42、決着と弱さ
本当に一瞬だった。
チカとキキルはお互いに向かっていく。
キキルは構えていた刀を振り上げて、剣技を放つ。
「剣技”一刀両断”」
先ほどの魔物に放ったものと同じであったそれを使ったことに、マモルは驚くと同時に大丈夫なのかと心配になる。
だが、剣技を繰り出したキキルは心配は全くしていなかった。
(剣技よりも速い)
上段から振り下ろす剣よりも、チカの動きが速く感じていた。
実際には、そうではなく、チカはキキルの動き出す瞬間には何をやろうとしているのかを理解すると、キキルよりも素早く動いていただけだ。
振り下ろす場所から体を完全にそらしながら、さらには握りしめた右拳を構えている。
それは、振り下ろしたキキルの刀が再度チカに向けられる前に腹部にめり込むと、キキルは、その威力に悶絶するとともに膝をつく。
「かは……」
「大丈夫ですか?」
「強すぎ……ほんとに……」
キキルは痛さに思わず顔を歪めながらも、実力差を実感した。
(なんでなんだろう。ほんの少し前まではうちのほうが絶対に強かったはずなのに……)
キキルはそんなふうに思ったが、チカは違う考えだった。
「キキルは、考えすぎですね」
「え?」
何を言っているのだろうと、キキルは思った。
だって、察しの良さや応用力など、多くのことでチカのほうがいい案をすぐに考えてくれているからだ。
それなのに、チカに言われた言葉というのがそれであったので、思わず戸惑っていた。
「わかりませんか?」
「わかんないけど……」
「だったら言いますよ。キキルは、戦うときに、何を考えていますか?」
「それは……」
チカに聞かれたキキルは、考える。
(効率的に敵……魔物を倒す方法だよね)
「また、考えてますね?」
「え?」
「キキル、あたしはただ目の前の敵をどう対処するのがいいか、それしか考えていません」
「!」
チカにそう言われて、キキルは思わず目を見開く。
確かにそうなのだ。
キキルには才能があった。
多くの武器を扱えるという才能が……
だが、それは逆にいえば考えすぎてしまう可能性があることでもあった。
一つのことを極めていないからこそ、いざとなった時に何もできなくなる。
それが今のキキルの姿だった。
「でも、うちは……」
「はい。強いです。だからこそ、考えすぎてしまうのです」
「そんなことは……」
「では、キキルはどうやってあたしを倒しますか?」
「それは、スピードが速いから……」
「二刀流で手数を増やして攻撃しますか?」
チカはキキルが答えるよりも先に、考えていることを当てられて驚く。
だが、チカからすればかなりわかりやすいことだった。
「キキル、相手に合わせて攻撃をするのをやめることはできますか?」
「それは、でも……」
キキルは口ごもる。
先ほどからの話によって、さすがのキキルもチカの言いたいことというのがわかったのだろう。
キキルには才能がある。
だからこそ、一つのことを極める武器を使って武技を極めるのではなく、場面場面において、最適な武器を使って武技を発動させることによって局面を乗り越えてきた。
だが、一つのことを極めているチカのような存在が相手では、その一つのことがキキルの平均を超えてしまったとき、何も通用しなくなってしまうのだ。
「じゃあ、うちはどうしたらいいの?」
キキルはそう悲痛の叫びをあげる。
だが、チカは何も言うことなくすっと構えをとる。
「キキル、やりますよ」
「お、おい……」
急に始まったスパルタ的なやり取りに、マモルが入ってこようとするが、チカは無視すると、キキルに再度声をかける。
「やりますよ」
「……」
「キキル!」
痛みはあるが、ここまで言われたキキルは体を起き上がらせると、チカに向けて刀を構える。
「おい……」
「ごめん、どいて……」
マモルが立ち上がったキキルを止めようと構えた前に立ちふさがるが、キキルは押しのけると構えを再度とる。
先ほどと同じで、上段に構えて一直線に突き進み、剣技を放つ。
「剣技”一刀両断”」
痛みからか、先ほどよりも遅い剣技をチカは簡単に避けてしまう。
(はあはあ……ああ、もう、本当に……当たんないじゃん)
キキルは、そう考えると構えを解いてしまうが、それを見たチカが怒る。
「キキル、もう一度です」
「はあ?当たらないのに?」
「はい、もう一度です」
キキルからすれば、何を言っているのかわからなかった。
だって、当たらない攻撃はどうやっても当たらないのだから……
何度やっても同じ……
だが、チカは要求をする。
これを見て、キキルは昔の記憶が頭にちらつくのだった……
読んでいただきありがとうございます。
よければ次もよろしくお願いします。




