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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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119/122

118、魔法戦争が起こした世界

 転移魔法によって、飛ばされた先。

 そこにはアンノとクロがいた。


「どうして、チカちゃんが?」

「我に聞くな。先を見るのは我ではなく、アンノの役目だろ?」

「ええー。もう見ないよ。意味ないもん」

「意味がないって……」

「だってさ、本当のことだよー。チカちゃんがいるなら、意味がないよお」


 アンノが会話している相手というのは、クロだった。


「チカ。我にそいつを渡せ」

「嫌ですよ。こう言うってわかっていますよね」

「だが、それ一人だけで、世界が救える可能性があるんだぞ?」

「それを言うと、誰も犠牲になることもなく、世界を救うほうがいいのではないですか?」


 チカのもっともな言葉に、クロは何も言えない。


「ほら、クロちゃんも正論を言われて、負けてるー。だから言ってるのに、予想ができないことは絶対に未来に起こるって……だから、そのときまで世界を支えようってねえ」

「そうだな。だが、うまくいかないのであれば、我の計画でいくからな」

「いいよー」


 アンノがそう答えると、チカたちのほうを向く。

 どうやら、二人の話は終わったらしい。


「それじゃ、話そっか」

「はい。ですが、よかったのですか?」

「大丈夫ー。それにわかったから、来たんでしょ?」

「そうですが……」

「さすがはチカちゃんだねー」


 さすがにチカも調子が少し狂う。

 アンノが言っていることは確かに正しい。


 何が正しいのかというと、大魔法使いと呼ばれる人たちの最後の一人というのがアンノだということだ。

 そもそも、中央都市と呼ばれる場所の真ん中にだけそびえたつ塔。


 その中にいる普通ではない人。

 そこまで言えば、特別な存在であることは間違いない。

 でも、一つだけ他の場所と違うところがあるとすれば、アンノがいる中央都市には人造物がいなかったことだが……


 クロの黒い竜を見たときに、おかしいことに気付いた。

 竜は、人造物ではなくて言葉をちゃんと理解し話していた。


 こんな存在がいるのであれば、同じような存在がいるのではないか?

 もしくは、人と同じになっているのではないか?

 そんな疑問が……


「それじゃ、先にその子を寝かしてあげようー」

「はい」


 だけど、そんなチカの疑問がわかっているのか、アンノが言うのは、チカが気絶させて抱きしめていた存在だった。

 名前がない彼女であり、魔物の体に引っ張られてしまった存在だ。


「ほんとに、チカはこれを全部予想していたわけ?」

「当たり前です。お姉様です。これくらいは余裕です」

「そ、そこまでではないかな」


 さすがのチカも、ここまでのことが起きるとは考えていなかった。

 確かに、チカの施設で彼女がどこかに行ったときに、そんな特異な存在を使って何かをする人がいるだろうとは思っていた。


 そして、それは大魔法使いの誰かだとは考えていた。


 実際には、この特異な存在を使っていたのは、土魔法を使っていた大魔法使いであったが、クロはわかって野放しにしていた。

 それは、クロと一緒にいた黒い竜から、他の人造物を作り出した存在だったからだ。


 いつもは面倒にしていながらも、興味があることだけは絶対にやり遂げることをクロたちは知っていた。

 そんなときにあの場所へ違和感を持った何かが向かっていくのをクロたちは感じた。

 だからこそ、その何かというのを使えば世界を変えられる可能性があり、逃がさないように範囲を大きく転移させた結果。


 その相手を見た瞬間に駆けていたチカがカイたちを呼び、そこから全員が巻き込まれるようにして、ここまで来ていた。


「やっぱり、未来は変わるんだねー」

「変わっていますか?」

「うんー。さすがに変わってないなら、こんなことをわざわざいわないよー」

「そうですよね……」

「それじゃあ、チカちゃんが気になってる、しようとしてたことについて教えるね」

「はい」

「ちょっ、ちょっと待って。話しが急なんだけど」

「うんーうんー。わかるよー。でもね、質問は終わってから受け付けるからねー」


 キキルが慌てた様子で言葉にすると、アンノはそれに対して有無を言わせないようにする。

 さすがにこう言われてしまえば、他の誰も疑問を口にするわけもなく、アンノの話しに耳を傾けるしかなくなる。


「それではー、クロと二人で考えていた。この世界の今後について話しをしますねー。この世界が終わりに向かっている。そんな話しを聞いたと思いますー。でも、どうなって世界が終わるのかについてはー、ここにいる全員は知らないと思いますよねー」


 アンノは世界の終わりについて、説明すると、そこから右手に魔力を集める。

 小さな粒のような大きさの魔力は、どういうわけなのか、アンノが使っているのに黒くなっている。


 それが何を意味するのか、誰もわからなかったが、アンノが今度は左手にも同じ黒い魔力を発生させると二つをぶつけ合った。


「!」

「何、これ」

「すごいです」

「なんだよこれ」

「すごいものがあるんですね」

「まじかよ」


 それを見たことによって、全員は思い思いの反応をする。

 だが、全員に言えることは、驚いているというところだ。


「いろんな魔力が混ざり合うと黒くなるんだよー。そして、それがぶつかると、魔力流が起こるのー」


 魔力流と呼ばれたそれは、濃密な魔力がぶつかることによって生まれるもので、先ほどの小さな粒ですらもかなりの魔力流が起こったことからもわかる通り、魔法戦争のように、さらに濃密な魔力がぶつかりあうような状況であれば、どうなるのかも想像ができない。


「これが……」

「そうだよ。世界が終わりに向かってる状況だねー」

「じゃあ、これをどうにかできたら……」

「無理だよー。できたら、やってるもんー」


 アンノは軽く答えるが、実際に無理だった。

 ただ濃密な魔力を使った魔法は、発動も速くて威力があったものの、魔法にならなかった残りの魔力同士がぶつかりあった結果のため、それがどんな魔力なのかもどれほどの魔力なのかもわからない。

 そんな状態のため、当たり前ではあるがチカが魔力を吸収するなんてこともできるはずはない。


「じゃあー、これを聞いてチカちゃんがどうするのかを、教えてほしいなー」

「あたしは……」


 正直なところ、チカには自分が何ができるのだろうかと考えた。

 どうやったって何もできるはずがないと思うだろう。


 普通では……

 チカはそれでもやらないといけない。


 止まることはできない。

 最後がどうなろうとも、みんなを背負ったのだから……


「一つだけ聞いてもいいですか?」

「なにー?」

「彼女を使って世界をどうするのかだけを聞いてもいいですか?」

「いいよー」


 今はまだわからない。

 でも、最後の望みにかけて、アンノたちがやろうとしたことを聞くのだった。

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