113、実力差と技
シシルとキキルはその剣をすぐにぶつけあう。
「どう、お姉は少しは強くなった?」
「そんなこと、うちに言われたってわかんないから」
「言われてみれば確かに……じゃ、あたいが確かめてあげる!」
シシルは持っていた大剣を簡単に振り回す。
普通の人であれば、大剣を振り回す、その威力によって剣を弾かれたり折られたりする可能性もあるが、キキルはその剣を簡単に弾いていく。
「やるねえ、お姉」
「うちだって、これまでただやってきたわけじゃないもの」
「ふーん、それならいいんだけど!」
シシルとキキルは剣をぶつけ合う。
勢いとして、押しているのはシシルだった。
大剣のほうが重いということもあるが、それを扱うシシルの剣速がかなりのスピードだったからだ。
大剣だというのに、キキルが扱う剣と同じスピードで振るう姿は圧巻だった。
(やっぱり、シシルはうちなんかよりも強い)
あのとき負けてからわかっていたことだけど、改めて実感した。
確かにキキルのほうが魔力の扱いという点では器用ではあるが、愚直に一つの剣を扱うという点においては明らかにシシルのほうが勝っていることは剣同士を交えればすぐにわかる。
(うちがついてこれるのは、魔力の扱いで動きに魔力をまとわせることで、体を強化できているから……)
そう剣では負けていても、戦えているのは、そこによるものがおおきい。
「お姉!攻撃を防いでいるばっかりじゃ、あたいに勝てないよ!」
「わかってる!」
そして、勝っているのがわかっているのだろう、シシルはキキルを煽る。
その言葉でキキルは焦って……などいなかった。
すでに負けることなどわかっていたからだ。
一度負けている相手に簡単に勝てるのであれば、それは並々ならぬ努力をするか、もしくは勝った相手が何もしなかったのかのどちらかだ。
キキルは、勝ち続けていたからこそ、負ける経験をしてこなかった。
だからこそ、日常的に努力をするということの重要性というものをわかっていなかったあの頃にはすぐにチカに超えられてしまったのだ。
でも、今は違う。
シシルが努力をしていることは知っている。
だからこそ、同じように努力をしたキキルでは超えることはできないことはわかっている。
剣術では……
「”絶”」
「な!」
「さすがに、防ぐよね!」
「ははは!何よ、それお姉!」
「何って、新しい技だけど」
「へえ、新しい技ねえ!」
シシルの攻撃の合間を縫うような形で放った剣技は、絶。
これまでの戦闘でも幾度となく使ってきた剣技だからこそ、さらに研ぎ澄まされている。
大剣によって防がれてしまったものの、かなりの威力だったのはいうまでもなく、先ほどまでは攻撃だけをしていたシシルの剣も止めることができている。
「剣筋もよくなってるし、努力したんだ?」
「だったらなに?」
「えー、なんでもないよ。落ちなかったんだと思っただけだよ」
シシルはそう言葉にして、構えるとすぐに魔力を放出させた。
魔力は、そのまま剣へと集まっていく。
「お姉、あたいはね、才能がなかったんだよ、知ってる?」
「……」
「まあ、知ってるよね。さっさと出ていって冒険者になったんだもんねえ。でもね、あたいだってやればできたんだよ、これがね」
シシルはそう言葉にすると、剣は火を纏う。
「火剣っていえばいいのかな?いくよ、お姉」
「ええ、きなシシル」
シシルの火を纏った剣というのは、防ぐことが難しい。
というよりも、一撃目で諦めたというほうが正しい。
どれだけ魔力を伴っていたとはいえ、普通の剣では一瞬であれば剣が少しの刃毀れで済むが、鍔迫り合いでもなれば、火の熱によって剣が斬られる。
それほどまでに強力なものだった。
「こんどは、逃げるだけ?」
「まあ、そうね」
本当であれば、キキルも対抗するようにして、剣技を使うのが普通ではあるが、使うことができない。
それは、キキルが剣技を使っても、先ほどと同じであれば、確実に鍔迫り合いになることがわかっていたからだ。
(まだまだ、やっぱりうちには足りてない)
そのことはわかっていた。
だから考えるしかない。
この状況を変えられる方法を……
「もっと頑張ってよね、お姉!」
シシルにはそのことはすでに見破らている。
それでも、決定打である攻撃をしないのは、キキルの動きが速いこともあるが、キキルが次に何をするのかということが気になっているところもあった。
シシルが使う、この剣は防ぐことはまずできない。
もしできるのであれば、火の逆である水の剣で対抗するか、もしくは同じく火の剣を作るかだ。
シシルがこの剣にたどり着くまでにはかなりの時間がかかったため、真似するというのも難しいことはわかっている。
実際にキキルもその剣を真似しようとしてみるが、これに関していえば、普通の剣技とは全く違い。
魔力を火に変化させて剣に纏うというもので、どれだけ起用に魔力が扱え、簡単に剣技を真似てしまうキキルであっても火をつけることができないため、真似することはできない。
「さあ、どうすんの!」
「”翔”」
「へえ、魔力の斬撃かあ……効かないよ?」
だけどシシルには効かない。
キキルにはわかっていた。
だからこそ、一つだけできていないけれど、試すべきことを思い出していた。
(剣技は一つじゃない……だから!)
キキルの使える剣技は一つではない。
多くの剣技を、それも一つの武器で扱えるようになった。
でも、それだけだ……それだけでは足りない。
「剣技……」
「お姉、今更剣技……」
「”絶斬”」
「うわっと……危ないよ、お姉……」
シシルはなんとか攻撃を避けながらも、先ほどの技に驚いていた。
避けないとまずいと本能的に思ったその技というのは、当たってはいないものの、背中には汗が流れるのがわかった。
技といっていいのかもわからない技。
それは、これまでの技の集大成であった。
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