65、雷獣へと向かう道
街の外に出ていた五人は、近くの高台にいた。
「それで、どうするわけ?」
「何がですか?」
「考えてやってたわけじゃないの?」
キキルはチカの言葉を聞いて思わず頭に手をやる。
チカが何も考えずに言っているのがわかったからだ。
だが、全てを計算してやっているのであれば、そう考えていたが……
まあ、そんなにうまくはいかないということだろう。
「あたしだって、ここまで多くの魔物と戦ったことはありません。なので、どう戦えばいいのかと聞かれても正直わかりません」
「そんなことを言われても、うちだってわかんないんだけど」
キキルはそう言葉にすると周りにいる人たちを見るが、全員が一斉に目をそらした。
ということは、誰も大勢の魔物の対処というものがわからないということなのだろう。
「チカって、意外と向こう見ずだよね」
「そんなことはありません。キキルのほうがそういう意味では、向こう見ずだと思います」
「ふーん、言うじゃん」
「本当のことですから!」
一緒に冒険を行うことになって、二人の仲良さを見ていたスイは思わず口にする。
「このモヤモヤはなんです……」
「姉離れじゃないのか?僕だって……」
「うるさいです、シスコン」
「おま、僕に言うことじゃないだろ?というか、そういうのはお互い様じゃ」
今度はカイとスイの二人が言いあっている。
一人だけ残されたマモルはそれを見るとため息をつく。
「いや、どうすんだよ、結局この状況……」
そんな言葉を口にはするが、魔物たちの行進が止まることはない。
言い争いというのは、そんな魔物たちの咆哮によって止まる。
『ギャアアアアア』
声とともに、魔物たちが高台から見える位置へとやってきたからだ。
後半日もすれば、魔物たちは街を呑み込んでしまうだろう。
それくらの行進速度だ。
見ていたキキルが質問する。
「結局どうするの?」
「決まっています。倒します。最低でもあの人造物だけでも」
「倒すってことね」
「はい」
「お人好しってことでいいの?」
「お人好しなのですか?」
「わかんないけど、なんとなく」
チカたちは確かにお人好しだろう。
普通に考えれば、魔物など気にすることもなく迷宮に向かっていけばいいのだから……
それをしないのは、魔物が危険だということを知っているからというのもあるが、街がなくなってしまうとあのときの言葉を思い出すからだ。
世界が滅ぶ、そんなことになってほしくないからだ。
「やります」
「うん」
五人のそこからは速かった。
馬車を高台に置くと、上から魔物たちを観察する。
あの鼓舞のおかげなのか、冒険者ギルドに集まっていたものたちは魔物の大群を前にして立ち向かおうとしている。
そんな中でも、使えそうなものというがいくつかあるのが見える。
一つが、石を投石する機械だ。
あれを使うには、確かに冒険者が数人は必要ではあるが、大きな石であれば、それだけ威力もある。
問題は、あれを使うと前で戦うことが難しいというところだ。
後は槍だ。
これに関しては言わずもがな、剣よりもリーチがある。
それによる利点は多く、特に今回のような多くの魔物たちが草原のような場所にいる場合、一度で多くの魔物を突き刺せることも可能だったりするからだ。
だが、そんな中でチカたちが一番びっくりした武器というべきか、人なのは弓だ。
飛び道具として、魔力を必要としないそれはかなりの意味で重宝されている武器だ。
だけど使い手と呼ばれる人はいない。
どうしてなのか?
それは、使えるものからすれば魔法でいいとなってしまうからだ。
それだけ魔法というものが簡単であり、さらにいえば強いのだが、弓を放っている女性は違った。
矢が魔法でできているのだ。
こういうことについては、チカは一度だけ見たことがあったのだが、そのことを覚えていなくて、驚いていた。
そして、その矢の威力についてもすごいものだ。
風を纏った矢は、突風のように吹き荒れながら魔物たちに飛んでいく。
突風はかまいたちのように魔物たちを切り裂きながら飛んでいくため、矢に当たっていなくてもダメージが入るとなれば、魔法とそん色はない。
そして、矢を媒体とすることによっておこることといえば、魔法と同じ効果が得られるのに、詠唱などを必要としないという点も便利だ。
「じゃ、やろっか」
「はい」
「行こう」
「ああ」「任せろ」「です」
五人は人造物へと向かっていくために魔物たちの前に立つ。
作戦は決まっている。
一撃目は、スイの魔法によるものだ。
「水魔法”ウォーターブレイド”」
渾身の魔力が込められた水の剣によって魔物たちが切り裂かれていく。
まるで道のように、魔物たちがいなくなった。
そこから、マモルを先頭にして殿はカイだ。
二人ともには、前方と後ろの盾役となってもらう。
突然放たれた魔法に冒険者たちはびっくりとするが、人造物は魔物を殲滅しながら進む魔法に怒りの雷を放つ。
雷獣によって放たれた雷というのは、魔物たちを切り裂いて弱っていたスイの魔法を弾き飛ばしながらも、そこを進みチカたちに向かっていく。
だが、そんな雷も……
「信じてるから!」
「ああ、任せろ!」
マモルが構えた盾によって、防がれる。
盾を扱う。
そんなのは普通ではないが、そもそもここにいる五人は普通とは違う。
さらに雷獣は雷を放つが、マモルはしっかりと盾を構えると魔力を高める。
「おらあああああああ!」
向けられた雷を盾で上にそらすようにして弾いてしまう。
「さっすが!」
「すごい!」
「攻撃だけはできないけどな!」
「任せて、チカ!」
「はい!」
気づけば魔物の大群を抜けていた五人はそれぞれのフォーメーションになる。
左にはキキルが陣取り、右にはチカが、そして中央には三人が固まるというものだ。
雷獣は、名前の通り獣である。
この中で、そんな雷獣の動きに対応できるのは、チカとキキルしかいない。
よって、二人は個別になり、防御に関してはマモルと、臨機応変に対応するカイ、そして合間を見て魔法を放つスイという形になっている。
「では……」
「うん。人造物討伐作戦、開始!」
五人の戦いが始まるのだった。
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