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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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58/122

58、新たな迷宮と押し付け

 中央都市から西にある街で確認されている迷宮ではなく、別の場所に三人は向かっていた。


「聞いたのは、ここだな」

「うーん、なんじゃあれは」

「噂の中で俺が見つけた、迷宮であろう場所だ」

「ふーん、確かに迷宮に見えなくはないけど。すごく奇妙な彫像にも見えるんだけど」


 キキルがそう言葉にするのも無理はなかった。

 見えていた建物というのは、大きな彫刻だった。

 ドラゴンのような見た目をした顔で大きな口を開いている。

 どう考えても、あの口が迷宮への入口なのだろう。

 だが、これほど目立つ見た目をしているのであれば、中に入る人もいるのではと考えてしまうのだが、この迷宮が噂になったことはない。


「なんじゃ、これは」

「わかんねよ」

「えっと、これ?」


 その理由は入口にあった。

 というのも、何か球体があったのだ。

 球体にはいくつか光っているのだが、光っていない場所もある。

 どういう違いがあるのかはわからないが、意味があるものだということが三人にはわかった。


「触ってみるかの」


 早速というべきか、興味があったラスがその球体に触れる。


「これが、こうで、これがこうじゃ!」


 ペタペタと球体を触っていく。

 光っている場所が変わってはいくが、正解がわからない以上は、何度も触るしかない。


「うーん、これがこうじゃ」

「いや、変わってないな」


 自信満々にラスは言ったものの、すぐにそれを見たマモルからツッコミをいれられる。

 マモルが言ったように、光る場所が変わったものの、何が正解なのかわからない以上はどうするのがいいのかはわからない。


「ねえ、うちもやってみていい?」

「いいぞ」


 次の挑戦者はキキルだ。

(どうせ、うまくいかないだろうな)

 マモルは、先ほどのことを見ていたので、キキルもうまくはいかないだろうと考えていたのだ。


「ま、うまくいかないだろうな」

「うん?できたかも」

「嘘だろ!」


 マモルは驚きながらも、球体を見ると確かに光っていた。

 それも球体全てが光っていたのだ。


「まじかよ……」

「おお!成功じゃな!」

「これで扉が開くかな」


 するとすぐにゴゴゴと音が鳴る。

 何かが起こっているのだろう。

 三人は、期待していた、何かが起こるだろうと……

 主に口の奥が開いて中に入れるようになれるのではないかと、考えていた。

 でも、実際には違うことが起こる。


「ガコン」


 そんな音とともに、地面が開いたのだ。


「まじか」

「おお、なのじゃ」

「何が起こってるのー」


 完全に油断していた三人は、地面に吸い込まれていくのだった。


「よこそー、土属性の迷宮へ。やっほやっほ、どしたの?」


 落ちた先にいたのは、黄色の髪の毛の女性だったのだが、その前に落ちた三人が絡まった状態だったからだ。

 だが、こうなったのにはちゃんと理由がある。

 当たり前だが、上から落ちてきたからだ。


「いや、あんたのせいでしょうが……」


 一番最初に起き上がったキキルが、文句を言うが、女性は気にした様子がない。


「え?だって、これくらいは受け身を取ってくれると思って」

「いててなのじゃ、受け身を取らせるのなら、一人ずつ落としてほしいものじゃ」

「あー、絡まっちゃったわけか、なるほど」


 女性は、どこか納得したように、頷くのを見ながらも、三人は体勢を整えるが、その間もボーっとしているところや、先ほどのどこか気の抜けた話し方に、全員が思っていた。

 この女性が本当に、この迷宮にいる大魔法使いと呼ばれる存在なのかと……


 そもそも、キキルが迷宮に来たのは、これまでの修行の成果を試すためにというのと、先に行ってしまっているチカやシシルに追いつくためだったが、師匠として一緒にいるラスは違った。


「ふむ、おぬしはこいつでどうじゃ?」


 そう言葉にすると、懐から何かを取り出した。

 何を取り出したのか、それはただの酒だった。


「お酒?」

「まあ、そうじゃ。わらわはそのためにここに来たのじゃらかな」

「はて?会ったことあったっけ?」

「どうじゃろうな。わらわはある約束のためにこうやっているだけじゃ」

「そうなの?でも……お酒はのめないんだよ」

「そうじゃったか」

「でも、どうせだから、もらう」


 ラスが何でお酒をあげたのかはわからないが、言っている内容から、迷宮の主と知り合いだということなのだろうか?

 ラスとは、キキルたちも知り合ってあまり時間がたっていないことから、詳しいことはわからないが、目的地が同じでよかったとは思っていた。

 お酒を受け取った迷宮の主は、次にキキルたちに話しかける。


「それでー、次はあなたたちー。何かある?」

「ええっと、それは……」


 何かをキキルは言いたいが、チカとは違って、迷宮の知識があまりないため、何かを聞こうとしても言葉が続かない。

 そんなキキルの代わりに、マモルが気になっていたことを聞いた。


「いいか?」

「なにー?」

「そもそも、ここは迷宮のどこにあたるんだ?」

「うん?ここは迷宮の最深部!そう、入ってすぐに最深部!」


 どうすごいでしょと女性は胸を張る。

 確かにすごいのだろうが、マモルは思わず言ってしまう。


「いや、面倒だっただけだろ……」

「あー、そういうことを言っちゃうんだー。よくない、よくないよー。確かに入るためのギミックを凝りすぎたせいでー、後のことは少し手抜きはしたけどー」

「やっぱりな。それと、あれはなんだ?」

「あれ?あれはー、スフィンクスって呼ばれる。作った魔物みたいなものー」

「作った魔物だと……」

「何、それ……」

「ふむ、これがそうなんじゃな」


 キキルとマモルが驚いたものは、少し前にチカが戦った存在だ。

 石で作られた犬のような見た目をした石像が本当に動くのかは疑問ではあったが、見たことがないものには興味だけはそそられた。

 とはいえ、全てにおいては説明が不足している。


「なあ、これは……」

「ああー、そういえば、面倒なら伝えてって言われてたなー。説明も面倒だし、押し付けちゃおう」


 まだ、マモルが疑問に思うことを聞きたかったのだが、そんなことよりも何かを思い出したのか、女性は独り言を発すると、手を地面に合わせる。


「じゃあ、行ってらっしゃいー」


 間抜けな声とともに、三人の立っていた地面が崩れ落ちる。


「なんじゃ!」

「まじか!」

「なにー」


 三人は吸い込まれた地面から、すぐにわからない光へと包まれると、草原の上に立っていたのだった。


「キキル」


 キキルはいつぶりかの声を聞く。

 そこには、チカが立っていた。

 だが、キキルの口からは、うまい言葉が出てくることはなく。

 逆に、チカを見たラスが驚いたように何かを言葉にするが、それは誰にも聞こえることはなかった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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