61、高めあう
もの凄い音が鳴る。
チカたちがいるのは、クロが魔法で作り出した場所なので、迷宮に入った人などの音が聞こえることなどありえない。
だというのに、爆発音が聞こえていた。
「何ですか!」
「すごい音だったけど」
「わからんが、我が作り出した結界に干渉する力を持っていることだけはわかるな」
「でしたら、そいつは……」
「ああ、入ってくるということだ」
クロがそう言葉にしたと同時に、さらに大きな音が響く。
ドカンと激しい音とともに、破壊したであろうものが出てくる。
人を大きくした存在だ。
「何よ、あれ」
「わかりません」
「おお、あれは……」
「ラス、何かわかるの?」
「敵じゃな!」
「いや、そんなこと、わかってるから!」
それを見たラスがそんなことを言うが、すぐにキキルにツッコまれる。
まあ、言っていることを考えれば、当たり前のことなのかもしれないと、全員が考えたが……
「ガア、ガア、ガハハハッ」
化け物は大きな笑い声とともに、ドンドンと音を立てながら、こちらへ向かってくる。
人に似ているからか、遠くから見れば、少し大きな人には見えるだろう。
だが、その見た目は全く違うものだ。
髪の毛が異様なほど伸び、色がどういうわけかいくつもの色が入り混じっている。
それは、まるで人工的に作られたようだ。
「嫌な予感がするのじゃ」
「確かにね」
「いやいや、そもそも僕からすれば、そっちのこともわからないからな」
「カイ、ダメですよ、そんなことを言ってしまうのは……」
「すみませんって、寝てたんだから、仕方なくないか?」
「いいから、カイはアイを守ってください」
「ああ」
やってきた化け物がどんな存在なのかがわからない以上、チカは三人には固まっていてほしかったのだ。
そんな中で、化け物は笑い声からこちらの存在に気付いたようだ。
「オオ、ノロイノオンナ!オンナ!コロスコロス!」
「チカ!」
「はい!」
狙っているのが、チカだということを二人はすぐに理解すると、お互いに声を掛け合って、向かっていくのだが……
「「きゃ……」」
二人の声が重なる。
というのも、二人は化け物にお互いに向かったからだ。
それは、息があっているといえばいいのかもしれないが、同じタイミングだったから、二人の体がぶつかりあったのだ。
「ちょっと、チカ!危ないでしょ」
「キキルこそ、どうして向かって行くんですか!」
そんなことを言いあって、二人で見合う。
これまでの二人であれば、どちらかが譲ったりすることがあったが、今回に限っていえば違った。
「おぬしら!」
慌てたようにラスが叫ぶと同時に、二人の前に盾を持った男が乱入する。
「世話がやけるぜ」
男はしっかりと盾を構えるといつの間にか放っていた炎の塊を防いでしまう。
「やるじゃん」
「ありがとうございます」
「いいけど、油断するなよな。俺は攻撃できないんだからな」
そう言葉にしたマモルの前に一人の少女が出る。
構えはいつものように、腰に引き絞る形だった。
「お姉様を狙って攻撃をするとは、スイが絶対に許さないです。水魔法”ウォーターブレイド”」
スイはその言葉とともに、水の剣を放つ。
「ゴオオオオオ!」
だが、それは化け物が作った炎によって蒸発させられる。
詠唱もなく魔法のようなものを作ったことを考えると、化け物はどういうわけか、クロたちのように魔法を使える存在なのだろう。
「防がれたです」
「今の攻撃すげえな!」
「お姉様以外に褒められたところで嬉しくないです」
先ほどのスイの魔法を見て、マモルがそう言葉にしたのだが、返ってきた言葉はかなり酷いものだった。
一刀両断されたマモルも、次の言葉が続かないくらいだ。
とはいえ、今はそんなことをやっている場合じゃなかった。
「コロスコロス!」
「ねえ、チカ……」
「なんですか?」
「二人で協力してやらない?」
「そうですね」
二人で戦っていたせいもあって、互いに疲れていたはずだが、先ほどまでやっていたこともあって気は昂っている。
そして、お互いにこんなところで弱っているところは見せられない。
二人はゆっくりと歩き始める。
「チカ!」
「はい!」
そして、すぐにお互いに声を掛け合うと化け物に向かって走り始める。
「コロスコロス!」
化け物が見ていたのは、チカのことだ。
「無視すんな!」
「ガアアアア!」
それをキキルが、後ろから斬る。
「ジャマ!ジャマアアアアアア」
「はん、遅すぎ!」
後ろから斬られたことにイラついたのか、化け物がキキルに向かって行く。
だが、化け物は戦い方はかなり大雑把だ。
確かにその全てがかなりの破壊力があるのだろうが、キキルには当たらない。
そして、狙いがそれたことでチカは魔力を腕に集める。
キキルに負けたくないということで、二度目のそれはすぐにうまくいく。
「はあああああ!」
「ゴガアアアアアア!」
一撃は、あの人造物も倒せるものだ。
そのため、化け物であっても一撃だった。
「ふーん、やるじゃん」
「当たり前です。あたしは強くなりましたから」
「そっか」
二人は、どこかお互いに視線を合わせると互いに手を合わせるのだった。
※
「あー、やっぱりダメでしたか。まあ、お金は手に入ったので、今はそれだけで……わかった行きます」
三人のフードを被った女性たちは、そう言葉にすると、その場を後にするのだった。
一人の女性の手には、怪しく輝く何かが手に握られているのだった。
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