19、吐露する言葉
一人の少年と少女は兄弟であり、小さいながらも両親が残してくれていた家に住んでいた。
両親が残してくれたお金で、お互いに成人であるとされている十五歳までは暮らしていける予定だった。
周りの大人たちも、そんな二人のことを陰ながら応援していた。
苦労をしながらも、二人はこのまま暮らしていけるものだと思っていた。
だけど事態が急変したのは一年前だった。
少女が、成人である十五歳の前、そう十四歳で……
とはいえ、そのころ魔法を扱う才能に目覚め始めていた少年は、すぐに少女の治療を行った。
回復魔法ヒール。
さらには、解毒魔法キュア。
世間に知られている二つの魔法を試した。
通常の病気であればヒールで、何かよくない病気であったとしてもその両方を使うことによって、普通であれば治るはずだった。
だが、普通の病気でなかった少女の病気は、実際には治ることがなかった。
そこで少年は藁にも縋る思いで情報を集め始めた。
そんなとき、ある噂を耳にする。
それは、ほぼ全ての病気を治せるという薬だった。
少年はその薬を求めてとある人物に会うことになった。
それが、今の雇い主とされる人物だ。
そして、薬をもらう変わりに雇い主の依頼をこなしていくというものだった。
だから、少年は幼いながらも自分の能力である魔法を使って雇い主たちの依頼をこなし、それによってもらった薬を少年の姉に与えていた。
すぐに治ると思っていたが、実際にはそううまくいくものではなかった。
魔法でも治ることがなかった病気ということもあり、薬を一回飲んだところで治るはずがないと教えてもらっていた少年は、何度も雇い主の依頼をこなしていくことになる。
そして、前回とうとうそんな依頼であることが起きる。
後少しのところで、死んでしまうのではと考えていたタイミングだった。
気づけば助けられていた。
「姉さん……」
長い髪をなびかせて、立っている姿に思わず口をついた言葉だった。
だが、髪の色といい、実際には他人だということはすぐにわかった。
その後は、助けてもらったというのに不義理をして結局はその相手に今、捕まってしまっている。
そして、どうしようもなくなったカイはそんな内容をチカに打ち明けてしまった。
どうして打ち明けたのか?それは、決して叶わないと思ったからなのか、それとも同情を誘ってもらいたかったのか?
カイ自身、それについてはわかっていない。
とはいえ、打ち明けてしまった以上……
というよりも捕まってしまった以上、もう姉が助からないということをカイはわかっていた。
(ごめん、姉さん……)
そう心の中で謝ったときだった。
「あたしをお姉さんのところに連れて行ってもらっていいですか?」
目の前の女性てある、チカがそんなことを言ったのは……
思わず何を言ったのか理解ができなかったカイは、驚きの表情で固まってしまう。
「な、何を言って……」
「聞こえませんでしたか?あたしを、カイ君のお姉さんに会わせていただけませんか?」
再度チカはそう言葉にする。
だが、同じことを言われても、カイには意味がわからないことだった。
どうして、目の前にいるチカが自身の姉に会いたいと言っているのかを……
普通であれば、カイを殴りとばせば、気絶させれば終わりのはずなのに、チカがそんなことを言うのだから……
どうしていいかわからず、カイは口にする。
「どうして、僕の姉さんに会いたいんですか?」
「そうですね。もしかすれば、その病気を治せるかもしれませんからになりますね」
「!」
それは、驚くべき内容だった。
でも、だからこそ警戒する内容だった。
病気を治せると確かに言うものは多かった。
だが、そんな弱った姉に乱暴するだけの目的で近づくものもいたからだ。
(そんなことをするのか?僕より明らかに強いのに?)
そう、カイよりも強いチカを見て、思わずそう考える。
もし姉に乱暴をするのであれば、すでにカイをここで吹っ飛ばすなりをして、どこにいるのか情報を聞き出し襲えばいいだけだからだ。
「ダメですか?」
困ったように口にするチカをカイは思わず突き飛ばす。
「きゃ……」
完全に力を抜いていたチカは、魔法ではなくただの体での突き飛ばしをされると思っていなくて、突き飛ばされてしまう。
尻もちをつくことはなくても、掴んでいた手は離れてしまう。
「ごめん、ね……」
その姿を見て、再度カイは何かを言いかけたが、すぐに距離をとる。
チカは距離が離れたカイを見る。
「カイ君……」
「僕は……最低で、これ以上は関わらないでくれ!守りの壁"プロテクト"」
カイはすぐに魔法を唱える。
拒絶の壁だった。
それを作ったカイは、その場を離れるのだった。
チカはカイが十分距離をとったところで、すぐに行動を起こす。
その行動というは、周りの人から見れば、ただのお節介であり、さらにいえば迷惑な行動なのかもしれない。
だけど、チカ自身が放っておけないと感じたのだから仕方ないことだった。
「あの表情を見て、無視はできません」
例えお節介だと言われようとも、やるべきだと考えたチカはカイの後を追ったのだった。
カイは少しの用事を済ませると、雇い主のもとへ向かった。
無理だと伝える予定だった。
そもそも勝てる見込みもないのだから仕方なかった。
そんな話しをしようといつものようにノックをした後に中に入る。
別にいつものように依頼はどうなったのかを聞かれるだけなはずだった。
だというのに気づけば頭部に衝撃を受け、意識は遠のいていた。
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