44、質問と乱入者
キキルが去って行ったあと、チカは少女に話かける。
「いいですか?」
「う、うん……だいじょ、ぶ?」
「ありがとうございます。ですが、大丈夫です」
表情でチカが悩んでいることがわかったということなのだろう。
だが、今は気にしても仕方ないということは、チカもわかっていて切り替えた。
「話をさせていただいても、大丈夫ですか?」
「う、うん……大丈夫」
「では、ここは迷宮ですよね?」
「うん、あってる……」
「それでは、あなたの名前は?」
「名前……モリリンって……呼ばれて……たかな?」
「モリリンですか?」
「うん」
少女は、モリリンと名乗ったが、自分の名前だというのに、どこか他人事のようだ。
もしかしなくても、迷宮がたってからかなりの時間がたっているため、自分というものが薄くなっているせいなのかもしれない。
チカはなんとなくそんなことを考えながらも、気になることはまだあった。
「では、モリリンさんは、どうしてここにいるのですか?」
「どういう……意味?」
「クロさんは、違う空間にいたように思うのですが……」
「ああ……うん……クロは、天才……いろ、いろな……魔法が……使える……から」
モリリンは、そう言葉にする。
ということは、迷宮の中にずっといるということなのだろう。
「もしかして、モリリンさんができるのは、この迷宮を操ることなのですか?」
チカは、そう聞く。
でも、これについては予想でしかなかった。
だって、森を作る魔法など、存在していないからだ。
とはいえ、モリリンの髪の色というのは、他の人とは違っている。
青色と黄色が混ざっているのだ。
「うん、さすが……クロが認めた……人。目の……付け所……いい」
予想でしかなかったことだったが、モリリンからすれば、その内容は当たりだった。
モリリンが使う魔法というのは、融合魔法と呼ばれるものだった。
これは、少し前。
チカたちを襲った女性たちも同じように使っていたものだった。
モリリンが使ったのは、土と水の融合魔法。
これは、木など作り出すといったものだ。
だから、迷宮は同じように木々が生い茂った森のような場所になっている。
「融合……魔法……知らない?」
「知りません」
「そう……でも……才能が……ある人に……出会う、はず……」
「では、会えることがあれば……」
「うん……いや、でも……わかるはず……」
迷宮の主が言うのであれば、その通りなのだろう。
「一番教えてほしいことがあります」
「うん?なに……」
「迷宮をなくす方法です」
「クロから……聞いて、ない?」
「はい……」
そう、迷宮を消してくれ。
自分のことを消滅させてくれということは、言っていたが、そのやり方については教わっていなかった。
今更ながらに、そのことを聞きたかった。
「うん……それに……ついては……クロが……言わないのなら、言いたくない……」
だが、モリリンから返ってきた言葉はそんなものだった。
言いたくない。
そんなことを言われてしまったチカは戸惑う。
意味がわからなかったからだ。
やってほしいことを言ったのに、そのやり方を教えないというのは、まさに矛盾を生み出していると考えていた。
何か意味があって、言っているのですかね?わかりませんが……
考えても、情報が少なすぎてチカにはわからない。
もっと情報をと考えて、次の質問をさらにしようとする。
「あの、他にも……」
教えてほしいことがあると言葉にする前に、足音が聞こえる。
それも、少し前に離れていったキキルとは違う足音だ。
誰なのかは、先ほどキキルと争っていたシシルであったのだが、チカにはわからないが……
見た目と大きな剣を背負っていることで、キキルの関係者であることはわかる。
「何をしに来たのですか?」
「えー?あたいのこと?」
シシルは楽しそうに笑うと、大剣をゆっくりとモリリンに向ける。
「やることは決まってるよー。あんたをねえ、殺すー」
その言葉とともに、一瞬で近づいてくると、大剣を振るうが、それはせりあがってきた木が防ぐ。
「うんうん、予想通りの攻撃ー。でもねえ、あたいはそれを知ってるんだよね」
シシルは木の壁を押し込むように大剣で斬ろうとする。
再度モリリンは魔法を使おうとするが、何故かそれは燃え始める。
「な、に?」
「わかんないよねー。すごいっしょ、あたいの技」
「見たことない」
「ふーん。じゃあ、死ねるね!」
シシルは、そう言葉にすると、大剣を押しこんでいくが、モリリンに届く前に大剣は弾かれる。
そう、チカによって……
「あっれー、なんではじけたのかなあ?」
「わかりません」
「見たことない相手か、楽しめそう!」
だが、大剣を弾いたせいで次はチカにロックオンすると、大剣を構える。
同じくチカも、わけがわからないながらも、モリリンを殺されるわけにはいかないと考えて、構えをとると戦闘が始まったのだった。
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