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筋肉姫と魔法使い(仮)  作者: 美海秋


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115、見てきたもの

 モリリンと戦うことになったのは、スイとアイの二人だった。


 異色のような組み合わせだと誰もが考えただろうが、二人の考えていることは少し似ていた。

 いいところを見せたいというものだ。


 というのも、スイは姉であるチカに、アイは弟であるカイにできるところを見せたかったからだ。

 そんな二人対一人の戦いというのは、お互いのいいところを出し切っていた。


 スイは手に入れた魔法である。

 水で分身を作りだすもの。

 アイは小さな箱のようなものを作り出して、相手を拘束するもの。


 だけど、相手は大魔法使い。

 それだけでは簡単なものではない。


「相性が悪いです」

「お姉ちゃんの魔法も、うまく決まっていません」


 水魔法は、モリリンが使う森魔法によって吸収されてしまうし、アイが使う魔法で作った小さな箱もモリリンは、スイと同じように自分の姿を木で作ることによって意味をなくされていた。


 元々森魔法というのは、水と土の複合魔法であり、水魔法もある程度使えるモリリンからすれば、どんな魔法なのかがわかる以上、対処しやすいのだ。


「終わり?」


 少しだけ残念そうに、モリリンはそう言葉にする。

 でも、そんなことで諦める二人ではない。


「スイに少し考えがあるです」

「わかりました。何かあればお姉ちゃんかフォローします」


 スイは何か考えがあるようで、アイに伝えると、アイも任せたと声をかける


 確かに二人の攻撃というのは、通用していない。

 であれば、普通なら新しい魔法を作るだろう。

 だけど、スイもアイもそれをしない。


 どうしてなのか?

 まだ、二人とも今の魔法が完成したとは言い切れなかったからだ。

(お姉様を真似て作ったのはいいです。でも、こんなのはスイが好きなお姉様ではないです)


 特にスイは考えていた。

 確かに見た目というのは、姉であるチカに似ていたものの、戦い方が全く違うからだ。

 魔法で作り出したのだから当たり前ではあったが、スイは自分で作っておいて、気に入ってなかった。


「お姉様はこんなことをしないです」


 そう、スイが見てきた姉であるチカは圧倒的な力を持っているというわけではない。

 でも、その背中は大きくて頼れるものだった。


「お姉様だったら、何もかも全てを背負って弾いてみせるです」


 スイはそう言葉にすると、作り出していたチカの分身を一つにする。

 先ほどよりもさらに精工に作られた水の分身に、モリリンも思わず息を吞む。


 そして、まるで分身のようなチカは走る。


「アイさん!」

「お姉ちゃんに任せて!」


 スイが何をしたいのかわかったのだろう、アイはすぐに魔法を発動する。

 小さな箱がそこらじゅうに生み出される。


 普通であれば意味のないものであったが、ここにはチカが作り出した最強のチカがいる。


 水で作りだされたそれは、人ではあり得ないスピードで加速する。

 そして、それはアイが作り出した箱を使って縦横無尽にモリリンの周りを駆け巡る。


「すごい……」


 モリリンはそれしか言葉にできなかった。

 元々、攻撃については手加減をしていた。

 それは、時間を稼げればいいと思っていたからだが、スイたちの攻撃というのは、それすらも許すことはない勢いだった。


 モリリンが作り出した木たちは、水の分身によって削られていく。

 そのまま、全てを削り終わる。


「さすが」


 モリリンはそう言葉にして、ゆっくりと後ろに倒れた。


「アイさん」

「スイちゃん」


 それを見て、二人はハイタッチをする。

 これで二人とも大切な人たちにいいところを見せることができただろう、そう確信していた。

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