66、雷獣戦は苦戦の予感
始めての連携ではあったが、五人の動きはさすがだった。
というよりも、チカとキキルの息が合っていたため、全員が動きやすかったというべきだろうか……
うまくいっていた。
それでも、決定打というものが存在しなかった。
「ねえ、チカ」
「なんですか?」
「攻撃が当たらないんだけど!」
「そうですね」
二人は互いに雷獣の動きに翻弄されていた。
元々雷を扱うということは見てわかっていたが、だからこそ動きが速い。
雷の如き速さというのは言い過ぎだろうが、それでもかなりの速さなのは違いない。
それでも、雷獣の攻撃が当たらないというのにも理由はあった。
雷獣は動く前に雷がバチッと弾けるのだ。
雷の如き速さで動く……
というのであればカラクリというものがあってしかるべきだ。
それが言ってしまえば雷だったというだけだ。
「さすがは、チカ」
「いいえ、戦う前に数度攻撃させたのがよかったです」
そう、これが急に戦うことになっていれば、相手がどういう攻撃をしてくるのかわからず、対処に時間がかかったはずだからだ。
そういう意味では、今回のように封印が解かれ外に出ているほうが、人造物がどういう能力をもっているのかわかるため、よかったのかもしれなかった。
「体力がいつまでももつわけじゃないんだけど」
「はい、このままではジリ貧です」
だが、動き出した以上は相応の魔力が込められているはずの人造物ため、簡単には止まらない。
そのことはわかっていた。
「後ろの冒険者もヤバそう」
「一度立て直す必要があるかもしれません」
そして時間がかかると、魔物たちの数が多いこともあって街の冒険者たちが押され始めているからだ。
こうなってしまうと、チカたちもいつまでも人造物だけを相手にしている場合じゃなくなってしまうからだ。
実際にスイは魔法を人造物ではなくて、冒険者たちに向かう魔物に対して放っている。
「どうするの?」
「そうですね……」
「早くしないと、全員がやられるって!」
「わかっています」
良い手というのは思いつかない。
そして時間というものもあまりない。
とれる行動は二つしかない。
この人造物を倒すか、魔物を突破して逃げるかだ。
「おい、俺たちの魔力もなくなったら終わりだぞ!」
「だから、ペース配分をしろと……」
「しょうがないだろ、俺はそういうのは苦手なんだ」
マモルは確かに強力な盾を持っているが、全てのものを防ぐかのように、大量の魔力を使って常にまとっていたからだ。
それによって魔力切れを起こす可能性が高いということだろう。
盾を手放せば、マモルのこの状態は解除されるだろうが、逆にいえば守れなくなってしまう。
それは、ダメだということを、マモルもわかっているのだろう。
だが、結局のところ急がないといけないのは確実だ。
「うおおおおおお!」
「おい!」
「仕方ないだろ、このままだと魔力が尽きるからな!」
そのため、マモルはこの状況を変えるべきと盾を構えて雷獣へと突き進む。
当たり前だが、雷獣のスピードについてはいけない。
「邪魔!」
「おま、酷いな」
キキルは、そんなマモルを見て文句を口にするが、チカは考える。
マモルさんの盾は使える。
もし、追い込むことができれば、盾で通せんぼはできるのですが……
そんなにうまくはいきませんよね。
そもそも、広い場所では追い込むなんてことも意味はない。
「追い込む?」
「何か思いついた?」
「はい、少しだけ!」
「て、何をうおおおおおおお!」
動きが遅いということもあり、雷獣はマモルへと攻撃の対象を移すが、さすがの防御力というべきか、雷獣の攻撃を防ぐ。
すぐに防がれたことを確認した雷獣は、次の攻撃を行うために雷の如きスピードで、盾がないマモルの後ろをとる。
動きをわかっていたチカは、そちらに回り込むが雷獣も予測していたように反転して距離をとる。
「今のがいい案?」
「違います。少し下がります」
「い、いいけど……」
わけがわからなかったキキルは不思議そうにそれを見届ける。
チカは後ろで魔物に魔法を放った後、魔力を温存していたスイに近寄ると耳打ちする。
「し、幸せなのです」
「話は大丈夫いいですか?」
「はい。お姉様の言うことは絶対。一度言われたことは、絶対に忘れることがないです」
スイは自信満々にそう言葉にする。
すぐにチカは今度はマモルに近づこうとしたが、させないとばかりに雷獣は向かってくる。
だが、今度はキキルがその攻撃を防いでしまう。
「キキル、あれを引き付けて!」
「いいけど、早くしてよね」
「わかっています」
次にマモルに考えていた作戦を伝える。
「できるのかよ、そんなこと!」
「はい、たぶんですが……」
チカ自身、少し自信はなかったとはいえ、それ以外の方法が思いつかない。
雷獣をどうにかしないとなったとき、最低でもあの動きを少しでも鈍らせる必要がある。
これまでのようにチカが自分に秘められたよくわからない力で、倒してしまうことはできるだろう。
でも、あんな攻撃ができるのは一度きりで、攻撃を外すなんてことになれば力が無駄になってしまう。
制御ができている力であればいいが、今のところ制御ができていない以上は、人造物以外の場所に攻撃が当たってしまうのもよくない。
だからこその計画だ。
「そろそろいい?」
何度も魔力の剣によって雷獣の攻撃をさばいているキキルではあったが、こちらも魔力がなくなれば雷によってやられるということもあり得ない話ではない。
だからこそ、チカは叫ぶ。
「スイ!」
「はい。水魔法”ウォータータワー”」
先ほど言われたようにスイが水魔法を放つ。
それは水の塔ができるもので、チカ以外の全員が大丈夫かと考えたのだが、それは起こるのだった。
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