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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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28/122

28、再度迷宮へ

 時間はすぐに過ぎて、次の日はやってくる。

 迷宮に再度入る日がやってきた。

 ギルドからはギルドマスターとサネさんが、そして、まとめるものとしてキンゲン家からは、どういうわけか当主である父、カイズではなく一番下の妹であるスイが来ている。


「お姉様!」

「ス、スイ?どうしてここに?」

「もちろん、スイがここに来たのはお父様に言われて!」

「そ、そう……」


 まさかの人物がいて、チカは戸惑う。

 それとは別に、初めて会ったカイとアイも同じように戸惑っていた。


「あの、二人はどういう知り合いなのでしょうか?」

「えっと……」

「お姉様とスイは、もちろん最愛の姉妹ですよね!」

「えっと、そうだね」


 スイの力強い言葉にチカは頷くことしかできない。

 まるで脅迫しているかのような勢いなのはいつものことではあったのだが、どうしてこのようなことになってしまったのか……

 それは少し前に遡る。


 元々チカには妹が二人いる。

 年齢は一つ下と二つ下で、年子であり、上の子がレイ、下の子がスイという名前だった。

 最初のことは自分のことをなんとかしないとと考えていたこともあって、妹がいてもそれがどうかしたのかと思うばかりだった。

 妹の二人も上の子は特に、母親とチカのことを呪われた子として扱うことによってネチネチと言うことが多かった。

 ただ、下の妹であるスイは、何かを言うこともなかった。

 これは、スイに高い水属性魔法の才能があったからだ。


 年齢は一つ下ながらも、上のレイよりも高い魔法の適正があったため、こちらもチカと同じように自分のことで精一杯だったのかもしれない。

 そんなときに一つの事件が起きた。

 チカはいつものように朝練ということで屋敷から外である森の中に出て行った。


 スイはそれを見て、何をしているのだろうかと興味を持って後をついていった。

 とはいえ、チカは普通とは違う勢いで体を鍛えていたため、魔法ばかりを修行していたスイはそのスピードに追い付くことができなかった。

 それもあって、気づけばスイは迷子になっていた。


「ここは……ひぃ……」


 知らない場所で、さらには森の中ということもあり、動物の鳴き声がするたびにスイは驚きの声をあげる。


「こんなことなら、外に出なければよかったで……」

「ギャアギャア」


 今度は鳥が鳴く。

 スイは体を震わせながら、なんとか落ち着かせると、あることを思い出す。


「あの魔法を使って、出るんだから」


 最近覚えた魔法のことだった。

 水魔法の一つ、ウォーターキャノンは名前の通り、魔力で固めた水を勢いよく発射するもので、破壊力はかなりのものだった。

 これを使うことでスイは、真っ直ぐ屋敷に向かって飛ばせば、屋敷までの道が広がると考えた。

 成長した後であれば、そんな危ないことをするのはあり得ないと考えるだろうが、その時はそれが最善だと考えてしまった。

 スイは両手を魔法を放つほうに向けて伸ばすと、魔力を高めて集中した。


「水魔法”ウォーターキャ……”」

「ギャアギャアギャアギャア」


 スイが魔力を高めたせいかはわからないが、魔法を発動しようとしたときには鳥が騒ぎに騒ぎ、スイの魔法は発動途中で暴走を開始した。

 屋敷までの道を開けようとその時はいつもより魔力を込めていたからこそ、暴走してしまったときには止めようがなかった。


「なんで、止まらない、どうして……痛い、痛い、痛い……」


 気づけば魔力によって手が傷ついている。

 それでも、魔法をなんとか制御しようと両手に力を込めた。

 もし、両手の力を緩めてしまうと、今度は体に向かってくるとわかっていたからだ。


「はあはあ……やだ、だめ……いやあ……」


 気づけば涙を流して前が見えなくなっていたとき、風が吹き荒れたように感じた。

 そして、詳しくは見えていなかったけれど、魔力暴走はどうやったのかはわからなかったが、チカが消したのだった。


「え、えっと、大丈夫かな、スイ?」


 遠慮しながらも、声をかけたチカにスイは安心した。


「あり、ありがとうございます、お姉様ぁぁ!」


 そう言葉にしながら、スイはチカに抱き着いたのだった。


「ということが、スイとお姉様の間にありまして」

「そうなんだ」

「はい。ですので、スイとお姉様には姉妹の大きな、大きな絆があるのです!」


 自信満々にそう言葉にするスイを、チカは恥ずかしそうに見ているが、その中でやはり一人だけ険しい顔をするものもいた。

 ギルドマスターだ。

(やはり、おかしい。どうして魔力がないはずのチカが魔力暴走を止められるんだ?そもそも、魔力暴走は止めることができるのか?)

 いろいろなチカの話を聞けば聞くほど、普通ではないとしか思えないからだ。

 白い髪をもつというのは、魔力を持たない呪われた存在なはずなのだから……


 だが、そこで思い直す。

 そもそも魔力を持たないとされているのは本当なのか?

 どんな人でも、生まれながらにして魔力を持つというのは当たり前のことなのだから……


 とはいえ、ここでは答えはでない。

 ギルドマスターはそう考えると、話を進める。


「いいか、今回の迷宮探索についての説明をしておく。まず、ギルドからはギルドマスターたるこのギルドと、チカ、そしてアイとカイの四人だ。ここを治めるキンゲン家からは、スイと護衛に騎士二人が同行することになっている。いいな」


 すぐにまとめて迷宮内に入ろうとしたが、護衛騎士の一人の男が手を上げる。


「どうした?」

「俺たちは、お嬢様の護衛をしに来ただけだ、何かあっても、そっちのやつらを守ることはねえぞ、いいか?」

「ふ……そんなことか、別にいいだろ?」


 ギルドマスターはチカたちに確認を取る。


「はい。問題ありません」


 普通にそう答えるチカを見て、男は一瞬苦虫を嚙み潰したような顔をしたが、すぐに取り繕うとスイに声をかける。


「そうですか、では行きますよ。お嬢様」

「え、はい」


 さすがにスイもここでわがままを言うことはしないで、離れていく。

 そして、ようやくというべきか迷宮へと入るのだった。


 迷宮へと入る順番はギルドマスターを戦闘に次にスイ達、最後にチカたちという感じだ。

 中はいつもと変わらず何も起こるような感じではない。


「何も変わらんな」


 先頭を行くギルドマスターも同じように感じているらしく、何か考える仕草だ。

 奥まで進んで行っても同じで何もない。

 今回は、一番最後の部屋も扉が開いていることもあって、本当に違和感がない。


「一応部屋の中を一通り確認するか、手伝ってくれ」

「わかりました」


 大きくない場所ではあるものの、全員で確認することで、何か見つけられると考えたギルドマスターの提案で、別れて部屋を確認する。

 少しして、スイが護衛たちの目を盗むと、チカの近くに来る。


「お姉様」

「どうしたの?」

「じ……え?」

「な、なに?」


 そして、この時のために相談事を考えていたスイが聞こうとしたときだった。

 景色が変わる。

 先ほどまでいた岩で作られた迷宮ではなく、一面が草原の世界だ。


「ここは」

「お姉様?!」

「よお、久しぶりだな」

「!」


 チカは背後から急に聞こえた声に驚きながらも、スイを庇うように動く。

 声をかけてきた人物は、その動きを見ながら笑う。


「おいおい、そんなに警戒しないでくれよ、大魔法使い様のことをな」


 そう、ここに連れてきた大魔法使いの男は言葉にするのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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