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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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15、中央都市と見えないもの

「すごいですね、馬車が扱えるとは……」

「こ、これくらいは……でも、特別なことは何もできないですよ」

「特別なこと?」


 思わずチカはそう聞く。


「はい。僕が使えるのは魔法なのですが、その魔法も、全てが中途半端な能力しかありませんから……」


 どこか残念そうに顔を伏せてカイはそう言葉にする。

 この言葉の通りカイは、器用貧乏といえばいいのか、いろいろなことはできるが、その全ては雑用係としての役割だった。

 今回も雑用係として、他の冒険者たちと同行していたからだ。

 そうとは知らず、チカは不思議そうに言葉にする。


「中途半端とは、どういうことでしょうか?見たことがない魔法を多く使っていたように思えるのですが」

「確かに、見たことがない魔法を扱うことができるかもしれません。ですが、逆に僕にはそういうことしかできないんです」


 カイは自信なくさらにそう言葉にする。

 だけど、それを聞いたチカは思ってしまう。

 かなりすごいことですよねと……


 元々チカは魔法が扱える家系でありながらも魔法が扱えない存在だ。

 だからということもあるが、できないことが当たり前なのだ。

 だからこそ、できることが一つでも多いということは、カイは自分よりもすごい存在だと感じた。

 とはいえ、カイはカイで、チカはすぐにやられた同行していた冒険者たちとは違い、あの化け物を殴り飛ばした存在なのだ。

 そんなチカにすごいと言われたところで、カイには自信がなかったのだ。

 チカはそんなカイにさらに言葉をかける。


「いろんなことができるというのは、素晴らしいことだと思いますよ」

「そうでしょうか?」

「はい。できることが多いということは、役に立てることが多いということですから……」


 チカはそう言葉をしながら思い出す。

 魔力がないことによって、できなかった数々のことを……

 今はもうできないという諦めがあるからこそ大丈夫だが、小さい当時はかなり傷ついたものだった。


 中途半端でも何かできるのなら幸せです。

 何もできないあたしよりも……


 チカのその言葉は自分の中だけにとどめる。

 その後は、少しの無言の時間がありながらも、中央都市ヘブンが見えてきたのだった。


 帰らずの森からは少し進んだところですぐに街道に出ていた。

 整備された道というのが、町などの外にあるということに驚いたが、整備されていることもあり魔物の存在はいないように感じる。


「ここまで何事もなくこれましたね」

「そうですね。街道がある場所は安全だということは、みんな知っていることなので」

「そうなんですか?」

「はい」


 いつものように知らないことにチカは驚く。

 町の外に出るといえば、キキルと一緒であり、さらには依頼をこなす場合が多かったこともあり、ほとんど魔物と戦っているばかりだった。

 だから、こうして無防備に馬車を走らせているのに脅威が何もないというのは驚きだった。


「ここが中央都市なんですね」

「はい。僕は冒険者ギルドに向かおうと思っているのですが、チカさんはどうされますか?」


 中に入った後にどうするのか、カイは予定を聞く。

 チカは宿を先に決めるべきか、冒険者ギルドに先に行くべきか悩むが、宿も含めて情報を知っておくべきだと考えたチカは行先を決める。


「あたしも同じように行こうと思います、冒険者ギルドに」

「では、このまま馬車で行きましょうか」


 そうして、チカたちは中央都市の城門に並ぶ。

 前までいた町よりも大きな壁に囲まれており、中央都市へと入るために必要な手続きがある。

 馬車と歩いて入る人たちと城門は別れている。

 こういうところでは入るために、時間がかかると思っていたのだが、以外にも簡単に入ることができた。

 これは、チカではなくカイが、この中央都市に帰ってきた冒険者だからというと、チカの冒険者証を見たためだ。

 チカの冒険者証というと……


「すごい、ランク九のかただったんですね」

「はい。中央都市でもすごいものなのでしょうか?」

「僕らはそう聞いています。僕はランク上げの試験すら受けさせてもらえていませんから……」

「そうなんですね」


 とはいえ、ランクを上げるということは、この世界の真実というもの知ったということになる。

 そんなことは普通であれば知らないほうがいいとは言えなかったチカは、曖昧(あいまい)に笑うにとどめるのだった。


 中に入るとそこは、中央都市という名前に恥じないほど、大きな建物が多い。

 チカは思わず感心した声を出すほどだった。


「へえ……」

「すごいですか?」

「はい。この大きさの建物は、あたしがいた場所では三つくらいしかなかったものですから」

「そうなんですね。だったら、中心にあるタワーを見ればもっと驚きますよ」

「タワー?」

「はい。ほら、ここから少し見えますよ」


 カイはそう言葉にすると、中心の辺りに指さす。

 だけど、チカにはそれが見えなかったのだ。

 疑問に思っていたとき、カイに不思議そうに言われる。


「どうですか?」

「そ、そうですね。大きいと思います」

「ですよね!」


 なんとか無難にそう答えはしたが、何も見えなかった。

 そして、違う違和感のようなものを感じるだけだったのだ。

 後で確認する必要があるとは思いながら、チカたちは冒険者ギルドへと向かうのだった。


 ついた先、やはりここも大きい建物だった。


「ここが冒険者ギルドなんですね」

「はい。それでは、僕はここで」


 先に報告をするところができたと言っていたカイとは、ここでお別れとなった。

 チカは慣れた動きでお礼を口にする。


「ありがとうございました」

「いいえ、こちらこそ助けていただきありがとうございました」


 こうして別れたチカはギルドの中へと入っていくのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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