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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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68/122

68、注目される前に

 雷獣は電撃をバチっと音を立てて、まるで雷に吸い込まれるようにして姿を消す。

 まるで、雷に返ったかのようだ。

 そして、雷獣に先導されるようにして力を振るっていた魔物たちは、先導が解けたかのように統率がなくなる。

 実際、雷獣がその電撃によって、魔物たちを操っていたのが解けたからだが、周りの冒険者にはわからなかっただろう。

 周りの冒険者たちは魔物を押し返すことができたことに喜ぶだけだ。

 多種多様な魔物がいたために魔物同士が争っているというのも、冒険者たちが楽に倒せる理由だろう。

 そして、魔物自体も、チカたちが出会ってきたような強いものではなく、よくいる魔物のため強さに関してもあまりない。

 よってこちらの勝ちは確定していた。


「お姉様!」

「ごめんね、スイ」

「いえ、あれだけの力を出されたのです、こうなっても仕方ないです」


 スイは倒れたチカに駆け寄るとそう声をかける。


「大丈夫?」

「大丈夫ですよ、キキル体の動きは悪いですけど」

「仕方ないんじゃない?」


 あれほどの力を見せたチカなので、その代償というものもあるだろうことは、キキルだって理解していた。

 そうしているうちに、カイとマモルもやってくる。


「あっちは大丈夫そうだ」

「立てるか?馬車のところまで行くぞ」

「ちょっとカイ。お姉様はまだ体がキツイのです。それをいたわるのが普通ではないです?」

「仕方ないだろ、ここにいれば、否が応でも目立つことになるだろうからな」


 カイがそう言葉にするのは無理もなかった。

 魔物が殲滅(せんめつ)されれば、興味がこちらに向いてくるのは確実だろう。

 だからこそ、チカたちはさっさとこの場から離れる必要がある。

 だが、力の使い過ぎでチカの体は力が入らない。


「お姉様、スイに任せてくださいです。ふぬぬ」


 スイはなんとかチカを背負って馬車まで行こうとするが、見た目よりもチカは重い。

 それは体を鍛えているからというのもあって、筋肉があるからだ。

 違ってスイは完全に魔法のみを使う魔法使いだ。

 よって、重さに差はある。


「はあ……スイ。片方持ちなさい」

「なあ!お姉様はスイが持つです」

「でも、このままじゃ、大事なお姉様であるチカを引きずることになっちゃうよ」

「くう……そう言われてしまうとスイはどうしようもないです」

「ごめんなさい、二人とも」

「いいって」「むしろ光栄です」


 二人の返事を聞きながら、五人は馬車へと向かうのだった。


 ※


「いい相棒が見つかったな」

「え?あたいらみたいな?」

「どうだろうな」


 男女はいつものように戦いを見届けた。

 前回と違って今回は、自分たちが人造物を起動させたわけではなかったせいもあり、大量の魔物たちが溢れてしまったが、チカたちにはそれすらも跳ね返す力があったということだろう。


「ここの人造物は弱いことを知っていたが」

「あんなにあっさり負けちゃうなんてつまんないね」

「わかっただろう?明確な弱点があるというのは弱さだということがな」

「うんー、そうだね」


 男女はそう言って去ろうとしたが、女性だけが立ち止まる。


「いい相棒になれたのかな?ねえ、お姉?」


 言いたい相手には届かない言葉だったが、女性は言った後にはにこやかに笑うのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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