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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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43/122

43、視界に映らない過去

 天才だと誰かが言った。

 少女には最初意味がわからなかったが、他の人ができないことが簡単にできたことで少しずつ自身は天才なのだと気付いた。

 だから、努力というものをしたことがなかった。

 相手の苦手とする武器を使用すれば、苦戦を強いられることもなく、全ては自分優位な戦闘が行える。

 魔物だって、相手の特性を見て戦うことで、全てがうまくいっていた。


「ねえ、お姉はできないことはないの?」

「ないんじゃない?」


 必死に大剣を振るう妹を見ながら、キキルはぶっきらぼうに言う。


「そっか、じゃあ剣は振るわないの?」

「うーん、一回振れば十分わかるから大丈夫」

「すごいね、お姉は」

「まあね」

「でも、全てうまくいくのかな?」


 妹にそう言われても意味がわからなかったキキルは聞き返す。


「どういう意味?」

「うーん、だって絶対はないからさ」

「そうかなあ……」


 妹にそんなことを言われたものの、キキルは何の挫折もなく、多くの武器による武技をさらに覚えると、強さというものが揺るがなくなってきた。

 とはいえ、全ての武器を扱うことはできたものの、主によく使うものを選定した結果、その武器を箱に入れて持ち運ぶというスタイルになった。 


 妹が言っていた通用しないなんていうことは、言われたことすら忘れていた。

 ほんの少し前まで……


 キキルは思い出した。

 通用しなくなるという言葉を……


「何度やったって同じじゃん」


 気づけばキキルの口からそんな言葉が出ていた。

 だけど言った瞬間ハッとする。

 チカが冷めた表情でキキルのことを見ていたからだ。

 間違ったことを言ってしまったということを少し思ったが、言ったことを取り消すことができない。


「キキルが、それでいいのであれば問題ないですが……」


 チカは構えをとくと、視線を完全に外して二人を見ていた少女のほうに歩いていく。

 本当に興味をなくしてしまったというのだろうか?

 キキルには、それがわからなかったが、この場にいるのもいたたまれなくなった結果、逃げだすように離れていくのだった。

 それを見たマモルが慌てて追いかけるものの、チカは興味もなく見ていない。


(うちってなんなんだろう……)

 逃げ出したところで、その答えはでない。


「おい、おいって」

「なに?」

「なんで、立ち去ったんだよ」

「なんで?わかんないなら、いいんじゃない?」

「お前なあ、そういう言い方はないだろ!」

「じゃあ、何かわかるわけ?」


 キキルのその言葉に、マモルは何も言えない。

 そもそも、二人が出会ってからあまり時間がたっていないため、ほとんどのことをわかっていない。

 だからこそ、何も言えないでいた。

 ずんずんと進んでいくキキルは、勢いのまま迷宮から外に出ようとしていたときだった。


「あっれーお姉じゃない?」


 昔に聞いていた声がする。

 キキルはハッとして声がした方向を見た。

 そこにいたのは、妹であるシシルだった。

 持っているのは、昔見たときと同じように大剣だった。


「なんで、いるの?」

「なんでって、うちは迷宮に用があって……」

「えー?お姉って、そんなに強かったっけ?」

「はあ?何を言ってるわけ?」


 シシルは姉であるキキルをバカにするように言葉にする。

 言われた内容に、キキルが持っている刀を握る力が強くなる。


「あっはー、悔しい?」

「何を」

「何をって、わかんない?お姉は弱いよ?」


 挑発するように言葉にするシシルに、キキルはすぐに怒りを押し出すと持っていた刀で斬りかかる。

 先ほどのチカとのこともあって、冷静さが失われていた攻撃は、持っていた大剣によって簡単に防がれる。


「あっれー、怒っちゃったのかな?何にも興味なかったくせに」

「うるさい……」

「うーん?何を言ったのかな?」

「うるさい!」

「あー、怒っちゃったんだね。でもね、弱いよ?」


 片手で握った大剣で、シシルは簡単にキキルの刀を弾き返す。


「どうする、お姉?」


 再度挑発するシシルに、キキルは刀を上段に構えた。


「剣技”一刀両断”」

「えー、剣技じゃん。避けないとまずいかなあ?なんてね?」

「く……」


 キキルが放った剣技はシシルが簡単に大剣で防いでしまう。

 圧倒的な力の差。

 少し前に味わったことが、今度は久しぶりに会った妹にも同じことをされてしまった。

 鍔迫り合いがあったが、キキルの手に力はほとんどない。


「あー、なんだ……お姉って、残念」


 急に力がなくなった姉に対して、シシルは興味を失ったようにさらに力を強める。


「ほんとにね。ここで、終わらせてあげる」


 ぐっと力を込められると、キキルはそれを受け入れるように刀から手を離したが、大剣が届くことはなかった。

 間に割り込んだマモルが、大剣を防いでいたからだ。


「なにそれ、板?そんなもので、防げるわけないじゃん、あたいの攻撃が!」


 シシルはそう言葉にして大剣を押し込もうとするが、マモルの盾はびくともしない。

 そんなマモルをシシルは挑発する。


「へえー、お姉と寝たのかな?じゃないと、こんな弱い人、守るわけないよね?」

「どうだろうな?」

「えー、なにー……そういう言い方はあたいは嫌いなんだけど」


 シシルは不機嫌そうにそう言葉にすると、大剣を押し込むのをやめて距離をとると面倒くさそうに、ため息をつく。


「はああ……なんか、面倒くさいなあ……せっかくついでに目障りなやつを殺せると思ったのになあ……いいや、仕事だけをしよおっと」

「仕事だと?」

「あー、気になる?気になっちゃう?」

「だとしたら、どうなんだ?」

「いいよ。あたいの攻撃を簡単に防いだ、あなたなら教えてもいいなあ……というか、あたいらの仲間にならない?」

「何を言っている?」

「うーん、提案かな?」


 シシルは、そこまでのことをまくしたてるように言うと、にかっと笑う。

 その目には姉である、キキルのことは見えていない。


「ま、今からは仕事優先。じゃあねえー」


 シシルはそう言葉にすると去っていく。

 普通であれば、ここで追うはずのキキルが使いものにならないのを見て、マモルは頭をかくのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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