50、いない間にするべきこと
数日がたった。
魔力を体から溢れさせ、全てを破壊した後からチカは目を覚まさない。
そんな中で、スイとカイは目を覚ますまで魔法を練習していた。
「なあ、聞いていいか?」
「なんです?」
「チカはずっとあんな感じなのか?」
「お姉様です?ずっとと言われても、どういう意味かスイにはわからないです」
「いや、他人を気遣うっていえばいいのか……」
カイは少し言いにくそうに言葉にするが、スイはため息をつく。
「はあ……お姉様を見ていてです。同じじゃないと思うです?」
「いや、思わないな」
「だったら、それが真実です」
「そっか」
カイには出会ってからのチカしか知らないとはいえ、長年一緒にいたはずのスイがそう答えるのであれば、誰かを気遣うのが当たり前だということなのだろう。
カイ達がこうやって話しているのには理由があった。
何もやることがなかったからだ。
クロが引き込んだと言ったらいいのか、あの場所へ連れてこられた三人は、出てきた魔物を殲滅した。
ほとんどはチカがやったことだったため、何もできなかったこともあり魔法の練習は繰り返しているが、あまり身が入っていない。
そして、次に何をしていいのかわからなくなっていた。
「なあ……」
「なんです?」
「お前は、家に帰らなくていいのか?」
「スイです?スイはお父様に、お姉様と一緒にいるように言われているです。ってことを言ったような気がするです」
「そうだったか?」
「そうです。それで、スイに聞きたいことがまだあるです?」
スイに言われて、カイは考える。
聞きたいことといえばいいのか、言いたいことといえばいいのかはわからないが、一つあった。
「何か僕たちでやらないか?」
「何かとは、何です?」
「依頼とかかな?」
「とかってなんです」
「いや、だってなあ。僕たちは両方とも、年齢的に普通ならできないだろ……冒険者としての活動」
「なるほどです」
回りくどいながらも、カイの言いたいことは伝わった。
何かをやりたいということなのだろう。
だけど、それを考えたときに何をやるのがいいのか?ということはわからない。
とはいえ、何か思いつくことがそれくらいだった。
「スイも、何かをやるということは賛成ですが、一つあるです」
「なんだ?」
「もう一度、森に行くです」
スイは、考えがあると口にする内容というのは、あの帰らずの森へ行くというものだった。
というのも、魔物を倒した後にスイたちはモリリンという女性がいる迷宮へと返された。
「お疲れ……様……一度、帰ると……いい」
その後には、眠るチカを連れて三人で街へ戻ってきたのが、あの日だった。
モリリンの口調から、何か戻ってこいと言われているようにスイは感じていたからだ。
「迷宮を一からクリアする必要もあるです」
「そうだな」
それに、あのときはチカがいるから迷宮は一直線に森が破壊されていたおかげですぐに最深部にたどり着くことができたが、次にいけばどうなるのかわからない。
「お姉様の役に立つなら、迷宮に行くのが一番いいです」
「確かにそうだな」
チカが目指しているものは、迷宮だった。
そんなチカと同じようになりたいのであれば、目指すべきは迷宮だということは二人ともわかっていた。
「じゃあ、行くのか」
「ちょっと、それはスイが言いたい言葉です」
「そ、そうなのか……」
「ええ、レッツラゴーです!」
二人はお互いの意見が一致して、迷宮へと向かう。
そうして、二人で迷宮へと向かうはずだったのだが……
「どうして姉さんが、着いてくるんだ?」
「なんでって、保護者は必要だから、そこでお姉ちゃんの役目ってこと」
「理屈はわかるけど、姉さんの必要があったのか?戦いになるかもしれないんだぞ」
「大丈夫!お姉ちゃんに任せなさい」
何故かはわからないが、カイの姉であるアイがついてきた。
カイからすれば予想外だった。
チカがまだ目を覚ましていないことを考えても、アイであればチカの看病をするだろうと考えていたからだ。
だというのに、アイは一緒になってついてきた。
これには実際何か考えがあるのだろうと、カイが考えていたのだが、姉の特権というべきなのか何も教えてもらうことはなかった。
「よし、これでいいな」
森の前について、馬車を置くと気合を入れる。
今回は戦闘ができるかわからないアイも含めての三人だ。
どうなるのかわからない。
魔物に出くわす可能性だってあるはずだった。
「すごいです」
「ありがとう。お姉ちゃんはこう見えてもいっぱい練習したからね」
嬉しそうに答えるアイは、かなり優秀だった。
サーチの魔法で、普通であれば広範囲の魔力を調べるのだが、アイは違っていた。
サーチの魔法を応用して魔力だけではなく、音なども魔力によって調べることが可能になっていた。
「僕にもできないんだけど」
「どうですか?お姉ちゃんもちゃんと成長していますよ」
成長というよりも、そこまでいくと新しい魔法じゃないか?
そんなことをカイは思ったがさすがに口にしない。
どっちにしても、アイとカイでは魔法の使い方から今は違っているからだ。
カイが今やろうとしているのは、クロから本当の魔法と言われていた詠唱をしないものに対して、アイはどちらかといえばスイに近い魔法。
考えていることを魔法として詠唱と同時に発動させるというものだ。
スイは攻撃に特化しているものだが、アイは逆に何かの役に立つものという感じだった。
「それでも、お姉ちゃんの魔法には何も反応しませんでしたよ」
「ま、迷宮については一部の人間以外知らないことだからな」
「魔物も、お姉様があれだけ倒したんです。すぐには魔物も現れるはずがないです」
「だな」
迷宮は管理されているから普通の人にはまだ情報が入っていない。
魔物は迷宮の外にいたものはキキルたちが、中にいたのはチカが倒していたため、ほとんど出てくることがない。
よって、迷宮までは何事もなくいけた。
迷宮の中に入ってみると、わかっていたことだが元通りになっていた。
「すごいところだね」
「ああ……」
「迷宮の深部に行くです?」
「そのつもりだ」
「それなら、お姉ちゃんの魔法が使えますね」
アイは前に出る。
どういうことなのだろうかと、カイは思ったが、アイは集中して足をトントンと足踏みのようなことをする。
何をしているのか……
二人はわからないでいたが、アイは魔法を唱える。
「探索魔法”サーチ”」
音と魔力を混ぜたものが、辺りに漂っていく。
この魔法は普通に使えば、サーチというよりも自分の場所を知らせてしまうような、よくない魔法だ。
音を魔力で増幅させていくもので、音が跳ね返ったりするのを聞くことで周りを判断できるというものだ。
どうしてこんなことができるのか?
それは、アイがずっと寝ていたことが関係していた。
寝ていたとき、アイは外の状況を少しでも把握するためにいろいろな音を聞き分けるようになった。
それがこの魔法にも使うことができていた。
「みーつけた」
音の跳ね返りによって、壁ではなく扉のようなものがある場所はすぐに把握できた。
「すごい能力だな」
「あんたのお姉さんです」
「そうなんだがな……」
見ない間に著しい成長を遂げている姉を前に、カイはどう反応していいのかわからなくなりながらも、アイの「行きますよ」という言葉に素直について行くのだった。
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