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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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39、誘い込まれて

 チカが森へと入ったタイミングで、キキルたちはようやく迷宮の最深部へとたどり着いていた。


「はあはあ、遠いって」

「ぜー、ぜー……ほんとな」


 二人がそう言葉にするのも無理はなかった。

 キキルたちが入った迷宮は、見た目の通り森のようだった。

 最初に入った迷宮がただのレンガでできた場所だったのに対して、今回は中が広大な森のようだった。

 迷宮は、封印されている大魔法使いたちによって作り出されることは知っていても、魔力によって形が変化をするなどということを、普通は誰も知らない。

 よって、迷宮が森になっていたのを知らなかった二人は、休憩をしながらも歩きまわり、なんとか最深部にたどり着くことができた。


「どうする?」

「入るんじゃねえのか?」

「ええ、入りたい気持ちはうちだってあるけどね。開けたら、不意を突かれたなんてことになったら、本末転倒でしょ?」

「まあ、わかるが……だったら、どうするんだ?」

「準備を少しね」


 場所がわかった以上は、それが一番いいだろうと考えた。

 最初に迷宮に入ったときには、ここまで広いものだとは思っておらず、持ってきたのは簡単な携帯食料のみだったということもあり、このまま部屋に入り、試練で強い魔物と戦わなければいけなくなってしまった場合に、対応できるかわからなかったからだ。


「ちゃんと行き方はわかったんだから、ここで帰ったところでもう一回来たらいいだけでしょ」

「そうだな」


 この意見に関しては、マモルも同じで、迷宮の外での戦闘と、歩きなれない場所を歩くことによって、思った以上に疲労が蓄積(ちくせき)されていた。

 次にやることが決まったキキルたちは、戻るために踵を返そうとしたときだった。

 閉まっていたはずの最深部の扉が開く。


「なあ……」

「言われなくても見えてるけど」


 まるで中に入れと言われているようだ。

 キキルとマモルは顔を見合わせると頷く。

 お互いに行くという決心をしたからだ。


 二人は息を整えると最深部の部屋へと入っていくと、そこはこれまでの森ではなく普通だった。


「統一感がない」

「お前なあ、そういうことを言うなよ」

「だって、仕方ないでしょ」


 キキルは、そう言葉にしながらも警戒するようにして武器に手をかける。

 最初の迷宮であった失敗をもう二度としないためだった。


「何もないぞ」


 期待外れだと思ったのか、マモルはそう言葉にするが、キキルはため息をつく。


「言いたいことはわかるけど、そもそも迷宮の最深部は何もないの」

「そうなのか?」

「うん。そうなの」


 とはいえ、何かがある可能性もある。

 そんなことを考えていたときだった。

 カタンという音が鳴る。


「マモル!」

「わかってる!」


 音がするというのは、何かがいる可能性があるということだ。

 その警戒はどうやら当たっていた。

 一瞬の音が聞こえたのちに、何かが狙ってきたのを感じていたキキルはバックステップをする。

 すると、キキルがいた場所を何かが切り裂いたと同時に姿が見える。


「何、今の……」

「わからねえが、何かはいたぞ」

「そんなのうちだってわかるから」


 その何かを聞いているというのに、何をわからないことを言っているのだろうか?

 思わずキキルはそう言葉にしそうになるが、あまり大きな声で話すことによって、何か……

 魔物だと思われる、そいつの動きがわからないと攻撃も避けることはできない。


「はあ!」

「うお、あぶねえ!」


 音によって、マモルに攻撃しようとしたのが分かったキキルは、あえてマモルに攻撃をする。

 さすがに警戒しているときの動きは、認めるものがあり、キキルの攻撃を避けるのだが、それでいい。

 これによって無理やり攻撃をかわすことができる。

 そのことに気付いたのだろう、マモルは口にする。


「助かった。だがな、もう少しやり方があるだろ!」

「なんで?まだまだ警戒はしておいて」

「わかってるっての」


 やり方は確かによくないものだったが、無傷でいられるのはキキルのおかげだということをわかっているのだろう。

 とはいえ、どこにいるのかはわからない以上、こちらからできることはない。

 キキルがさっきの攻撃がわかったのは、その魔物であろう何かの使っているものが刃物だったからだ。

 刃物の扱いに慣れているからこそ、刃物であれば動くだけで音がわかるのか、攻撃の動きが大きいからわかるのかもしれないが……


 よって、狙うべきは攻撃のタイミングだとキキルはすぐに判断する。


「盾!」

「その呼び方は、さすがに酷いだろ!」


 キキルが声をかけると、文句を言いながらもマモルはキキルの近くに来る。

 そして、剣ではなく刀を背中から抜くと上段に構える。

 見えない魔物に対して、マモルはあまり役に立ちそうにない。

 であれば、キキルが対処しなくてはいけないのは当たり前だ。

 刀ならば、刀身が普通の剣よりも長いこともあり、マモルに向けられた攻撃もカバーすることができるだろう。

 だが、魔物もそのことをわかっているかのように、なかなか攻撃をしてこない。


「本当にいるのか?」

「うるさい!」


 何も起きないことによって、マモルは不安定になるがキキルは、それを聞いて余計に冷静になる。

(今度こそは、うちが巻き込んだ以上は傷つけない)


「すー……はあー……」


 音はまだ聞こえない。

 だが、気配を感じていた。

 そして、攻撃はくる。

 ザっという音とともに、何かが刃物を振り上げる音がするが、その刃物が二人にたどり着くより早く、キキルは構えていた剣に一瞬にして魔力を宿すと振るう。


「剣技”一刀両断”」


 ザンと音が鳴り、今まさに刃物を振り下ろそうとした魔物は、キキルの剣技によって斬られる。


「おおー、やったな!」


 盛り上がるマモルではあったが、次の瞬間だった。

 背中に熱い何かが走る感触がくる。

 何かに斬られたと気づいたときには、地面に倒れていた。


「なに?!」


 倒れた魔物を見ながらも、急にマモルが斬られたことに驚いていると、今度はキキルも背中に斬られた感触がある。


「くうううううう……」


 なんとか寸前で音が聞こえていたため、浅めに切られて倒れることはなかったものの、ジンジンと痛みがある。

(痛い、痛い……なんで?)

 思わず周りを見ると、まるで嘲笑うかのように魔物たちが姿が二人の返り血でわかる。

 一体は倒したとはいえ、残りは四。

 最初から五体いたということなのだろう。


「はは……」


 思わず魔物の多さに笑ってしまう。

(やっぱり、引き返せばよかったのかな……)

 思わず、そんなことを考えてしまった。


 傷を負った、苦労して倒した魔物が、後四体いる。

 それだけで絶望する状況だった。

(何が、なんでもできるはずって……結局うちは何にもできなかったじゃん)

 キキルは握っていた刀に力が入らない。    

 思わず刀を落としそうになったときだった。

 起きているキキルの元へ魔物が攻撃を仕掛けてくるのだが、そいつは吹き飛んでいった。

 何が起きたのかわからず、思わず飛んでいった方向を見ると、どこからか飛んできた木によって吹き飛ばされていた。

 あり得ないような光景に、思わず目を大きく開けて驚いていると、懐かしい声がする。


「キキルは、こんなに弱かったのですか?」


 白い髪をなびかせたチカが、そんな言葉とともに立っていた。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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