40、再会と力の差
帰らずの森に入ったチカは、気になるところを観察する。
気になるところというのは、踏み荒らされている場所だ。
というのも、そういうところでは、魔物との戦闘が行われていた可能性が高いからで、それを辿ることで、森にいるであろう冒険者に会えるだろうと考えていた。
そして、簡単に二つほど痕跡を見つけたときに、視界に何か違和感が映る。
「なんですか?」
気になって近づいたときに、それが何かわかった。
森の中に扉のようなものがあり、それが開いていた。
「迷宮なのですか?」
疑問に思い、そう言葉にするが誰も聞いていないので反応することはないが、扉が開いているということは、誰かが入っていったということなのだろうし、扉の前には見たことがあるものが置いてあった。
「これは、キキルの……」
あったものは、見たことがある武器を収納しているケースだった。
中を見ると、いくつかの武器だけが抜き取られていて、自信があるものをもって中に入ったのだろうということがわかる。
キキルであれば大丈夫。
そう考えたが、少し不安になる。
あれから数日しかたっていないし、自分自身が強くなっているのか?
それについては正直なところわからないとはいえ、何もしないというのも違う。
邪魔なら、隠れて見たらいいですよね。
どこかストーカーのような考えをもちながら、チカは迷宮に入っていく。
迷宮は森のようで、中に最初の迷宮の時も少し思っていた、見た目に反して中の大きさが違うという違和感というものを、今回は強く感じた。
入っただけでかなり広い場所ということもあり、キキルに追いつくのは不可能なのではないかと考えて下を向く。
「あれは!」
思わず声に出る。
見つけたものというのは、キキルと依頼をこなしていたときによく見たものだった。
依頼に向かったときに、ここよりも小さな森に入ったときなどにもやっていたことの一つで、迷わないために何か目印をするというものだった。
通った道に次へ行く向かう方向を示しておくことで帰るときは、その逆に向いて歩けばいいとキキルには教わっていた。
教えてもらったことがここでいきるなんて思わなかったが、チカはキキルに会えるであろう嬉しさで、迷宮を進む速度は速かった。
普通の人では見えないような距離ではあるが、チカには見える距離に近づく。
前よりもどういうわけか、目も見えるようになっている。
「何故体が強くなっているのか自分でもわかりませんが、これは使えますね」
遠くが見えることによって、最深部の状況もわかったからだ。
最深部にある迷宮の扉は開いているとはいえ、試練がなければ入ったところで何もないだろう。
そう思って目を凝らしたタイミングで最深部内で、見えた状況は違っていた。
魔物のようなものが斬られたのが見えた後、急に現れた違う魔物が今度は中にいた男性と、キキルを斬ったのが見えた。
「え?絶対にダメ、ダメ、ダメ!」
チカの口から思わずそんな言葉が漏れると同時だった。
体から魔力が溢れていくが、チカはそんなことを気にしている余裕はなかった。
ただ、一秒でも早くキキルの元へたどり着かないといけないと考えていたからだ。
それでも、届かない。
走っている今の状況では……
すぐにそう判断をしたチカは、森の木を思い切り引き抜く。
あり得ない力で引っ張られた木は、抜けると、すぐにそれを再度襲おうとしていたものに対して、投げ飛ばす。
魔力によって強化された体で投げ飛ばしたそれは、見事に何かに命中すると吹き飛ばす。
そして、チカは間に合った。
何か声をかけないといけない。
心配の……
だけど、いい言葉が見つからなかったチカが言うのは、心配ではなかった。
「キキルは、こんなに弱かったのですか?」
それだけだった。
おかしいですね……心配してここにやってきたはずでしたのに、憎まれ口を言ってしまいました。
これには、言葉にしたチカ自身が驚いていたが、言われたキキルは逆に笑っていた。
(夢じゃない?なんて、言わないほうがいいよね)
都合よく表れたチカを見て、思わずそんなことを考えるが、背中に響く痛みが現実だと教えてくれる。
キキルは、痛む背中を無視するようにして、刀を構える。
「うちだってねえ、助けなんて必要なかったけどね」
思わず軽口で返す。
(大丈夫。体は動くんだから、うちならまだやれる)
置いてきたはずのチカが、あまりにも頼りになる形で出会えたことで、キキルはすぐにそう考える。
チカは、そんなキキルに声をかける。
「行きますよ!」
「ええ!」
いつかの、魔物退治の依頼を思い出す。
少し動きが速い魔物がいたときだ。
チカは、攻撃を交わしながら、確実に攻撃を当てるのに対して、チカは攻撃がうまく当てられなかった。
そのときは、キキルにはわからなかったが、今は違った。
前衛として、見えないはずの魔物を相手にしているチカは、攻撃を確実に交わし、弾き飛ばしていた。
確かに、キキルたちが攻撃される前と後では、返り血の有無はあったが、逆にいえばそれだけだ。
だというのに、全てが見えているかのようにチカは避けるか、攻撃を弾く。
弾いたタイミングで魔物は体勢を崩し、そこをキキルが斬っていくという簡単な作業だった。
チカが来て、ほんの少しの時間で魔物制圧は終わる。
それを見て、キキルは考える。
(ああ、本当にうちは何をやってたんだろう)
だけど、ほんの数日の間に差がついたことに、キキルはただ笑みを浮かべるのだった。
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