67、パーティーでの初めての勝利
雷などは、高いものに引き寄せらるように落ちると聞いた。
そのため、街には一つ雷の塔と呼ばれる、雷を引き寄せる塔が建てられていたのだが、今回はそれを人為的に作ってしまおうと思った結果がこれだった。
うまくいくかはわからなかったが、雷獣は何度目かわからないが雷の姿に変わった。
普通であれば、マモルの後ろかもしくはチカかキキルの近くに攻撃をするために出てくるはずだったが、雷獣は水の塔に引っ張られるようにして姿を現した。
「グガ?」
いつもと違うことが起きてしまった雷獣は驚きに声を上げるが、時すでに遅しである。
雷で移動できるのは利点ではあったが欠点でもある。
「これで!」
そう思い、チカは引き寄せられた雷獣へと右拳を振り抜く。
「グガアアアア」
雷獣の叫び声とともに、雷のカーテンのようなものが雷獣から放たれた。
それは雷獣を守るためのものであり、それによってチカの拳は弾かれる。
「くっ……」
「任せて」
すぐに後ろからチカを抜かす形でキキルが剣を振るう。
だが、それも同じように雷によって弾かれる。
「かったいわね……」
雷獣の動きは止まったものの、次に厄介なことをしてくるとは思わなかった。
この雷のカーテンは、今のところ全ての攻撃を防いでいるからだ。
このカーテンを破れないことには、雷獣へと攻撃が到達しない。
わかっているからこそ、チカは再度拳を叩き込む。
だが、それは弾かれた。
力を使うのがいいのか?
そう考えはするものの、あれを使う以上は確実にカーテンを破り、さらには攻撃を相手に当てないといけない。
それは言ってしまえば外せば終わりだ。
「お姉様!」
それでも、考えている時間はない。
スイのキツそうな言葉で、水の塔をこれ以上長くキープすることができないことがわかる。
水の塔がなくなれば、雷獣をとどめておくことができなくなる。
そうなってしまえば、雷獣に今のように攻撃をすることはできなくなってしまう。
考えるよりも動くしかない。
「ふう……」
頭の中に怒りを巡らせて、黒いものを体に巡らせる。
これは、魔力だろうということくらいしかわからないが、使えるのが一度きりだということを考えると、全てを破壊する必要がある。
「くう……はああああ!」
「チカ!」
「キキル!任せます!」
「グオオオオオオオオ!」
チカの拳が当たると同時に、雷獣の雷のカーテンはバチバチと音をたてながら、激しさを増す。
それによって、チカの拳とぶつかりあう。
二つの力がせめぎあう。
簡単に破れると思っていたチカだったが、実際には力が拮抗する。
もっと力が必要だ。
頭の中にそんな言葉が響くが、チカはそれに飲み込まれることはない。
「はああああ!」
「グオオオオ!」
二つの力がぶつかり合い、そして消滅すると同時にキキルが雷獣に向かっていく。
「ここ!」
「ギャアアアアア!」
魔力を伴った斬撃が雷獣へと当たる。
とはいえ、キキルの攻撃は剣技ではない。
よって、雷獣に少しの傷しかつけることはない。
(うまくいかない。でも、だからこそ何度でもやるんだから!)
剣技が繋がりそうだ。
「行く!剣技”上段斬り””ブルドッグ”」
上から下への斬り下ろし、そして振り下ろした剣をそのまま突きに移行させる。
これによって、雷獣は吹き飛んでいく。
「畳みかける!」
吹き飛んだ雷獣に向けてキキルはさらに詰め寄るが、それはうまくいかない。
どうしてか?
雷獣が雷になったからだ。
先ほどと同じように雷獣は水の塔に引き寄せられるようにして、姿を現す。
雷になったことで、キキルはすぐにどこに現れるのかがわかって、そちらへと振り返る。
「ごめんなさい」
「チカ!」
だが、そこにいたのはチカだった。
無理やり引き出した力によってチカの体はうまく動いていない。
雷獣は狡猾にもそこをついたのだ。
でも、雷獣は忘れていた。
ここにいるのは、チカとキキルだけではなかったから……
「ガアアアア!」
雷をまとった爪で雷獣はチカを斬ろうとするが、一瞬何かに弾かれる。
すぐにチカにはカイが作った魔法だということがわかる。
そして、その一瞬でチカの前には盾が割り込んでくる。
「間に合った!」
「ナイス、マモル!」
「当たり前だ!」
これで全員がそろった。
「そろそろ水の塔がきれるです」
「大丈夫、その前に終わらせる」
キキルは雷獣に向かっていく。
「グオオオオ!」
「何度も鬱陶しいのよ!」
雷獣はもう一度雷のカーテンを作りだす。
だがそれは、先ほどよりも薄いものだ。
よって、キキルが壊すこともできるだろう。
でも、それは先ほどのカイと同じように少しでも威力が弱まることは確実だ。
倒せない場合、スイの水の塔がきれてしまう可能性が高い。
そうなれば、逃げられてしまうだろう。
それだけは阻止しないといけない。
「剣技……」
チカは一瞬だけ集中する。
チカの体は痛みがあるが、ここで倒れているわけにはいかない。
なんとかして魔力を体にまとわせると、拳を振りぬく。
「チカ!」
「あとは、お願い……」
「任せて!剣技”居合”」
キキルは構えて剣を振る。
魔力を帯びた剣は、雷獣を切り裂く。
とはいえ、チカのように圧倒的な威力があるわけじゃない。
よって、一撃では倒すことはできない。
「剣技”スクエア””連続突き”……」
だが、キキルの剣技は一度ではない。
型のように剣技をすべて組み合わせていく。
一撃、二撃と何度も繰り返すそれによって、雷獣を削っていく。
「グオオオオ!」
「やああああ!”居合”」
キキルは最後の一撃を振るうのだった。
五人がいることでつかんだ勝利だった。
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