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3、冒険者試験?

 父の説明不足によって、急がないといけないことを知らなかったチカは、試験会場に向かっていた。

 試験会場というのは、都市のはずれだ。

 これから試験もあることを考えれば、あまり体力を使うような全力疾走はしないようにしていた。


 それに、全力で走ることになれば、少し周りの人たちを驚かせてしまう可能性がある。

 どうしてなのか?というのは、少しすればわかることだったので、今は気にすることではない。


 少しして、試験会場が見えてくる。

 すでに人だかりができているのを見ると、間違いないだろう。

 試験会場と思われる場所は歓声などがあがって、盛り上がっている。

 中心が盛り上がっていることもあって、遅れてやってきたもののチカが注目されることなどない。


「何をやっているのかしら?」


 気になったチカは、なんとかして中心を見ようとする。

 なんとか見れた先では、どうやら試験者同士で模擬戦をやっているらしい。

 一人の女性が男の人の剣を弾き飛ばしているのが見えた。


「ぐはあ!」

「はあ……よっわ……」

「勝者キキル!」


 すぐに勝ったほうの名前が呼ばれる。

 

「ねえ、もっと相手になるやつはいないわけ?」


 勝者の女性はそんなことを言っている。

 かなり強いのか、次の挑戦者はなかなか出ていない。

 ここにいるのは、合計で三十人くらいに見えるが、その誰もが名乗りをあげないことを考えるとすでに何人かは戦った後なのだろうと後から来たチカは考える。

 予想は当たっていたのか、周りにいた一人がキキルと呼ばれていた女性に声をかける。


「もういいだろう。このままやっても、あなたより強い人はいません」

「えー、それはそれでうちはつまらないんだけど」


 そう女性は言葉にする。 

 このままいけば、終わってしまいそうだ。

 これが試験であるのであれば、何もアピールをしていないのはかなり不利になる。

 そう考えたチカは、手を挙げると聞こえるように声をあげる。


「はい、あたしはどうでしょうか」


 それに、どれほど強いのかというのも気になったというのもある。

 この鍛えた体がどれほど通用するのか、試すのにも良い機会になると考えた。

 声だけで女性とはわかったのだろうが、姿が見えないこともあり審判をしていた男性がチカを呼ぶ。


「では、前へ」

「はい」


 呼ばれたチカは、人混みをかきわけるようにして前に出る。

 周りから「ほんきかよ」「あの強さを見てないのか?」などと声が聞こえるが、そもそも人が多すぎてちゃんと見えていないのだからわからない。

 負けても、強いというのであればチカ自身がもう一度冒険者になる前に鍛える目標にもなると思ったからだ。

 前へと出て行ったチカのことをキキルは見るを言う。


「へえ、うちと戦いたいってのは、あんたね?」

「はい」

「そ……見たところ、冒険者の見た目じゃないけど」

「すみません。それに関しましては、服装を間違えてしまっただけですので」


 すでに冒険者ギルドで間違いを犯していたチカは謝る。

 だけど、その言葉に特に気にした様子もなくキキルは期待するように言う。


「まあ戦うっていうならいいけど。じゃあ、武器を出して」


 チカは戸惑ってしまう。

 だって、チカには武器がないからだ。

 これまで鍛えてきたのは肉体であり、武器を扱う術ではなかったからだ。


 だけど、それは普通のことではなかったらしく、武器を出さないのを見たキキルは言う。


「武器を持たないなんて、戦いを舐めているの?」

「舐めているわけではありません。武器を扱ったことがありませんので」


 チカは素直に答える。

 そのチカの返答が面白かったのか、キキルは笑いだす。


「扱ったことがないって!ははは!冒険者になりたいとここにやってきたのに、そんなこともできないっていうの?」

「できないというよりも、やってこなかっただけです」

「だったら、ほら」


 キキルはそう言って、顎である方向を示す。

 そこにあったのは、箱だった。


「その箱はうちの武器箱でね。武器を収納するのにはちょうどいいの。その中の一つを使えばいいわよ」

「あ、ありがとうございます」


 言われた通りに、箱を開けると、中には幾つかの武器が入っていた。

 チカにはどうやって使う武器なのかはわからないけれど、どれか一つを使えということなので、適当に手に取る。


「軽い……」


 チカが武器を持った感想はそれだった。


 いつもは体のみを鍛えることが多く、武器を扱ったことはなかった。

 だから、武器がどんなものなのかわからなかったけれど、こういうものなんだと知ることができたものの何を選ぶべきか悩む。


「どう?」

「では、こちらを」


 他の武器も同じように軽かったので、その中でも丈夫そうなものを選ぶ。


「へえ」

「どうかしましたか?」

「別に、そんなのでいいんだって思って」

「武器がどういうものか、初めて知りましたから」

「そっかそっか……すぐ終わるのも嫌だし、少しくらいは手加減をしてあげる」


 キキルは楽しそうに言う。

 チカとキキルは少しの距離をとる。


「では、始め!」


 そう審判のような人が言ったところで、キキルが動く。


「さあ、うちの攻撃を避けてみな!」


 キキルはそう言葉にすると、向かってくる。

(最初の一撃が反応できなければ、終わり)

 キキルはそう考えて、構えていた剣を振るったが、剣は空を斬るだけだった。

(外した?)

 キキルはもう一撃振るうが、それも同じように当たらない。

(完全に交わされている?)

 キキルは驚いていたが、チカにとっては普通のことだった。


 体を鍛えているときに、いろいろ試行錯誤をした結果、もし冒険者になるのであれば瞬発力も鍛えなければいけないと考えた。

 では、瞬発力を鍛えるために必要なこととは、なんだろう?

 外に出て、体を鍛えるということができればよかったけれど、それができなかったチカは、あるものを作ることにした。


 数年前に、家の地下に誰も知らない部屋があるのを知った。

 そこで、いろいろなものを自作して持ち込むことにした。

 木でできたそれは天井につるされており、不規則に襲ってくるように毎回適当に投げては避けてを繰り返す。

 気づけばその量は増えていた。

 高さを変えたりしながらつけていき、気づけばかなり避けずらいものにはなっていたが、一つずつ成長をしていたからか、最終的には避けることができるようになったのだ。


 避けるために必要なこととして、全部の動きを予測しないといけなかった。

 そして、それは今も生きている。

 目の前の女性、キキルが攻撃してきていても、避けることは難しくない。


 例えそれが、魔力を伴った鋭い斬撃だとしても……


「ふーん、避けるじゃん」

「はい、ありがとうございます」

「でも、攻撃はしないんだ?」

「剣の扱いがうまくありませんから」

「そうなの?でも、ほら振ってみればいいんじゃない?」


 キキルはそう言葉にすると、適当に剣を振るう。

 チカも同じように剣を振るったけれど、キキルのように鋭い剣筋ではない。

 力任せだということを自分自身、見ればわかってしまった。


 どうやれば、うまく振れるのかわかりませんね。

 何かコツがあるということでしょうか?


 わからずにいたときだった。


「隙あり!剣技”スクエア”」


 キキルは攻撃を仕掛けてくる。

 それも、先ほどよりもどういうわけか速い。

 だけれど、攻撃される前に攻撃されることをわかっていれば、避けることは容易かった。


「は?」

「どうかしましたか?」

「ううん、別に」


(完全に死角からの攻撃だったのに、避けた?)

 キキルは驚く。

 そんなときだった。


「何をやっている!」


 大きな声が聞こえたと同時に、キキルは言う。


「あーあ、終わりか……」

「ど、どういうことでしょうか?」


 戸惑いながらも、チカは突然の状況に身を任せるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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