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4、冒険者の仲間

「あれが全て、意味のなかったことだとは知りませんでした」

「いいじゃない。おかげで知り合えたんだから」

「そうなのでしょうが、あたしで本当によかったのですか?」

「当たり前じゃん。うちの攻撃を唯一避けられた人だよ。仲間にしないほうがおかしいって」

「そ、そうですか……」


 グイグイと来る女性は、名をキキル・キブンケと名乗った。

 持っているものは武器鞄とキキルは言っており、そこにある武器というのを、全て使うことができるのだそうで、かなりすごいことなのだということを教えてもらった。

 そんなすごい人とどうして一緒にいるのか?

 それは、少し前の出来事が原因だった。


 少し前に行われた、模擬戦というものは、実はキキルが周りにいた人を買収して行った見世物だったらしい。

 自分に釣り合ういい相手を見つける目的があると本人は言っていたが、実際のところ、それで選ばれたのがチカだった。

 だけど、そのことについて納得をしていないからこそ、チカはキキルに質問をする。


「あたしは、まだ何か魔物と戦ったこともありません。そんなあたしでよろしかったのでしょうか?」

「うん?大丈夫大丈夫。ああいうのって、そもそもうちよりも怖くも強くもあまりないから」

「そうですか……」


 あっけらかんと答えるということは、キキルは戦ったことがあるということなのだろう。

 だけど、それならなおさらに、どうして自分が選ばれたのだろうかと気になってしまう。


 少し前にちゃんとした冒険者試験を受けた結果。

 チカには魔力がほとんどないということがわかってしまった。

 これも呪いのせいだとはわかっていながらも、予想通りの結果に少しだけ思うことがあったのはいうまでもない。


 冒険者としてやっていくのには、魔力が必要だということを知っていたからだ。

 キキルが模擬戦のときに使った剣技というものでも、魔力を扱うことで一つの技としていると言っていた。


 冒険者になるとされている人たちの魔力というのは、普通よりも高くないと厳しいとされており、冒険者としてチカと同じように受けていた人でも、魔力が低いからと諦めるようなことを言っていた人もいたくらいだった。

 逆に、魔力を聞いて、余計に冒険者としての自信を高める人もいたという。


 そんな冒険者の基準とされている魔力の基準は百以上とされている。

 多くの人は百を超えていた。

 ちなみに、このキキルは千すらも超えており、かなりの魔力保持者だということを知った。

 だけど、それを知ってしまうと、余計に疑問に思ってしまった。


 あたしのように魔力が一桁。

 記録では二であるような、あたしとどうして冒険者としてパーティーを組もうと言ってきたのかを……


 実際に、適正試験を担当した人たちからはどうしても冒険者になりたいのか?他の道に進むのはダメなのかと聞かれたくらいだった。

 それでも、チカがなりたいのは冒険者だったので、お願いして冒険者証は発行してもらうことができた。


「魔力がなくても強ければいいのにね」

「そういうものでしょうか……」

「当たり前でしょ。何言ってるの?弱いって言ってもチカだってうちと一緒で破壊してたじゃん」

「そうなのかもしれませんが、あれに意味があるのでしょうか?」

「あるんじゃないの?実技試験としてやったのがあれだけだったんだし」

「そうですね」


 キキルが言う通り、冒険者試験として、本当に行われたことというのは、一つは常識的な文字などを読めるかどうかというものだった。

 これには、冒険者として依頼を受けた際に、依頼内容をちゃんと読めるかということが関係している。


 ここのような大都市であれば、依頼内容については、冒険者ギルドによってしっかりと管理されている。

 だけれど、小さな村などに行った際には、依頼内容もちゃんと確認しないと騙されてしまう可能性がある。

 だからこそ、文字をちゃんと読めるのかどうかという確認だった。

 チカは、いい家に生まれたこともあって、そこについては簡単だった。


 そして、次に行われたのは実技試験だった。

 実技試験に使われたのは、岩の壁。

 それも魔力によって作られているそれは、ただ攻撃するだけでは壊れないようなものだった。


 各々(おのおの)が考える強い攻撃をしていた中でも、傷をつけることには成功していても壊すというのは誰もできていなかった。

 そんなときに最初に岩の壁を壊す……

 というよりも、一刀両断したのは、このキキルだった。

 魔力を宿した斬撃だと教えてもらった、剣技と呼ばれる技によって、斬ってしまったのだった。


 冒険者試験で、岩の壁を壊すようなものたちというのは、(たぐ)いまれな存在だということで、集まっていた試験者たちも大いに盛り上がった。

 そして、最後にチカの番がやってきた。

 そのときのことを思い出す。


「武器を持たないということは、魔法ですか?」

「いいえ、あたしはその……拳で……」

「こ、拳?そ、それはその……ぶふ……が、頑張ってください」


 試験官と思われる人は、チカの言葉を聞いて思わず笑ってしまったようだった。

 だけど、実技試験が始まるまで、チカ自身知らなかった。

 魔力を扱うためにも、武器が必要だということを……


 魔法の家系で育っていたチカは、そもそも魔法制御がまだうまくない場合は杖を使うなどして補うということは知っていたけれど、魔法しか使わないものしか周りにいなかったことで、それ以外の冒険者が武器を扱い、さらには、魔力の扱いにたける人が武器を扱うことによって武器に魔力を宿すとは思っていなかった。


 そんなこともあり、多くの冒険者が持っているのは扱いやすいとされている剣であったが、珍しいものでいえば盾や見たこともない武器もあった。

 だけど、その中でも何も装備していないチカがやったこと。

 岩の壁の前に立ったチカに対して、試験官は少しバカにするかのような声音で声をかける。


「けがだけはしないでくれよ。回復するのに時間かかるしな」


 バカにされたことくらいはわかっている。

 でも、そんなことを気にすることはない。

 だってまだ何もしていないのだから……


「全力で殴ります」


 そう宣言して、拳を固める。

 魔力で固めた岩の壁。

 確かに壊せるとは思っていない。

 でも、壊せなくても少しでも何かが起こればと思っていた。

 周りはバカにしたように見ていた。

 だけどあたしは、必殺の気合を入れた拳によって、岩の壁を粉砕したのだった。


「本当に、あのときの試験官たちの顔はよかったよね」

「そ、そうなのでしょうか?」

「そうそう、チカは強いよ、うちが保証するって、だから行こ。依頼にね」


 キキルはそう笑顔で言うが、チカは戸惑ってしまう。


「そんなにすぐに依頼を受けていいものなのでしょうか?」

「いいのいいの、そもそも依頼を受けないと冒険者ランク?も上がんないんだもん。面倒くさいから、すぐにいっぱい受けようよ」

「そうですね」


 キキルが自信満々にいけるというものだから、思わず同意する。

 そうして、初日からチカたちは冒険へと向かっていくことになった。

 最初の冒険はうまくいかない。

 ましてや、あたしみたいなできるかもわからない存在と一緒に……

 そう考えていたのに、依頼を行うとき、キキルがただものではないということを思い知ることになることは、この時は知るよしもなかった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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