようとするが、先ほど失敗したということを何もわかっていない。
キキルのほうが動きが速いので、子供は服の裾を掴まれる。
「こら、逃げようとすんな」
「く、やめろ!」
「うん?あんた」
キキルが何かを言いかけたが、そのタイミングで子供が被っていた帽子がとれる。
「ちっ……」
再度子供は舌打ちをすると、一瞬で体をひねるとキキルの手から離れる。
動きはキキルも驚くものだったが、次の動きはさらに驚くものだ。
「”ブースト”」
小さくそんな言葉が聞こえたと思うと、子供は一瞬で加速する。
それまでの動きよりとは一線を画す速度にキキルとスイの二人は驚く。
「すご!」
「です」
それほどまでに子供の動きが速かったのだ。
とはいえ、二人は変わった出会いがありながらも、予定をしっかりとこなすのだった。
※
「どうして僕は男の二人で行かないといけないんだ?」
「それは俺のセリフだ。野郎と二人とか嫌だ」
カイとマモルはそんなことを言いながらも、目的である冒険者ギルドへと入ってきていた。
男二人ということもあって、怪しまれたりすることもない。
マモルもいつもは持っている目立つ盾はやめて剣を装備しているのも違和感をなくしている。
「情報収集って言っても、昨日の話ばっかりじゃねえか?」
「話を聞く限りなら、そうだな。もっと聞くか?」
「いや、いいんじゃないか?俺はさっさと帰りたい」
「面倒そうにするなよ。僕らの役割はもう一つあるだろ」
「ま、しょうがねえ、行くか」
次に向かわないといけない場所というのがあった。
それは武器などが作られている場所だ。
ここでどんな武器があるのかなどを見てほしいというものだ。
実際には、このパーティーで武器を使うのはキキルしか今のところいないから、キキルの我儘なのかもしれないが……
「何か珍しい武器があるかだよな」
「あとは、弓があるかと聞いてましたよ、僕は」
「ああ、言ってたな」
これは、あの時の魔物たちの大襲撃でかなり強いやつがいたからだ。
どうなるかはわからないが、もしかすれば出会えるかもしれないというものだ。
だが……
「いねえよなな」
マモルはそう言葉にする。
面倒なので別れて探索をしたのだ。
「おい!」
「どうした?」
そんなときに、カイの焦ったような声が聞こえる。
何が起こったのかと思い、マモルは慌てて店から飛び出したのだが、そこでは手を伸ばしているカイがいた。
「どうしたんだよ」
「いや、金が入った袋がとられたから魔法で捕らえたんだけど……」
「破壊されたのか?」
「そういうことだ」
「まじかよ。すげえやつがいたんだな」
「僕と同じくらいの年齢に見えたけどな」
「ほお、お前となあ」
「それで金は?」
「半分は無事だな」
「半分?」
「一応盗まれていいように半分にしていたからな」
「ほお、準備がいいな」
「結果的によかったってことだろ、そろそろ合流するだろ?」
「そうだな」
結局カイとマモルも特に何かを見つけることができないまま、合流地点へと向かうことになるのだった。
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