116、厚い盾
カイとクロは、大魔法使いの一人と戦っていた。
名前はわかっていない。
「お前らが熱いと分かれば、教える。それだけだ」
男はそんなことを口走るので、火を扱うのかと思いきや、男が扱う魔法は水だった。
だが、どういう原理なのかわからないが、男の水は熱湯であった。
「あぶね」
「避けるなよ、盾で防げばいいだろ!」
「お前な、盾で防いでもかかれば少しは熱いだろ!」
そんな中でも絶賛二人は言い合いながら戦っていた。
仕方ない。
二人とも、お互いに攻撃する術がないため、どうやってもキツイ。
さらにいえば、相手が使う熱湯というのも厄介だ。
水はただでさえ、火と同じで、その場に残りやすいという性質をもっているのに、それをプラスして熱さまでもってしまうと、防御するときに飛び散るお湯だけでも身を少し焼かれる可能性だってある。
マモルに関しては全身に魔力をもつ鎧を使えば、ほぼ無効化できるだろうが、全身に魔力を流し続けるというところから、魔力消費が激しく。
さすがに戦闘中にずっと続けるのは難しい。
「どうする?」
「僕に聞くな!」
「転移魔法でどこかに飛ばせばいいだろ?」
「じゃ、魔法使う間は僕のことを守れよ」
「ああ?」
「なんだよ」
いつもなら、こんなことになればチカやキキルなどの女性たちが先陣をきって前に行ったりしてきた。
だからなのだろうか、それとも男同士ということで遠慮がなくなったからだろうか……
わからないが、二人の言い合いというのは止まらない。
だが、そんな二人は言い合いをしながらも大魔法使いの攻撃を完全に防いでいるのはさすがというべきか……
(ああ、くそ……そもそも盾の俺に何ができる?)
(転移魔法以外に手はないって、僕の魔法はそれだけか?)
二人は考えを巡らせる。
とはいうものの、いい案はなかなか見つからない。
まあ、もし二人の共通点をあげるとすれば、盾と壁の魔法が使えることくらいだろう。
「遊びは終わりだ!熱さに屈伏しやがれ!」
大魔法使いの男はそう叫ぶと、大量の熱湯を二人に向けて発射する。
「おい!」
「わかってるっての!」
すぐにカイが、壁を魔法で何枚も重ねて作り出すが、これまでよりも確実に勢いがあった熱湯というのは、カイが作り出した壁を破壊していく。
「おらおら、どうだー!」
「まずいぞ!」
「だったら、その盾でなんとかしてくれ!」
カイに言われて、マモルは再度考える。
(ここから、やるなら鎧か?いや……でも、あれは持続できない。だったらどうする?)
マモルはさらに考えるが答えはでない。
そして、そんな中でも時間というものは有限だった。
二枚、三枚と壁は破壊されていく。
(あーくそ!そもそも俺が魔力を込められるのが、盾だけなのがいけないんだよ!そもそも防御するなら、カイみたいな壁を作れるほうが便利だろ!)
マモルは、そう考えてカイの壁魔法に触れた。
本来であれば、この魔法というのは、空間を固定するという魔法であったが、その利便性から壁だったり箱、床などあらゆるものにできる。
そして、魔法を防ぐための盾にだってなる。
そう、マモルができること。
体と盾。
守るためであれば、それに魔力を通すことができる。
それは、カイの壁であっても例外ではなかった。
「なんだ?」
「まじかよ」
マモルが壁に触れた途端、カイは発動していた魔法が乗っ取られるような感覚に陥った。
だからこそ気づいた。
「マモル!」
「な、なんだよ……」
「それを盾だと思って魔力を流してくれ」
「はあ?こうかよ……って、なんだよこれは!」
マモルが驚くのも無理はなかった。
先ほどまで、熱湯によって割れていた壁が、完全に熱湯を防いでいた。
それはわかっている。
カイが作りだした壁を、マモルが盾として使っているからだ。
本来普通の人であれば、盾にも魔力を流すことはできたが、武器を使わないことには魔物たちが倒せないため、誰も持とうとしなかった。
そのため、盾専門でしか戦わない……戦えないマモルは以上なのかもしれない。
盾にしか魔力を流すことができない。
どういう理由でそうなったのか、完全にわかっていない。
だが、マモルはこれで思う。
(やれる!)
「おおー!」
「な、なんだ!その厚き盾は!」
「わからねえよ。だけど、これで守れるだろ!」
マモルは、熱湯に盾で向かっていく。
大魔法使いの男も負けじと、熱湯をそこにぶつけている。
「ま、チャンスだな!」
「な、なに!」
二人の戦いの横で、カイは転移魔法を発動すると、大魔法使いを飛ばしたのだった。
「やったな。これ、役に立った」
「そうかよ、次からも頑張ってくれ」
「ま、しょうがねえな」
カイとマモルはそう言葉にすると、二人は拳を当てるのだった。
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