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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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46、真実への試練

 夢を見ているのだろうか?

 子供のころのチカ自身と、そのころの母親が映像として映っている。


「お母様……」

「あたいのことをお母様って呼ばないで!別に、あなたの母親じゃない」


 母親だと思っていた人に言われた言葉だったことを思い出す。

 当時のチカには意味がわからなかった。

 だが、母親が嫌がるというのでは仕方ない。

 考えた結果、チカがやったことは、母親だと思っていた女性を名前で呼ぶことだった。


 思い出すと、どうして母親と呼んではいけなかったのかは未だにちゃんとわかっていた。

 それでも、当時はチカに魔法の才能が全くないからと、結論づけたはずだった。


 だが、本当にそうなのか?

 あたしは誰なんだろうか?

 そんなことをふと考えたタイミングで、チカのそんな考えが晴れるようにして意識が引っ張られると、目を覚ました。


「ゔ……」

「お姉様」

「スイ、痛いよ」

「す、すみません。でも、お姉様が勝手に行ってしまったのもいけないと思うんです」

「それについては、ごめん」


 素直にチカは謝ったところで、カイにも気づく。


「カイ君もごめんなさい」

「謝らなくていい。僕たちがチカに追いつけてないだけってものあるしな」

「で、ですが……」

「あー、無事だったから、いいだろ」


 カイは少し照れくさそうに言う。

 額には汗がにじんでおり、さらには体が軽くなっていることを考えると、倒れている間に、カイがいつものようにチカに回復魔法を着か使ってくれたということなのだろう。

 だが、それを見ていたモリリンが言う。


「非効率……まだ、その……やり方?」

「非効率?傷ついた相手が、どんな状態なのかがわからない以上は、詠唱して全部を回復させたほうがいいだろ、違うのか?」

「そんな……ことない……クロなら……体を……調べる、魔法も……使えてた」

「まじか、それはかなり便利そうだな」


 カイはそう言葉にしながらも、モリリンを指さす。


「そういえば、こいつは誰なんだ?」

「その子は、モリリン。この迷宮の大魔法使いですよ」

「なるほどな……って、僕と見た目的に違いがないぞ」

「優れた……魔法使いは……見た、目くらい……理想に……近づける」


 見た目のことを言われたことに対して、モリリンはむしろ若い姿を自慢しているようだ。

 だが、カイたちが気になっているのはそこではない。


「ここで何が起こったんだ?」

「知らない……狙われていた……」

「お姉様が?」

「ううん、この子だよ」


 チカはそこから説明をする。

 ここで何があったのかということを……

 キキルのことについては、自分の個人的なこともあって話さないでおいた。


 その後に、カイたちの説明も聞いた。

 カイとスイは、チカが置いてきたカバンと自分たちのではない馬車を見て、森に入ったのだろうということがわかり、追いかけてきたということらしい。


「ほかには誰か出会いませんでしたか?」

「いや、誰にも出会わなかったな」

「スイもお姉様のことしか見ていなかったです」

「そうですか……」


 キキルがどこに行ったのかは、わからない。

 だが、今は考えても仕方ないとチカは割り切ると、モリリンに聞く。


「あの人たちはなんだったのですか?」

「わから、ない……迷宮は、なるべく……見るからない……ように、魔法を……使ってる」

「はい」

「だから、人が……入って……来たのも……久しぶり」

「では、わからないと……」


 チカがそう聞くと、うんうんと頷く。

 目的は、モリリンだったということは、もしかしなくても迷宮に関係することなのだろう。

 だが、わかるのはそれだけで、チカが持っている情報というのはあまりにも少ない。

 わからないことは聞くのが、いいとはいえ、この話し方といい。

 モリリンが、チカが疑問に思っていることの答えをもっているかもわからない。


 そんなことを考えていたときだった。

 視界が、光に包まれる。


「なんだ?」

「わかりませんが、目を開けるのは難しいですね」

「お姉様!」


 光が強すぎて何も見えなくなり、少し体に違和感を感じた後に、光が収まるのを感じると目を開けた。


「ここは……」


 見慣れた景色の場所だった。


「よお、大魔法使い様が必要だろ?」


 立っていたのは、見慣れた黒い仮面をつけたクロだった。

 だが、ここには先ほどまで一緒にいたモリリンはいない。


「あの……」

「気になるところが、そこかよ。しょうがないだろ、迷宮主は迷宮を離れられない。当たり前のことだ」


 周りをキョロキョロと見たところで、何を探していたのか察したのだろう、クロが先回りして言葉にする。


「そうですか……」


 事情がわかっているとはいえ、いざ本人たちの口から言われてしまうと、考えてしまう。

 クロは思わず、そんなチカを見て、優しすぎると思ってしまう。

 だって、魔物が世界に溢れてしまっているのは、クロたちのせいなのだからだ。


「ま、次の真実を知るときが来たな」

「次のですか?」

「ああ……でもなあ、その前に一つやらないといけないことがある」

「なんですか?」

「あれだ」


 クロは指さす。

 そこには、スイとカイが立っていたが、目の前にいたのは見たことがない魔物だった。


「わかるか?」

「魔物ですか?」

「おお、よくわかってるな。さすがは我が認めた相手だ」


 クロはそう言葉にすると、嬉しそうに笑うが、チカからすれば嬉しいことではなかった。

 見たことがないということは、危険な相手だということがわかっていたからだ。


「真実を知るための試練ってことだ。死ぬなよ……殺されるなよ?」


 そう言葉にするクロは、楽しそうであり悲しそうだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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