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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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31、変化する関係

 スイがチカから離れたタイミングで、クロが言葉にする。


「いい、いいぞ!お前たちであれば我をなんとかできるな!」

「何を言って……」


 るんですか?と聞こうとしたが、大魔法使いであるクロの姿が気づけば消えていた。

 見えるのは、草原だけだけで、スイの目の前には見たことがある短剣が刺さっている。


「スイ……」

「大丈夫ですので、スイはお姉様の力になりたいのです」

「そっか……」


 スイは刺さっていた短剣を手に取ると同時に光があたりを包む。

 光が収まったときには見知った人たちがいた。


「おお、戻ってきたか!」

「はい」

「それは!」


 ギルドマスターはすぐにスイの手に握られている短剣に気付いた。

(これがあるということは、試練を乗り越えたということだな。そうなると……)

 そして、何かを考えるような仕草を見せる。


「何があったのかを教えてもらってもいいか?」

「はい。あの草原で魔物と戦いました」

「それが、試練だったのか……」

「そうみたいですね。同じ短剣をもらいました」


 とはいえ、チカからすれば何が起こっているのかわからない。


「ギルドマスターは、この状況を予想していたのですか?」

「いや、それはない。何が起こるのかがわかっているのであれば、それはチカ……お前の父親であるカイズに聞くことだな」

「お父様にですか?」

「ああ……何もかもがわかるはずだ」


 ギルドマスターはそう言葉にするだけで、チカたちには何も教えてくれなかった。

 それでもわからないことばかりだったのは確かだった。

 もし、父であるカイズが何かを知っているのであれば、戻ったときにスイとともに聞く必要があると、チカは考えていたとき声がかかる。


「お疲れ」

「お疲れ様です」

「結局僕らが来た意味はあったのか?」

「こら、カイ……そういうことを言わない」


 カイとアイは二人を労った後、そんなことを口にする。

 確かに二人からすれば何をしに来たのか、わからないだろう。


「ま、そういうな。何かあったときには、回復魔法が役に立つんだからな」


 まるでギルドマスターは、ここでスイとチカが試練に巻き込まれるであろうことを知っているように言葉にする。

 何を知っているというのだろうか?

 チカはそう思うが、先ほどの会話から聞くのであれば、父に聞くべきだということなのだろう。


「じゃあ、戻るぞ」


 ギルドマスターの声によって、全員が戻るために歩きだす。

 試練の前とは違い、スイはチカから離れようとはしない。

 そして、警護に来ていたはずの二人も、スイを引き離そうとはしない。

 お父様が何を隠しているのかを教えてもらいましょうか……

 戻る中でそう考えていたチカだったが、警護の一人が後ろからチカのことを凝視していたのは気づくことがなかった。


 ※


「はあ、はあ……」


 中央都市で集めた情報を頼りに、キキルは変わった魔物と戦っていた。

 見た目は魚ではあるが、何故か人の足と手が生えている。

 戦闘も生えているその手と足で、高速の蹴りと拳を叩き込んでくるというスタイルで、リーチは武器を使っているキキルのほうが有利なはずなのに、有効な手がない。


「おい、大丈夫かよ!」

「は?誰?」

「話は後だ、くるぞ!」


 急に出てきた男は、魚の攻撃を持っていた盾で防ぐ。


「何がしたいわけ?」

「攻撃を防ぎたいだけだ!」


 魚が攻撃を繰り出すが、それを盾を持った男が構えて防ぐ。

 急に入ってきた存在にキキルは思わず声を荒げる。


「邪魔!」

「邪魔ってなあ……俺だって、攻撃を防ぐことしかできないんだから、仕方ないだろ?」

「だったら、武器を持てばいいだけでしょ!」

「確かにな、持つことくらいはできる……だけどな、俺には武器に魔力を(まと)えないんだ」

「はあ?」


 キキルは急に出てきた男に対して、ヤバいものを見たと思ってしまう。

 だって、冒険者になってある程度の依頼をこなそうと思えば、武器を扱った武技か、魔法のどちらかで魔物を倒す必要があるからだ。

 なのに、男は盾しか使えないと言っているからだ。


 そう、この男。

 マモルは、盾にしか魔力を宿すことができなかった。

 元々、孤児として中央都市で暮らしていた子供であったが、孤児であったことから節約生活を行うことが多かった。

 そのせいで渇望していた、お金もちという存在に……

 そこで、孤児からでもお金を稼ぐとなれば、冒険者だと考えた。


 どういうわけか、冒険者になる素質はあったようで、魔力は高かった。

 だけど、孤児であったため、武器を扱ったことがなく、使える武器がわからなかったマモルは全ての武器を使ったが……

 何も武技を扱うこともできず、さらにいえば流した魔力がうまく使えず武器を魔力で破壊するか、武器が魔力を弾くというあり得ないようなことが起きてしまっていた。

 そして、諦めかけていたとき、使えたものというのが盾だった。


 気づいたときには、盾で攻撃を防げるということはわかった。

 だが、どれだけやっても盾で攻撃ができる感じがしなかったし、もし攻撃ができたとしても投げる以外に選択肢がなかった結果、それも諦めた。

 よってたどり着いた結論というのが、強い人についていって役に立つようにするというものだが……


 これまで一人でギルドにやってくる人はいなかった。

 そんなときに見かけたのが、キキルだった。

 冒険者ランクが九という、それだけで引く手あまたであったが、キキルは一人で戦うことに固執(こしつ)しているようで、誰も寄せ付けなかった。

 だけど、マモルからすれば好都合なことだった。

(なんとかしてついていく!そして役にたってやる!)

 マモルはそう考えて、見ていた結果、勝手に参戦したのだった。


「俺が攻撃を防ぐから、攻撃をしてくれ!」

「何を……」

「いいから!」


 男はそう言葉にして後ろをチラッと見る。

 その姿が、どこかの誰かに似ていたキキルは思わず舌打ちをすると、魔力を高める。

 何かをしようと動いたキキルのことを魔物もわかったのだろう、なんとかして男を押し切ってキキルに攻撃をしようとするが、その間にキキルは背中から刀を抜き去る。


「ギャアアアアア!」

「うるせえ、てめえの攻撃くらいは防げんだよ!」

「交わしなさい、剣技”絶斬”」

「うお!」


 声とともにマモルはわざと力を弱める。

 それによって、魚の魔物はマモルに乗っかるようにして前にいくが、すぐにそこにキキルが放った剣技が通過する。

 ザシュっと音が鳴り、魚の頭はコアごと文字通り真っ二つになった。


 すぐに刀を背中に直すとその場を離れようとしたが、それよりも速く目の前に男。

 マモルが土下座をする。


「俺も連れてってくれ!」

「はあ?」

「この通りだ!」


 必死に頼み込む姿に、キキルはなんともいえなくなる。

(武器も使えないのなら、ここで見捨てるのはダメか……)

 とはいえ、すぐにそう結論を出すと、ため息をつく。


「はあ……いいけど、足手まといにだけはならないでよ」

「任せろ!」


 こうして、二人は一緒に迷宮を探すことになったのが昨日だったのだが、見つからず中央都市へ帰った後、再度迷宮を探すために今日も森へとやってきたとき、キキルの隣にはマモルがいた。


「いやー、これで俺も大金を稼げるぜ!」

「そう思うなら、土下座しないで頼みなさいよ!」


 どういうわけか、土下座で頼み込まれたキキルは、マモルと一緒に冒険をすることになったのだ。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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